[写真]=Y.S.C.C.横浜
4月13日、Y.S.C.C.横浜は元香港代表MFアオヨン・ユーチョンが香港レンジャーズFCより完全移籍加入することを発表した。香港やポルトガル、中国の複数クラブを渡り歩き、香港代表として日本代表との対戦経験もあるプレーヤーだ。
史上初の香港出身Jリーガーとなるアオヨンに、移籍の経緯、Jリーグや日本に対する印象、そして香港サッカー界の現状を聞いた。
取材・文=井川洋一
香港出身の初のJリーガーとしての使命感
──Y.S.C.C.横浜への移籍の経緯を教えてください。
アオヨン 僕にとって、Jリーグでプレーするのは子供の頃からの夢でした。そして2カ月ほど前に、代理人の方にクラブを紹介していただき、練習参加のチャンスをもらえたのです。
──練習に参加したときの手応えはいかがでしたか?
アオヨン これまでに香港出身のJリーガーは一人もおらず、その点では不安もありました。練習に参加したとき、周りの選手のレベルは全体的に高くて、最初は自信もあまり持てませんでした。でも、チームメイトや監督、コーチの方々が温かく迎えてくれて、自分のパフォーマンスを見せられるようになりました。それから、三浦泰年さんや鈴木隆行さんにもお会いでき、コンディションをキープするために、いろいろとアドバイスをいただきました。彼らを含め、関係者の皆さんに心から感謝しています。
──現在(4月28日の取材当日)は香港にいるようですが、来日はいつ頃になりそうですか?
アオヨン ビザの手続きで、一度こっちに戻っているのですが、なるべく早く日本に行きたいと思っています。
──Jリーグや日本のサッカーにはどんな印象を持っていますか?
アオヨン 僕は香港代表として日本代表と何度も対戦したことがあるのですが、いつも日本人選手のレベルはすごく高いと感じていました。特に技術が優れている。自分自身、サッカーを始めたきっかけはJリーグとか、『キャプテン翼』とか、テレビゲームとか、すべて日本のものの影響だったんです。
──憧れの選手は?
アオヨン 三浦知良選手ですね。以前(2013ー14シーズン)、僕が横浜FC香港に所属していたときに横浜FCの練習にも参加させてもらい、そこでカズさんを近くで見ることができました。最初はその年齢でサッカーをしていることに驚きましたが、日々の練習に打ち込む姿や動きを見て、すぐに理解できました。カズさんの情熱をひしひしと感じ、努力を続けていけばその年齢でもできるのだなと。また練習に参加していた僕にも、すごく良くしてくれました。いろいろとサポートしていただき、とても幸せでした。
──J3の印象はいかがですか? 自信のほどは?
アオヨン これまでにポルトガルや中国でもプレーし、ユース時代はイングランドやオランダのクラブにも練習参加したことがあるのですが、技術面では日本が最も優れていると思います。ただ僕も今回、高い壁を乗り越えてこの移籍を勝ち取ったわけですから、自信を持ってプレーしたい。得点やアシストでチームに貢献したいです。
──ご自身のストロングポイントを教えてください。
アオヨン フィジカルと運動能力。それからゴールにつながる決定的な仕事ができるところです。
──日本での生活に期待していることといえば?
アオヨン 香港に住んでいる多くの人と同じように、僕ももとから日本のことが大好きでした。もしこの職業を選んでいなかったら、日本に留学しようと思っていたくらいです。漫画、ファッション、音楽、映画、ドラマ、そしてサッカーと、すべて日本のものが好きなんです。食べ物は、唐揚げと納豆。チームメイトやスタッフもすごく親切なので、不安はありません。一生懸命、日本語を勉強し、日本人のように生活したいですね。
──プレッシャーは感じていませんか?
アオヨン 香港出身の初のJリーガーということもあり、期待されると思いますが、それは重圧というよりも使命感に近いです。緊張もあまりしていないですし、本当に楽しみにしています。香港出身の選手もサッカーができるんだというところを日本のファンに見せたいですね。良いパフォーマンスで、応援してくれる皆さんに恩返ししたいです。
──最後に、香港サッカーの現状と課題を教えてください。
アオヨン 香港代表には(帰化した)外国人選手が多くて、香港出身の選手になかなかチャンスが回ってきません。そこが大きな問題の一つだと思います。香港代表は2009年の東アジア競技大会の決勝で、日本(Uー20代表。大迫勇也や永井謙佑、鈴木大輔らが出場)を下して優勝した経験があります。でも、あれから10年以上が経ちましたが、香港代表の環境は何も変わっていない。進歩していないんです。それはすごく悲しい。だから僕がこれから日本でプレーすることによって得た経験を、いつか香港に持ち帰り、少しでも香港サッカー界に役立てたいと思っています。特に、香港出身の選手が海外に挑戦できるような環境づくりをしたい。そのために、自分ができることをしていきたいと考えています。いつか自分が現役を引退したとき、香港サッカーを発展させていけるように。
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By サッカーキング編集部
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