今、話題を集めているeスポーツとは、eJ.LEAGUEとはなんなのか? [写真]=Getty Images
一般的なスポーツ選手さながらに、ゲームで“戦う”プロゲーマーの誕生と増加、大規模な賞金制大会の開催、対戦ゲームプレイヤーの裾野の拡大……。
さまざまな要素が交わって、eスポーツは日本でもムーブメントを起こしつつある。そんな状況を受けて、日本最大級のプロスポーツ組織であるJリーグがeスポーツ事業に参入した。
5月4日、その記念すべき第一歩となる大会、『明治安田生命eJ.LEAGUE』(以下、『eJ.LEAGUE』)の決勝ラウンドが行われる。
ここでは、そもそもeスポーツとは何か、『eJ.LEAGUE』とはどんな大会なのかといった基礎知識を紹介しよう。
文=丸谷健太(ゲームライター)
写真=野口岳彦、ゲッティ イメージズ
■優勝賞金11億円超えの大会も
「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ」(electronic sports)の略称で、主に対人戦要素のあるビデオゲームをスポーツ競技として扱う際に使われる名称だ。
1990年代後半〜2000年代初頭にオンライン対戦文化が発展したこと、対戦に特化したFPS(一人称シューティングゲーム。主観視点で銃撃戦メインの戦いを楽しむゲームジャンル)やRTS(リアルタイムストラテジー。部隊の移動、戦闘、生産といった行動をリアルタイムで指示して戦う)が登場したことにより、北米を中心とした海外でブーム化した。
ストイックな対戦を志向するプレイヤーが増加したのはもちろん、その対戦を見て楽しむという、一般的なスポーツと同じような観戦文化も生まれ、エンターテイメントのひとつとして定着している。
大規模な市場を形成している海外のeスポーツシーンでは、MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ。RTSから派生した複数人が2つの陣営に分かれて戦うチームバトル)と呼ばれるゲームジャンルが高い人気を誇る。なかでもトップクラスの競技人口と観戦人口を抱える『League of Legends』や『Dota2』といったゲームタイトルでは、1回の大会に数百万ドルの賞金が用意されることも少なくない。2017年には優勝賞金が約11億円超に上った大会も開かれた。
しかし日本においては、eスポーツのメインストリームであるPCゲーム、FPS、RTS、MOBAといったジャンルの人気が海外ほど高くない。さらに、法的な問題やゲーム全体を取り巻く環境、認知の違いといったゲーム外の要因もあり、eスポーツの市場規模や認知度は他国と比べて低いと言わざるを得ない。
しかし、「ゲームの対戦を楽しむ」という文化は、日本にも長く存在している。1990年代初頭には対戦格闘ゲームブームが巻き起こった。その規模は縮小傾向にあるものの、今なおゲームセンターに根づいている。さらに言えば、対戦格闘ゲームブーム以前にも、プレイ中に獲得した点数を競う「ハイスコア集計」という文化があった。そのような経緯もあってか、対戦格闘ゲームを種目にした大会は国内でも頻繁に開催されている。また、eスポーツ黎明期から現在に至るまで、海外で行われる大会にも多くの日本人プレイヤーが参加し、好成績を残している。これにより2010年代後半からは国内外の企業からスポンサードを受ける「プロゲーマー」も複数誕生した。
また、近年は家庭用ゲーム機でのオンライン対戦の環境が充実したことにより、『Call of Duty』シリーズや『Overwatch』といったFPSや、『ウイニングイレブン』や『FIFA』シリーズといったスポーツゲームをプレイする層も増加した。さらにiPhone、Androidスマートフォンという日本で最も普及率の高いデバイスで『Hearthstone』、『シャドウバース』といったDTCG(デジタルトレーディングカードゲーム)がプレイ可能となったため、日本のeスポーツシーンも拡大を続けているのは間違いない。
こうしたプレイヤー、そして観客の裾野拡大に伴い、ここ1、2年は企業や団体の動きも活発化している。複数のプロチームが『FIFA』シリーズ、『BLAZBLUE』シリーズ、『Overwatch』でリーグ戦を行う『日本eスポーツリーグ』、『ストリートファイター5』、『シャドウバース』などの賞金制大会を行う『RAGE』といった企業主導の大会は定期的に開催されている。また、2018年2月には「JeSU」(一般社団法人日本eスポーツ連合)が設立。プロライセンスの発行や、ライセンスを付与されたプレイヤーたちによる賞金制の大会が行われるようになった。
■『eJ.LEAGUE』とは?
例年になくeスポーツ関連のニュースが世間を飛び交う中、今年3月にeスポーツに参画することを表明したのがJリーグだ。記者会見では、『eJ.LEAGUE』の開催とその概要が発表された。
その大会種目として選ばれたのは、エレクトロニック・アーツ(EA)社のサッカーゲーム『FIFA18』。毎年ヨーロッパのサッカーが開幕する前後に発売され、全世界でコンスタントに数百万本のセールスを上げているタイトルだ。
大会は3月から4月にかけてオンライン上で行われた予選ラウンドを経て、5月4日にはJFAハウスで決勝ラウンドが実施される。決勝ラウンドには予選ラウンドを突破した10名のプレイヤーに加え、鹿島アントラーズ、FC東京、横浜F・マリノス、ガンバ大阪、サガン鳥栖が選んだ「J1推薦枠」の選手が参戦。ここで優勝したプレイヤーはFIFAが主催するeスポーツの国際大会『FIFA eWorld Cup 2018』につながる『Global Series Playoffs』への出場権を得る。
決勝ラウンドの試合は、Jリーグの試合と同様にDAZNで中継されることが決定している。さらに、TwitchやOPENREC.tv、YouTube(Jリーグ公式チャンネル)といったeスポーツタイトルの大会配信で馴染みのある配信サービスでもリアルタイム視聴することが可能だ。
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