22日に準々決勝でU-23イラン代表と対戦するU-23日本代表 [写真]=Getty Images
22日にリオデジャネイロ・オリンピック アジア最終予選の準々決勝でイランと対戦するU-23日本代表。3位以内に本大会出場権が与えられることになっており、まずはここで勝利しなければ話は始まらない。
DF植田直通(鹿島アントラーズ)の言葉を借りれば、「ここ(=準々決勝)がいつも僕たちの壁になっている」ということになるし、MF矢島慎也(ファジアーノ岡山)に言わせれば「僕らはベスト8で負け続けてきた」という表現になる。いずれにせよ、「アジアの8強」がリオデジャネイロ・オリンピック世代にとって“関門”となってきたのは紛れもない事実だ。
最初の壁は2012年のU-19アジア選手権。勝てば世界大会出場が決まる準々決勝の相手はイラクだった。後にU-20ワールドカップでベスト4入りするなど旋風を巻き起こす“イラク黄金世代”に対して、GK櫛引政敏(鹿島)、DF遠藤航(浦和レッズ)、岩波拓也(ヴィッセル神戸)、山中亮輔(柏レイソル)、MF大島僚太(川崎フロンターレ)、矢島、FW久保裕也(ヤング・ボーイズ/スイス)といった現在の主力選手たちがズラリとスタメンに名を連ねたチームは1-2と敗戦。「フワフワと試合に入ってしまった」と矢島が嘆いたとおり、内容的にも見るべきものに乏しい敗退だった。
さらに2014年のU-22アジア選手権。“手倉森ジャパン”としての初陣となった大会の準々決勝で再びイラクと対戦。櫛引、山中、矢島といったU-19以来の選手に加えてDF植田、MF原川力(川崎)、FW鈴木武蔵(アルビレックス新潟)、中島翔哉(FC東京)、浅野拓磨(サンフレッチェ広島)といった選手たちが出場したが、0-1での敗戦に終わった。さらに同年9月のアジア競技大会でも準々決勝で地元・韓国に0-1と敗北。押し込まれ続けた内容に加えて、またも準々決勝敗退という結果に打ちひしがれることとなった。
もっとも、この2試合に関しては五輪世代強化のために日本があえて年下のチームで大会参加していたというエクスキューズもある(イラクは約半数が“実質U-23”の世代で、韓国は全員が年上の選手たちだった)が、心理的な意味でのダメージは確かに残っている。
そして2014年のU-19アジア選手権でも、今度は日本の年少組が同じ準々決勝で苦杯をなめている。FW南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)、オナイウ阿道(ジェフユナイテッド千葉)、MF井手口陽介(ガンバ大阪)を擁したチームは1-1からのPK戦の末に朝鮮民主主義人民共和国に敗れ、またも世界大会出場権が得られるベスト4の目前で散ることとなった。
U-19世代について言えば、彼らの先輩たち(2008年、2010年大会)もアジア8強で散っていた経緯があり、A代表も昨年のアジアカップで8強敗退としている。“アジアの準々決勝”は近年の日本サッカーにおいて最大関門となってきた流れがあるだけに、リオ行きを目指す選手たちも強く意識せざるを得ない舞台と言える。
ただ、今回は過去の流れと違う部分がある。より正確に言うならば、過去の流れと決別するために取り組んできたのが、このU-23日本代表というチームだった。U-19時代の敗戦を知り、このチーム立ち上げ時から汗をかいてきた矢島は言う。
「このチームがどれだけ成長してきたのか。それを僕はこの目で見てきたし、世界大会に懸ける思いも、あの頃(U-19時代)とはまるで違う。以前はチームの雰囲気も良くなかったし、みんなで戦っている感じではなかった。でも今はオリンピックという目標に向かってみんなでサッカーをやっている感じがする」
あの頃とは違うという話は、こちらもU-19時代からのメンバーである山中の口からも出てきた。
「U-19の時にあまりチームの雰囲気が良くない状況でやった経験もしている。いまはプロで何年もやっている選手が多いし、試合に出られない時の振る舞い方も分かっている。みんな大人になって成長しているし、いまは誰一人として“落っこちそう”な選手がいない」
この決戦を前に「過去の先輩たちが五輪を契機にA代表へ成長してきたことを見れば、彼らのサッカー人生の中で一番大切な10日間を過ごすことになる」と語った手倉森監督は、「自分たちの気持ちの持ち方が大切だと思う」と精神面の重要性を強調する。一発勝負という「全く違うメンタルになる」(南野)中で、持っている力を発揮できるかがまず問われる。ここから始まるのは、そういう戦いだ。
リオ五輪最終予選は、大会前からチーム全員が最大の関門と意識してきた準々決勝を迎える。対するは西アジアの雄、イラン。指揮官の言う「しびれる戦い」が待っているのは間違いない。
文=川端暁彦
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By 川端暁彦