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J1昇格と鹿島戦実現を目指して…岡山FW豊川雄太、五輪落選から「這い上がる」

2016.08.22

14日の讃岐戦(写真)で1ゴールを挙げた豊川雄太。21日の千葉戦では無得点に終わり、今後の奮起を誓う [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 5試合負けなしと好調を維持して臨んだ一戦は、痛恨の完封負けに終わった。21日の明治安田生命J2リーグ第30節。3位・ファジアーノ岡山が敵地に乗り込んで10位・ジェフユナイテッド千葉と対戦したが、0-2で敗れた。開始9分で先手を取られて苦しい展開を強いられた末の完敗。FW豊川雄太は「流れが悪い時に点を取らないといけないし、自分の力不足だと思います」と悔しさを滲ませた。

 今シーズン、鹿島アントラーズからの期限付き移籍で岡山に加入した豊川。前節のカマタマーレ讃岐戦で勝利を決定付けるゴールを決め、実に7試合ぶりとなる先発出場を果たした。懸ける思いは強かった。鹿島のスタッフやMF柴崎岳がフクダ電子アリーナに足を運んでプレーを見守る中、2試合連続ゴールと勝利という結果を残したかった。だが、悔しい夜となってしまった。

「もっともっとボールを引き出してやっていかないといけない。真吾くんとも話しましたけど、前が孤立している部分もありましたし」と背番号「30」は課題に口にした。その言葉どおり、岡山は前線のFW赤嶺真吾と中盤との距離が開き、なかなか起点を作れなかった。千葉の長谷部茂利監督代行が「試合開始から主導権を取れた。継続してチャンスを作っていけたことが良かった」と納得の表情を浮かべていたように、ボールポゼッション率を高めて攻勢をかけていたのはホームチームだった。

 劣勢の中、豊川は両サイドのスペースを突いたフリーランニングでパスを呼び込み、ポストプレーでファウルを誘ってFKを得るなど、攻撃の糸口を見出そうと腐心していた。35分には相手選手との競り合いに勝って右サイドのタッチライン際を突破。相手ともつれて倒されながらもすぐに起き上がり、さらに前へと突き進む迫力満点のドリブルを見せた。62分にはペナルティーエリア内でこぼれ球を拾い、鋭い反転から左足を一閃。強烈なシュートを放ったが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。そして67分、交代を告げられてピッチを後にした。

「自分にも決めるチャンスがあった。(最終ラインの)裏に抜けることができれば一番良いですけど、相手はかなり警戒していましたね。攻撃のパターンがもっともっと必要かなと思います」。そう言って、21歳のアタッカーは奮起を誓った。

 自身初の移籍を経験し、「自分のサッカー人生を大きく左右する重要な一年」と位置付けた今シーズン。だが、J2第30節終了時点で先発出場はわずかに7試合にとどまる(途中出場は19試合)。残りは12試合。ここまで6ゴールを記録しているものの、「2桁ゴールが最低ライン」と掲げている以上は納得できる数字ではないだろう。

 だが思えば昨シーズンも、豊川は苦境からがむしゃらに這い上がってきた。鹿島で迎えたプロ3年目。シーズン序盤から不調にあえいだチームにあって出場機会を得られず、7月の指揮官交代後はベンチ外が続く時期もあった。ターニングポイントとなったのは9月9日、天皇杯2回戦FC琉球戦。久々に先発メンバーに名を連ねると、自身のバースデーを祝う直接FK弾を突き刺してみせた。この試合以降、少しずつではあるがプレータイムを掴んでいくと、年末には石垣島キャンプで手倉森誠監督に猛アピール。“残り2枠”だったAFC U-23選手権カタール2016(リオデジャネイロ・オリンピック・アジア最終予選)のメンバー入りを果たし、準々決勝のイラン戦では決勝ゴールも決めた。

 もがきながら歩みを進め、たどり着いたアジア最終予選で活躍を見せた。当然ながら本大会出場への意欲も高まる。だが、先述のとおり岡山で強烈なインパクトを残すには至っていない豊川は、リオ行きの切符を掴むことができなかった。悔しさは強いはずだ。「オリンピックに行けなかった自分は、ここで落選して消える選手にはなりたくないので。這い上がっていきたいです」と力を込める。もう一度、一段ずつ上へ――。

 フクアリでの不甲斐なき一戦を終えて、岡山は4位に転落した。J2はしばしのインターバルに突入。「この試合の意味を汲み取って、よく考えろ」と長澤徹監督から促されたという選手たちは、目の前に待ち受ける天皇杯から反撃を期すこととなる。27日の1回戦・松江シティFC戦、そして2回戦は9月3日。勝利を重ねて9月11日のリーグ再開へ勢いと自信を持ち込みたいところだ。

 豊川にはモチベーションとなる材料がある。天皇杯2回戦突破を果たせば、岡山は22日の3回戦で鹿島と対戦する可能性があるのだ。「カシマ、行きたいですね」。敗戦の悔しさから硬い表情を貫きながらも、この時ばかりは笑顔を見せた。

 鹿島との対戦を視野に入れつつ、豊川はリーグ再開後の逆襲を誓う。「昇格争いをしている今の環境は楽しいですよ。(昇格は)最低限の目標でもありますし、もう負けられないですね。しっかりと戦っていきたいと思います」。勝負のシーズン、正念場はこれからだ。

取材・文=内藤悠史

By 内藤悠史

元サッカーキング編集部。育成年代や女子、国内サッカー、海外サッカーなど幅広く執筆。退職後はJリーグのクラブ広報に。

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