8日に行われた会見でクラブの財務状況について説明する横浜FMの嘉悦社長
「条件が整えば、黒字化は可能というポテンシャルを検証できた」
2013年度の決算を発表した8日、横浜F・マリノスの嘉悦朗社長は集まった報道陣の前でうなずいた。クラブにとって5期ぶりの黒字…。2009年に社長代行に就任して以降、着々と進めてきた経営努力が、チームの好成績によって、実を結んだと言えるだろう。
昨シーズンは開幕6連勝から始まり、最終節まで優勝争いを演じた。勝てば9年ぶりのリーグ制覇が決まる第33節のホーム最終戦ではJリーグ記録を更新する6万2632人が観戦した。ホームの観客動員数は過去最多となる平均2万7496人。主催17試合で1度も雨に降られることがなく、天候に恵まれた側面もあった。(2011年、12年はそれぞれ6試合で降雨)
クラブによると、入場料収入は前年比から約37%増加し、初めて10億円を超えたという。グッズ販売でも前年比11.2%増加し、スポンサー収入も15億1300万円と前年度から1億4900万円増えた。また、21大会ぶりに天皇杯を制するなど、リーグ2位、ヤマザキナビスコカップでベスト4進出と獲得賞金も2.7倍となった。全体の売上高が大きく増加した一方、最小限の費用負担に抑えたことで、前年度は5億円の赤字だった営業利益が900万円の黒字に転じた。
ホームタウン活動や、効果的なプロモーション、そしてスタジアム内の演出など、地道に足場を固め、自立的な経営を目指してきた嘉悦社長は「(2008年の)リーマン・ショック以来、日産自動車の野球部や陸上部、卓球部が廃部になった。マリノスは市民の、公共のチームとはいえ、日産からの過度な依存から脱却しなければならなかった。クラブを挙げて取り組んできた改革の成果。年間を通した好成績が収入増を加速させた」と言う。
一方で、Jクラブ最多となる約16億7700万円の債務超過解消に向けて、親会社の日産自動車から10億円の損失補填を受けた。当期純利益は10億円となり、嘉悦社長は「日産自動車は改革の成果を公正に評価している。何らかの形で補填され、14年度中に(債務超過は)解消される見通し」と明かした。
Jリーグのクラブライセンス制度では、3期連続赤字、または14年度の決算で債務超過になると、翌年のJリーグに参加できるライセンスが交付されない。今回の決算によって、連続赤字を回避し、債務超過の問題にもめどが付いた。
ただ、クラブは今後も黒字化を続けるために、コスト削減も視野に入れているという。たとえば、16年まで契約を残し、賃貸料で大きな負担となっているマリノスタウンを継続利用するかなど、議論されているという。嘉悦社長は「赤字のリスクは依然残っている。1年ごとに生き残りを懸ける。激しく、厳しい検討をしないといけない」と表情を引き締めていた。
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