背番号「10」の新ユニフォームを身にまとう柏木陽介 [写真]=田丸英生
昨年の明治安田生命J1リーグ1stステージを無敗で制しながら、またも主要タイトルを逃した浦和レッズが15日、さいたま市の大原サッカー場で2016年の初練習を行った。
今季から心機一転、クラブにとって特別な意味を持つ背番号に変えたMF柏木陽介、FW武藤雄樹、FW高木俊幸の3選手は新しい番号の入った練習着に身を包み、決意新たに始動した。
柏木は昨秋の日本代表遠征で存在感を示すなど、自ら「第2のサッカー人生が始まったようなもの」と表現するほど充実したシーズンを送った。そして今季、サンフレッチェ広島から移籍7年目にして初めて背番号を8から10に変更。Jリーグが固定番号制を導入した1997年以降では、1998〜2000年の福永泰以来、日本人として16年ぶり2人目の背番号10となった。この日の練習後にスポンサー企画で新ユニフォーム姿を初めて披露し「タイトルを取るために何か一つ変えたい、自分の中に変化を与えたいということで10番にした」と強い覚悟をにじませた。
もともとクラブ側は以前から柏木に「10」を託したい意向を持っていた。2006シーズンのJ1初優勝、2007年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制覇したチームで10番を背負っていたポンテが2010年限りで退団した時、そして2014シーズン後にマルシオ・リシャルデスが退団したタイミングでも打診したが、いずれも本人が断っていたという。その理由を柏木自身は「(2010年に)レッズに来て、8番にこだわりがあったし、浦和レッズの8番は柏木陽介だと分かってほしい部分が大きかったので変えなかった」と当時の心境を打ち明ける。
3度目の要請となった今回は「チームから多少プレッシャーというか、『10が空き番号じゃ困る』というようなことを言われた」と笑って明かすが、自身も中心選手としての立場を自覚している。過去に広島やU-20日本代表でも10番を任されたレフティーは「今は背番号を意識してプレーしているわけじゃないが、サッカー界でエース番号であることは浸透している。自分らしいプレーをして優勝することで、『あの時の10番は柏木だったな』と思ってもらえるような一年になる」と青写真を描く。
昨年12月29日の天皇杯準決勝で左ひざを痛め、元日の決勝はベンチ外。負傷から約2週間半が経過した始動日も軽めのランニングなど、別メニューで汗を流した。ケガの状態については「決していいとは言えない。(復帰時期は)ケガと相談しながらじゃないと分からない。ただ真っすぐ走れたことに関しては順調にいった」と述べ、慎重に開幕へ照準を合わせていく構えだ。
浦和にとって「10」以上に象徴的とも言える「9」は、昨季J1でチーム最多の13ゴールを挙げてブレークした武藤が19番から“昇格”した。ストライカーの代名詞でもある9番は“ミスター・レッズ”と呼ばれる福田正博がJリーグ創成期から長年にわたって背負い、2003〜2008年は永井雄一郎が受け継いだ。その後、2011年にエジミウソン、2014年に原口元気がそれぞれ半年だけ着た以外は欠番となっていた番号。ベガルタ仙台から移籍2年目にして偉大な先人の後を継ぐことになった武藤は「歴代のエースがつけてきた番号。僕はもちろんまだそこにたどりついていないが、着ることで9番に相応しいプレーヤーになっていこうという気持ち」と力強く意気込む。
本人はクラブから番号変更を提案された時から迷いはなかったという。「考える時間を与えてもらったが、僕の中ではすぐに着けたいと思った。いろいろな意見はあるかと思うが、それをはねのけるだけのプレーをしたいという考えに至った。浦和で愛された選手がつけていた番号なので、自分もそうなれたらいい」と頼もしい言葉を並べた。
空き番号だった「9」「10」とは違い、昨季限りで引退した鈴木啓太の「13」を譲り受ける形になったのが高木だ。昨年の「31」を逆にした番号を託されたアタッカーは、「クラブから『どうする?』と選択肢をいただいた。この背番号の重さは去年1年間、浦和でプレーして身に染みて分かっていた。覚悟が必要だと思ったので多少悩んだが、これを励みに頑張ろうと思って着けさせてもらうことにした」と経緯を説明した。
自身にとっては清水エスパルス時代の2011〜2013年に背負った番号に3年ぶりに戻る。守備のイメージが強かった前任者とはプレースタイルが全く違うが、「啓太さんから『よろしく頼む。自分色にしていってくれ』という言葉をかけてもらえたので、この13番を自分の色にできるよう頑張りたい。番号の重さはもちろん分かっているので、うまく気持ちをコントロールしてやっていきたい」と気を引き締めた。
この他に湘南ベルマーレから獲得したU-23日本代表DF遠藤航も、山田暢久が長年背負い、昨年は誰も着けていなかった「6」に決まった。近年になかった大胆な背番号変更に、2007年のACLを最後に続く“無冠”の連鎖を断ち切ろうというクラブの強い思いが表れている。彼らには新しい浦和レッズを象徴する存在として、その背番号を真に自らのものとするべき活躍が求められる。
文・写真=田丸英生(共同通信社)
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By 田丸英生