[写真]=兼子愼一郎
「ワールドカップ予選のような大事な大会はこれまであまりやったことがないので、いい経験になると思います。日本のリーグは海外に比べるとまだまだのところがあるけど、『海外組の中に入ってもしっかりプレーできるぞ』というのを見せられれば、自分自身の成長にもつながるし、いい刺激にもなると思います」
キリンチャレンジカップ2019のパラグアイ戦、2022 FIFAワールドカップカタール・アジア2次予選のミャンマー戦へ向けて、日本代表が2日から始動した。招集された23人のうち、海外組は史上最多の19人で国内組はわずか4人。DF陣で唯一の選出となった畠中槙之輔は自身初のワールドカップ予選に向けて意欲を高めている。
8月30日に行われたJ1リーグ、ガンバ大阪戦では1失点を喫したが、宇佐美貴史やアデミウソン、パトリックといった個人能力の高いアタッカー陣を確実に止め、武器であるパスや組み立ての部分でも存在感を発揮。3-1の勝利に貢献し、3カ月ぶりの代表合流に弾みをつけた。
「相手どうこうじゃなくて、まず自分たちのプレーをしようという意味でハイラインのサッカーをやっていました。後半にギリギリのところでラインを突破されたりして、ちょっと危ないシーンもありましたけど、ハイラインをやり続けましたし、それで勝ち切れたのは本当によかった。自分自身も甘い部分がありましたけど、そこはしっかり考え直してやらなきゃいけないと思います」と収穫と課題を手にパラグアイ戦の舞台・鹿嶋に乗り込んだ。
今回の森保ジャパンのDF陣では、吉田麻也が1月のアジアカップ以来の合流を果たした。畠中は「今回、吉田麻也選手と初めて一緒にやるので学ぶことは多いと思います。麻也選手は足元がうまいですし、対人も強いし、空中戦も強い。日本とは違うスピードや強さを持った選手がいる向こうで何年もやれている選手なので、すごい勉強になると思いますね。盗めるものを沢山盗んでマリノスに還元して、チームのランクをもう1個上げられるような務めを果たせればいい」と、共演を心待ちにしている。
吉田は21歳でオランダに渡り、畠中と同年齢の頃にはプレミアリーグに参戦していた。今季で欧州に渡ってから12シーズン目を迎えるが、ここまでトップレベルで戦えたのはDFとしての非凡な能力のみならず、英語でのコミュニケーション力、幅広い視野と包容力、人を動かす力などの「人間力」が抜きん出ているからだ。
「僕は人見知りなので、初めて会う人には緊張しますね」と恥ずかしそうに言う畠中が吉田の領域に達したいと思うなら、自ら積極的にアクションを起こして、代表守備陣を引っ張っていくくらいの心意気が必要だろう。畠中は東京ヴェルディ時代の同期である安西幸輝、1つ年上の中島翔哉といった慣れ親しんだ仲間に囲まれているという追い風もある。そういったプラス要素も生かして、ここから大胆な変貌を遂げてほしいところだ。
「国内組唯一のDFといっても、僕はまだそこまで気負わず気楽にやればいいのかなと思いますね。まだそんなプレーヤーじゃないんで」とあくまで謙虚な物言いを繰り返す畠中だが、ここから始まるカタールW杯へのサバイバルが熾烈を極めるということはよく認識している。森保監督も「今回はこのメンバーを呼びましたけど、次が保証されているわけではない」とメンバー発表会見で警鐘を鳴らしていた。今回もロシアW杯でレギュラーを張った昌子源がケガで招集見送りとなり、6月に呼ばれた中山雄太も落選した。こういった厳しい現実を頭に入れつつ、今回の2連戦では持てる力の全てを発揮するしかない。
幸いにして、森保監督は畠中のようなパスセンスに優れたDFを好む傾向が強い。横浜FMで見せる安定感したパフォーマンスも高評価しているから、3月から代表に呼び続けているのだろう。今回のワールドカップ予選は格下のミャンマーと対戦するため武器を生かしやすい。自身の存在価値を示す絶好のチャンスを迎えようとしているのだ。
「ワールドカップは3年後なのでどうなってるか分からないですし、自分はまだ代表常連とは言えない。まずは目の前の1試合1試合をしっかり戦えればいい」と畠中は一歩ずつ前へ進む覚悟を口にする。24歳で伸び盛りのDFにとって今回の2次予選初戦は自身の未来を左右する重要な舞台になりそうだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子