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ブルガリア戦は最終予選に向けた絶好の試金石…ハリルジャパンの現在地を確認せよ

2016.06.03

日本代表は3日にブルガリア代表と対戦する [写真]=三浦彩乃

 アジア最終予選へ、そしてその先のワールドカップを見据えた戦いへ――。ハリルジャパンの“第二段階”が、いよいよ本格始動する。

 その第一歩となるのが、ブルガリア、デンマーク、ボスニア・ヘルツェゴヴィナというヨーロッパの強国を集めた今回のキリンカップサッカー2016だ。キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)は「W杯のグループステージで対戦するようなレベルの相手。こういう機会に自分たちの立ち位置をしっかり感じたい」と前を見据えた。

 同大会の初戦で日本が3日に対戦するブルガリアは、3月の国際親善試合でポルトガルにアウェーで勝利した実力派で、堅守からの鋭いカウンターが得意。高さと強さを兼ね備えたチームでもある。センターバックの吉田麻也(サウサンプトン)はチームメートのポルトガル代表から情報を入手し、「かなり守備を固めてカウンターを狙ってくる。彼らもそれでやられた。FWはピンポイントで合わせてくるタイプ。そういうシチュエーションは最終予選でも出てくると思うので、レベルが高くなったチームに対してブロックをこじ開けられるかどうかとカウンターに対してのリスクマネジメントは、今後への準備としてすごくいいテストになる」とブルガリア戦の意義を語る。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も大会初戦に向けた公式会見で「ヨーロッパのフィジカル的に強いチームにどのような守備をするのか。デュエル、特に空中戦で対抗できるのかどうか。そしてオフェンス面で我々のプレーが見せられるのか」とコメントした一方、5-0で勝利した3月のシリア戦で終盤に鋭いカウンターから複数のビッグチャンスを作られた件を「ブルガリアにあれをやってしまえば1、2点は失ってしまう」と厳しく断じた。今大会は本田圭佑(ミラン)の負傷離脱で攻撃陣のオプション構築が注目されているが、ハリルジャパンで長くプレーする槙野智章(浦和レッズ)は「監督は常に“守備があってこその攻撃”と言っています」と指揮官の要求を明らかにする。

 また、同監督は9月からのアジア最終予選を勝ち抜くためだけでなく、今回のキリンカップを「W杯本大会に向けての準備」とした。そして日本代表にさらなる進化を求めていく上で、新たなトライとして「これから彼のフィジカルの強さが必要になる」と槙野の左サイドバック起用を明言。これまで日本代表ではセンターバックとしてプレーしてきた槙野だが、3バックの左ストッパーに入る浦和では、サイドバックに近い攻撃的な役割も果たしている。日本代表の左サイドバックには長友佑都(インテル)という絶対的な存在が君臨するものの、高さのある槙野をフィジカルに優れたヨーロッパ勢相手にサイドバックとして試すことで、チームにオプションを加えたいと考えたのだろう。

 当の槙野はセンターバックとの兼用に「器用貧乏にはなりたくない」と複雑な心境を明かしながら、「最終予選に向けて、これからレベルの高い相手と組むことになる。自分たちがボールを保持する時間は少なくなるだろうし、そういう意味では守備のところが重要になる。高さ、フィジカル、守備の部分は監督に非常に評価してもらっています。今まで呼んできたサイドバックの選手にないものが自分にあるとおっしゃってくれたし、そこは自分でも最大限に生かさなければいけない。守備に重点を置きながら、ゴールに絡むプレーも出していきたい」と意気込む。

 アグレッシブながらファールをせず、相手に前を向かせない守備を行い、ボールを奪って素早くゴールを陥れる。そして攻撃しながら相手のカウンターをリスクマネジメントする。攻めながら守備を意識し、守りながら攻撃を考える――。それを高いレベルで実現するのが、ハリルホジッチのスタイルだ。昨年3月の指揮官就任から指揮官が一貫して求めてきた素早い攻守の切り替えは、アジア二次予選で一定の成果を残した。これが果たしてパワー、テクニック、スピードを兼ね備えたヨーロッパ勢に対しても体現できるのか。もちろん攻撃面では本田欠場時にいかなるサッカーを見せられるのかも問われる。

 9月の最終予選スタートまでに残されたテストマッチは、今回のキリンカップ2試合のみ。まずはブルガリアとの初戦だ。フィジカルとカウンターを武器とする東欧の強豪との一戦は、ハリルジャパンがこれまで積み上げてきたスタイルの現在地と総合力を知るための絶好の試金石となる。

文=青山知雄

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