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南野も評価…19歳の“ケンカ番長”井手口が大舞台で見せた強さと賢さ

2016.01.20

サウジアラビア戦で決勝点を挙げた井手口陽介 [写真]=Getty Images

 サウジアラビアとのリオデジャネイロ・オリンピック アジア最終予選グループリーグ第3戦。タイとの第2戦から先発10名を入れ替えたU-23日本代表は2-1で快勝を収め、3戦全勝での決勝トーナメント進出を決めた。このサウジアラビア戦で3ボランチの左として初出場・初先発を果たしたのが19歳のMF井手口陽介。所属するガンバ大阪では高校生のうちから出場機会をつかむなど、長谷川健太監督からもその才覚を高く評価される逸材が、満を持しての登場となった。

 U-19日本代表時代からともにプレーしてきた同じ大阪出身のFW南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)は、「点も取れる、パスも出せる、(相手の攻撃を)つぶせる。なかなかいないタイプだし、相当なポテンシャルを持っている」と評する。同時に「あの顔からも分かるように、メンタル的にも相当なものがある」と笑う。大舞台での初出場にもかかわらず、少しも動じたところがない井手口の胆力は、海外でプレーする俊英にも改めて印象に残ったようだった。

 動じない井手口はホテルから出発する直前、いつものようにLINEアプリのゲームを楽しんでいたという。ゲームのメッセージが送られてきたG大阪の同僚であるDF米倉恒貴からは「おまえ、試合前だろ!」というツッコミのメッセージが飛んできたそうだが、何とも井手口らしいエピソードである。「そのゲームは別に(G大阪でも)流行ってはいないです。ヨネくんとハルくん(藤春廣輝)、タカくん(西野貴治)くらいしかやっていない」という狭いコミュニティの中に平常心の存在感(?)を示しつつ、試合に入ってからは別の意味で確固たる存在感を示すこととなった。

 その言葉どおり、3ボランチの一角として先発したこの日は、相手ボランチの動きを戦術的にケアしながら、ぶつかり合いとなれば激しく戦い、相手に主導権を渡さない強さと賢さを見せつけた。試合前日の練習を終えた直後、井手口は「2試合をベンチで見ていて悔しい思いがあった。チームが勝ててうれしかったけれど、悔しさも強かった。その悔しさを晴らしたい」と率直に語った上で、「球際の強さ、セカンドボールを拾うところは自分の良さであると思うので、そこをまず出していきたい」ともコメントしていた。まさに有言実行のプレーぶりである。

 自分より一回り大きな相手にも、まるで物怖じせずに向かっていくメンタリティは、「ケンカ番長」とも呼ばれる男らしいもの。出色の出来というほどではないが、この大会では初出場した選手が軒並み過緊張での低パフォーマンスを見せた中で、「普段どおり」のプレーができるすごみが確かにあった。

 さらに53分には、ハイライトと言うべきシーンもやってきた。右サイドでボールを持った南野が中へとドリブルを開始すると、すかさず動き出す。「逆サイドにボールがある時、(ボランチの)裏が空くというのは思っていた」という戦術的判断と、「(南野が)中に切り込んできた時、パスが来るかは分からなかったけれど、もし来たらダイレクトで打とうとは思っていた」という万全の準備から、落ち着いてインパクト。GKの捕れない位置へと飛んだボールがゴールネットを揺らし、結果としてこの2点目が決勝点となった。

 狙ったとおりのコースへ飛ばすシューティング技術に加えて際立つのは、まるで慌てないハートの強さで呼び込んだ得点シーンだった。試合の中でも慌てず騒がず、しかししっかり「戦う」だけに、本人が試合前に目標として掲げていた「決勝トーナメントでも使ってもらえるようなプレーをする」というタスクは果たしたのではないか。少なくとも井手口を初めて見た人がその名を記憶するくらいのインパクトは残したと言えるし、準々決勝以降に向けて手倉森監督の選択肢が増えたのも間違いない。

文=川端暁彦

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By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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