今季から鹿島で13番を背負う荒木遼太郎 [写真]=Getty Images
「今季は3・4・5月で合計22試合やるので、スタートダッシュが非常に重要。昨季終盤のサッカーを序盤から示して優勝を狙いたい」
就任2年目のザーゴ監督が開幕前からこう強調していたように、2021年にクラブ創立30周年を迎える常勝軍団・鹿島アントラーズは5年ぶりのJ1タイトル獲得を至上命題と位置付けている。
ところが、2月27日の開幕・清水エスパルス戦でまさかの逆転負け。続く3月6日のガンバ大阪戦も相手のコロナ感染者発生によって中止となってしまった。
巻き返しを期す彼らにしてみれば、予期せぬアクシデントの連続。そんな嫌な流れに歯止めをかけたのが、19歳の若武者・荒木遼太郎だった。
清水戦の先制点は空砲に終わったが、3月10日の湘南ベルマーレ戦では開始3分に右足で豪快な先制弾を叩き込むと、60分にはダメ押しとなる2点目をゲット。今季J1初勝利へとチームを導いたのだ。
さらに13日のサンフレッチェ広島戦でも、1点のビハインドを背負っていた69分に値千金の同点弾を挙げる。三竿健斗からの縦パスを受けてファン・アラーノに預け、土居聖真、エヴェラウドとボールが経由する間に相手守備陣の背後にスッと侵入。反転しながら右足を振り抜くという芸術的な崩しからの一撃で、敗戦からチーム救った。
これで3試合連続の今季4点目。J1得点ランキングでも3位タイに浮上した。「プロ2年目の今季は5ゴール5アシストはノルマで、それを越えていきたい」と開幕前に話していた数字に早くも手が届きそうだ。
「チームの同世代に負けたくないのはありますけど、アラーノとかにも負けたくない。とにかく試合に出続けること。今年は自分のポジションの競争がすごいので、その中で結果を出し続けて、出続けることが大事」と語気を強めていた通りの堂々たる活躍ぶりである。
名門・東福岡高校から加入した昨季は2006年の内田篤人以来となる高卒新人開幕戦出場を果たしたが、26試合出場2ゴールという数字には満足することができなかった。
「試合に出た中で100%のパフォーマンスを出せないことが多くて、自分としては悔しい年になったかなと。全体的にはドリブルは結構、通用したなと思いましたし、試合を重ねて自信もつきました。でも、チームが勢いを出したい時に役割を果たせなかった。そういう選手にならなきゃいけないですね」と口を突いて出るのは、反省と不完全燃焼感がメインだった。
だからこそ、今季は飛躍的成長を遂げなければならない。そう痛感した1つの大きなきっかけが背番号の変更だ。鹿島で通算80得点点を挙げた柳沢敦、同じく49点を奪った興梠慎三という偉大な点取り屋がつけた13番への変更を打診され、荒木は快諾したという。
「スタッフに言われた時はちょっとビックリしたんですけど、自分もこの番号にしたいと思った。13番はゴールを決めるイメージが強くて、プレッシャーがありますけど、気が引き締まるというか、番号に恥じないプレーをしたいと思っています」
決意と覚悟がプレー1つ1つに色濃く表れている。ここまでの4ゴールはすべて左右の足を思いきり振り抜く形で、一切の迷いが見られない。広島戦の得点は「見えてなかったのでオフサイドかなと思った」と言うが、それでも信じてシュートを打ったからネットを揺らすことができた。伸び盛りのアタッカーらしい真っ直ぐな姿勢は頼もしく映る。
とはいえ、ルーキーイヤーの昨季はそこまで強気にはなれなかった。前述のコメント通り、試合で持てる力のすべてを出しきれないことが多く、マークされるたびに消極的になっていく自分がいたのだ。
そこで背中を押してくれたのが、昨季途中にU-19日本代表のロールモデルコーチに転身した内田だった。
「ドリブルで仕掛ける時に相手に分析されるようになり、だんだんうまくいかなくなったんです。そんな時、『ミスを恐れず、どんどん持ち味を出していけ』『ドリブルで仕掛けていけ』と言われて、思い切って100%の力で行くことを考えるようになりました」と荒木は偉大な先輩に感謝する。
内田や曽ヶ端準といった数々のタイトルを取った先人たちが去った今、「自分たちが常勝軍団の担い手にならなければいけない」という意識は誰よりも強い。それを永木亮太や土居や三竿といった年長者たちから感じながら、荒木も貪欲に泥臭く勝つことを追い求める日々だ。
「練習の中から亮太君や健斗君たちが激しさや速さをプレーで示してくれて、軽い気持ちで戦っていたらダメなんだと。負けた後の練習なんか、ピリつくというか、そのくらいの厳しさでやってますし、年齢に関係なく自分からも要求しています。僕がチームを勝たせるような選手にならないといけないと思ってます」
自覚を持ち続け、鹿島最大の得点源となり、名門の看板アタッカーに飛躍できれば、3月26・29日のU-24アルゼンチン代表戦のメンバー入りはもちろんのこと、東京五輪本大会参戦、近い将来のA代表入りも狙える。
かつて日の丸を背負った柳沢、興梠を超えるべく、ここからさらに数字を残し続けていくこと。それが今の荒木遼太郎に託された最重要テーマと言っていい。さらなるブレイクが大いに楽しみだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子