2010年3月から数々のサッカー番組のキャスターを務め、Jリーグを伝えて今年で4年目になる寺田ちひろさん。「それまでサッカーを見たことは なかった」と語る彼女だが、今やJ1のみならずJ2にも精通し幅広い知識を持つ。彼女はどんな時でも、サッカーを楽しみながら伝えることを忘れない。
インタビュー=大倉 悠 写真=阿部 満
――サッカー番組を担当されて4年目になりますが、どういう部分に注目してサッカーを見ていますか?
寺田ちひろ 戦術とか難しいことは分からないので、とにかく楽しんで見ることを心掛けてます。いいパスが通ったら「わぁ!」って喜んで、シュートが入らなかったら落ち込んで、本当にサポーターの方々と同じように一喜一憂しながら見ています。
――番組を担当される前はサッカーを見ていたんですか?
寺田ちひろ 実はサッカーは、ほとんど見ていなかったんです。ただ、小学校5、6年生の時に女子サッカー部に入っていたんですよ。女子サッカー部って当時はかなり珍しくて、市内に2校しかなかったので負けても準優勝でした(笑)。でもそれ以外はあまりサッカーを見る機会がなくて、この番組が決 まった時にも正直「どうしよう」という気持ちがありました。オーディションを受けた時にも「実はサッカーのことが全く分かっていません。やりながら覚えていきます」って素直に話した覚えがあります。
最初の頃は専門用語や選手名を覚えなきゃ、詳しくならなきゃと思うばかりで、あまり試合を見ていても楽しめなかったんです。でも2010年の南ア フリカワールドカップ(W杯)頃からか、なんだか急に肩の力が抜けて、「私も普通にサッカーを楽しめばいいんだ」って思えるようになったんで す。視聴者の方も私に解説は求めてない。私は解説するのではなくて、サポーターの一人として試合を楽しんで、視聴者の方との“つなぎ役”のような 立場になれればと思うんです。
『Jリーグマッチデーハイライト』は試合終了直後に放送が始まるので、終わった後のスタジアムの空気感をいかに伝えるかが大事だなぁと。視聴者の方に近い視点で、「この子が楽しめてるなら、私も楽しめるかも」って思ってもらえたらいいですね。
――そもそも女子サッカー部に入られたきっかけは?
寺田ちひろ 私、スポーツがあんまり得意じゃなくて、バスケやバレーみたいに手を使う競技は負けちゃうんですよね(笑)。しかもそういう競技って、小さい頃からやってる子が多かったから勝てるわけがないと思って。それじゃあ、サッカーをやろうと。でも常に利き足の右足で相手を抜くことしかできなかったです(笑)。どこのポジションにいてもドリブルしてましたね(笑)。
――実際にスタジアムに行かれることも多いんですか?
寺田ちひろ 今季は残念ながらまだ行けていないんです。でも一年目はちょこちょこ行ってたんですよ。スタジアムでキャラクターに会うのも楽しみで。今一番会いたいのは、徳島ヴォルティスの「ヴォルタくん」と「ティスちゃん」。見ているだけで癒されるんですよね♪
――スタジアムで観戦される時は、つい興奮してしまいますか?
寺田ちひろ テレビで見る時は、解説者の方の詳しい説明も聞けるし、あんまり詳しくない私でも楽しめるという部分があるんですけど、でもやっぱりいざス タジアムに行くと「生っていいなぁ」と思いますね。サポーターの方が作り上げる空気感、飲み込まれそうになるような声やチャント……鳥肌が立つく らい興奮します。ゴールが決まった瞬間は最高ですね。
――今まで観戦された中で、思い出に残っている試合はありますか?
寺田ちひろ 2010シーズンに名古屋が優勝を決めた時の試合(2010年11月20日、第31節vs湘南)ですね。名古屋の選手たちが敗れた湘南のサ ポーターのところに挨拶に行って、お辞儀をしたんです。そして、両チームのサポーターもエール交換をして。試合中はずっと敵として戦ってきたの に、最後は尊敬し合う、認め合う、たたえ合うのはすごくカッコイイなと思いました。こういうシーンを生で見られたなんて、本当にラッキーだった なと。例えばテレビだったら、中継時間が終わって映り切ってなかったかもしれません。生でしか味わえないシーン だったと思います。
――ブラジルW杯がいよいよ来年に迫りましたが、日本代表戦に比べて、Jリーグを見ている方はまだまだ少ないと思います。もっと多くの人にJリー グを見てもらいたいですか
寺田ちひろ 海外組の選手たちも、もともとはJリーグで育った選手たちですよね。つまり、Jリーグには原石のような選手が大勢いるんですよ。だから次 に、どの選手が活躍して、世界に通用するビッグな選手になるかというのを探すのもJリーグ観戦の一つの楽しみ方だと思うんです。マンチェスター・ ユナイテッドで活躍する香川(真司)選手もC大阪にいたわけですし、今なら生で見られるチャンスがあるよ!って。もっと多くの人に楽しんでほしいですね。
――日本代表にも、もっと多くのJリーガーが選出されてほしいですか?
寺田ちひろ そうですね。柿谷曜一朗選手(C大阪)も選ばれてほしいですけど、鹿島の中村充孝選手にもチャンスがあればなぁと。京都にいた時からずば抜けてうまくて、次は鹿島で活躍して、今度は代表というようにステップアップしていってほしいなぁと思います。
――最後に番組の意気込みを教えてください。
寺田ちひろ サポーターの方たちにとって、一番“スタジアムの空気が分かる番組”にしたいんです。この番組を見れば、自分の応援するチームはもちろん、 対戦相手の情報も手に入る。対戦相手の情報って意外と手に入りにくいじゃないですか。でもチームの戦い方を考える上では、すごく大事な情報。サポー ターの方も相手チームの弱点が事前に分かっていたとしたら、自分の応援するチームがそれを攻 略できた時にますます喜びが大きいと思うんですよ。そ れに、全チームの全ゴールに触れてる番組は他にないと思う。試合直後だからこその“熱”が感じられるような、スタジアムになかなか行けない方でも 行った気持ちになれるような番組にしていければと思います。興奮をそのまま伝えていきたいです。平野(孝)さんといいパスを回して、シュートを決めて、連携を深めてやっていきたいと思います!