決勝点を挙げたエデルを称えるコンテ監督。ユーロ終了後に退任することが決定している
ユーロ2016フランス大会のグループ予選も大詰めを迎え、イタリアは早々と予選通過を決めた。正直、アントニオ・コンテ監督のアッズーリには期待はしていなかったものの、ベルギー、スウェーデンを相手に2試合を無失点で抑え、確実に勝ち点をものにした手腕には拍手を送るしかない。チームとして派手さはない。だが、スウェーデン戦では残りあと数分で、インテルのFWエデルが劇的な決勝点で勝利を決めるなど、運も味方しているようだ。
ご存知の通り、今年1月にサンプドリアから移籍してきたエデルの成績は及第点には遥か遠いものだった。しかし、代表で注目される立場となった。それはなぜか。現地で毎日、イタリア代表の取材をしているメディアの情報では、コンテ監督が選手たちのメンタル面を大きく変えることに成功したからだという。エデルに関しても、大会前の約1カ月間の代表合宿で、コンスタントにハードな練習に励むことによって失いかけていた自信を取り戻した。今のアッズーリに“スター・プレーヤー”はいない。ただ、同監督のもとで精神的に強くなってきた分、フィジカル面でも好影響を与え、今では全員がチームのために犠牲になる覚悟でいる。
フィジカル・トレーナーのパオロ・ベルテッリ氏が、代表のスタッフとして貢献した部分も大きい。フィオレンティーナやウディネーゼでチームを支えたベルテッリ氏は、コンテ監督が率いたユヴェントスをサポートした。ウディネ大学では、スポーツ・トレーニングのマスターコースを終了し、当時のルチアーノ・スパレッティ監督の信頼を得た。その後、スパレッティ氏のローマ監督就任に伴い、イタリア首都へと活躍の場を移した。
GPS方法というのが同トレーナーのやり方だ。トレーニング中に各選手のモニターを取って分析する。「テクノロジーを使ってのリサーチはとても有益だ。著しい伸びが現れる。原理体系を変化させ、若いトレーナーを起用することによって古い練習方法、つまり軽いトレーニングを何度もこなすというシステムでは影響を与えなかったと分かった。ただ長い時間、トレーニングをする必要はないことも再確認した。むしろ、緩急をつけたやり方が効果をもたらす。その準備方法が試合で出てくる」とベルテッリ氏は語る。
22日のアイルランド戦では、これまでの2試合とはがらりと変わった選手たちがスタメンでピッチに立つと予想されている。同じ3-5-2のフォーメーションでも連続出場するのはDFアンドレア・バルザーリだけで、2トップはFWシモーネ・ザザとFWチーロ・インモービレ、中盤もMFティアゴ・モッタらが入ると言われている。同監督はベスト16からの対戦に向けて、どの選手がどれくらいやれるかをテストしたい意向のようだ。首位通過を決めたイタリアは、27日に実施されるグループD2位とのゲームに向けて、照準を合わせていく。
文=赤星敬子