ロシアW杯アジア最終予選に挑む代表メンバーに選出された(写真左から)昌子、今野、高萩、清武 [写真]=Getty Images
再開初戦でいきなり難敵・UAE(アラブ首長国連邦)代表との大一番を迎える、2018 FIFA ワールドカップ ロシア アジア最終予選に臨む日本代表メンバーが発表された。
日本時間24日未明に敵地アル・アインでUAE、28日には埼玉スタジアムでタイ代表と対峙するのは総勢25人。シーズンが佳境に入り、コンディションも整っている欧州組が14人を占める一方で、開幕したばかりの国内からも注目すべき選手たちが名前を連ねている。
昨シーズンの二冠王者・鹿島アントラーズからは、最終ラインを支えるセンターバックコンビ、昌子源と植田直通が招集された。特に前者は明治安田生命2016 Jリーグチャンピオンシップ準決勝からFIFA クラブワールドカップ ジャパン 2016決勝をへて、元日の天皇杯決勝までを戦った40日間に行われた10試合すべてで先発フル出場。心技体のすべてで急成長を遂げた。
延長戦で力尽きたものの、スペインの強豪レアル・マドリードと死闘を演じたFIFA クラブワールドカップ ジャパン 2016決勝。FWクリスティアーノ・ロナウドの高速ドリブルをファウルなしで止め、ボールを奪い取った場面は国内外の多くのサッカー関係者を唸らせた。
昌子自身も成長した、と手応えを感じていた。それでも新たなシーズンへ向けて、何とも意外な抱負も口にしていた。
「すべてを忘れる必要があると思っている。昨シーズンの経験を生かすためにも、変に自信を持ったりすることのないように、代表を含めて新たな気持ちで向上心を抱いてやっていかないと」
新体制の陣容も昌子を刺激した。センターバック陣は補強なしで、むしろ韓国代表歴をもつファン・ソッコが退団。24歳にしてセンターバック陣の最年長になった昌子は、柴崎岳(テネリフェ)が抜けた常勝軍団の中で、次世代のリーダーとしてのバトンを託されたと感じずにはいられなかった。
「J1での試合数も一番多い、年齢も一番上やと考えると、自然と責任感というものが出てきますよね」
昨年9月以来の日本代表復帰を果たした昌子に対して、ハリルホジッチ体制の初陣となった2015年の3月シリーズ以来、約2年ぶりに招集されたのが34歳のMF今野泰幸(ガンバ大阪)だ。
3バックの前に遠藤保仁をアンカーとして配置。その前方で同じく代表に復帰した倉田秋とともに上下左右に絶え間なく動き回り、十八番とするボール奪取を含めた守備だけでなく、ゴールにも積極的に絡んでいくインサイドハーフとして新境地を開拓。指揮官を再び振り向かせた。
本来はボランチを主戦場としてきたが、ザックジャパンではセンターバックとしてプレー。178センチと決して高くはない身長に時間の経過とともにストレスを感じ、ワールドカップ・ブラジル大会の前後には精神的なスランプにもはまり込んだ。
それだけに、ボランチの仕事に加えて攻撃面でも貢献する新たなポジションに充実感を覚えているのか。「まさしくニューガンバでしょう」と表情も明るい。
そして、中盤のトップ下候補では、ザックジャパン時代の2013年夏の東アジアカップ以来となる代表復帰を果たした高萩洋二郎(FC東京)が異彩を放つ。
肩まで伸びる長髪に、黒いバンダナ風のものをかぶせて束ねた風貌だけではない。所属クラブが前回招集時のサンフレッチェ広島からウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC(オーストラリア)、そしてFCソウル(韓国)と変わるたびに、天才肌のパサーは異国の地で生き抜くための術を身にまとった。
今シーズンから加入したFC東京ではボランチとして、華麗なセンスと視野の広さに泥臭さと球際の強さを上塗り。FCソウル時代から獲得を考えていたFC東京の立石敬之GMは、30歳になった高萩がもたらす相乗効果に「少し大人になって、いろいろなものが見えているんじゃないかな」と目を細める。
本格化していくJ1の舞台で、アジアの地で得たものをどのように発揮していくのか。高萩は「それはこれから(のプレーで)見つけてください」とちょっぴり照れくさそうに笑う。
トップ下候補にはもう一人、昨年の終盤戦でハリルジャパンのレギュラーを確保した感のある清武弘嗣がいる。もっともこのオフに、昨夏に加入したばかりのスペイン1部の強豪セビージャから古巣セレッソ大阪に、それも自らの意思で移籍した。
チームの構想から事実上外れたセビージャでの日々で、「試合に出るための体力が失われている」と実感した。来年のワールドカップ・ロシア大会を考えた時に、立ち止まることは許されない。
清武の意向をくんだC大阪も、今シーズンのチーム編成を終えた後ながら、日本円で約6億円とされる移籍金を捻出。実質的な借金を背負ってまで迎え入れてくれた新天地へ、清武は感謝の思いを捧げる。
「日本に帰ってきたことに後悔はない。進んでいくだけ。持てる力のすべてを注ぎたい」
古傷でもある右太ももの裏の違和感で開幕2戦を欠場したのも、無理をして長期離脱となれば、さらに大きな迷惑をかけると断腸の思いで決断を下したからだ。
代表メンバー発表後で初めて迎える週末。鹿島は敵地で清水エスパルス、G大阪はホームで浦和レッズ、FC東京はホームで川崎フロンターレとの多摩川クラシコ、そしてC大阪はホームでサガン鳥栖とそれぞれ対戦。戦いを終えてから息つく間もなく機上の人となり、決戦の地アル・アインへと向かう。
文=藤江直人
By サッカーキング編集部
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