日章学園の2年生GK清原寛斗が2回戦の主役となった [写真]=野口岳彦
“PKストッパー”が起用に応えた。
1月2日、フクダ電子アリーナで行われた高校サッカー選手権の2回戦。日章学園が優勝候補・市立船橋をPK戦で下した。手に汗を握る接戦となった中で、主役になったのは日章学園の2年生GK清原寛斗だ。
出番が訪れたのは後半ディショナルタイム。ピッチに送り出されると、PK戦では瞬発力を生かしたシュートストップで会場を沸かせる。
互いに全員が成功して迎えた7人目。清原はゴールマウスで相手を威嚇すると、市立船橋の松谷昂輝(3年)のシュートを完璧に読む。左に飛んで、外に弾いたのだ。
「松谷選手の動きも見えていたし、大会前のPK練習でも監督からキッカーの蹴り方を教わっていた。最後の場面で止められて良かったです。今まで頑張って来たことが積み重ねって、力を発揮できました」
その後のキックを濱松凜(3年)が決め、勝負あり。土壇場で登場した男がヒーローとなった。
清原は今夏までレギュラーを務めていた実力を持つGK。だが、メンタルの弱や技術不足から福山智仁(3年)にポジションを奪われ、選手権予選でもサブに回った。ただ、早稲田一男監督は「読みとか勝負師の要素を持っている」清原の能力を高く評価し、選手権を見据えて“PKストッパー”に任命。本人も定位置を奪われた時点で武器を作るためにPKの練習に力を入れており、本大会で重要な局面を任されるべく指揮官の意向を受け入れた。
大会前に九州で行なった練習試合後のPK戦や、現地入り以降のトレーニングでも力を発揮。インターハイ1回戦の西京戦では1本も止められなかったが、周囲から信頼を掴んでこの大一番を迎えた。
また、大会前の練習試合やトレーニングでも手応えを掴んだ中で、昨年度の正GK小原司(現大阪体育大)の存在も大きい。
GKコーチが不在のため、今大会限定で帯同している先輩から多くの言葉を掛けてもらった。
「PKの練習前に色々と教えてもらったんです。ベンチに入れない小原先輩が(軒下から)『大丈夫だよ』と合図を送ってくれたので、自信にもなりました」
ベンチの脇から戦況を見守った小原も清原のポテンシャルをこう話す。
「数少ない練習の中で基礎からもう一度教えました。ポジショニングなどもやり直して、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。後半アディショナルタイムに入る前にコーチ陣から『お前ならどっちを使う』と聞かれ、練習や去年までのプレーを見て、福山が劣っているわけではないけど清原を使う価値はあると感じたんです」
監督や先輩の目論見通り、好セーブを見せた清原。スタメンで出場する想いを封印し、与えられた場所で輝きを放った男の存在は頂点を目指すチームにとってプラスだ。「早稲田監督を日本一にしたい」と言い切るPKストッパーに今後も注目だ。
取材・文=松尾祐希