前回大会のファイナリスト同士がベスト16で激突する [写真]=Getty Images
25日から始まったユーロ2016の決勝トーナメント1回戦は、いよいよ大一番を迎える。27日に対戦するのは、グループEを首位突破したイタリアとグループDを2位通過したスペイン。4年前の前回大会の決勝カードがベスト16で早くも実現する。
ユーロ2016全51試合を生中継しているWOWOWでは、スポーツデータ会社『Opta(オプタ)』と連携し、各試合のリアムタイムスタッツを公開中。そのスタッツを参考にして、注目の一戦を読み解いてみたい。
■選手起用数最多のイタリア、全試合同じスタメンのスペイン
イタリアは、グループリーグ3試合で計22人の選手を起用。つまり、第3GKのフェデリコ・マルケッティ以外、今大会の登録メンバー全員が一度はプレーしたことを意味する。もちろん、この起用人数はグループリーグ終了時点で全体のトップ。ちなみに、ここまで3試合連続でスタメン出場しているのは、DFのアンドレア・バルザーリとレオナルド・ボヌッチの2人だけである。
対するスペインは、グループリーグ3試合連続で同じスタメンを採用したこともあり、ここまでの起用人数は17名に留まっている。グループリーグ最終戦からの試合間隔では1日のアドバンテージがあるスペインだが、ビセンテ・デル・ボスケ監督はイタリア戦でも同じスタメンを採用する予想されており、疲労度という点では、イタリアの方に分がありそうだ。
ただしイタリアでは、グループリーグ第2節のスウェーデン戦で内転筋を痛めたアントニオ・カンドレーヴァの出場が微妙とされる。カンドレーヴァはここまでチーム最多のクロス数(18)を記録しており、攻撃面で重要な役割を演じていた。果たしてカンドレーヴァはプレーできるのか。プレーできるとすれば、スタメン出場なのか、あるいは途中出場なのか。それは、イタリアの運命を左右するポイントの1つになるはずだ。
■スペインはどれだけリスクを犯せるか
グループリーグ終了時点で、スペインの平均支配率(67.2%)は全体の2位。パス成功数(1871)とパス成功率(90.1%)はそれぞれ1位と、今大会も期待を裏切らないハイレベルなポゼッションサッカーを披露している。一方で、イタリアの平均支配率(48.2%)、パス成功数(956)、パス成功率(78.4%)は、いずれもトップ10圏外。初戦のベルギー戦が象徴的であるように、今大会の彼らはボール保持にほとんどこだわっていない。それ故、この試合でもスペインがボールを持つ時間が圧倒的に長くなるだろう。
ただし、ボール保持とゲーム支配がイコールで結びつかないのは、多くのサッカーファンが知るところだ。スペインがユーロ本大会で15試合ぶりの敗戦を喫することとなった、クロアチア戦はまさにその典型例だった。
スペインはその試合で、68.2%の支配率を記録。パス成功率(91.2%)、そして敵陣でのパス成功率(88.5%)は、グループリーグ3試合で最も高かった。しかし、シュート数(15)とその枠内率(20%)は、3試合で最も低かったのだ。スムーズにボールが回っているように見えても、相手を十分に攻略できたわけではなかったということだ。味方の足元へ繋ぐ“安全パス”が多くなっていた、とも言える。
スペインはクロアチア戦の二の舞を演じないためにも、ボールを奪われるリスクをある程度背負ってでも、スペースを狙った攻撃的なパスを繰り出す勇気が必要になってくるだろう。
■イタリアが狙うべき選手は?
イタリアの組織的な守備は、大会随一の完成度を誇ると評判である。とはいえ、彼らとしても、自陣で守備を固めて、ただスペインのパス回しを眺めているだけでは、攻撃の機会を作れず、ゴールを奪うことができない。それ故、ある程度の狙いをもってプレスをかけなければならない。
では、スペインのパスワークの中心にいるのは誰か――。ありきたりな回答だが、スタッツ上でも、それがアンドレス・イニエスタであることが証明されている。イニエスタはグループリーグで、チーム最多のボールタッチ数(327)とパス数(286)を記録。ここまで、シュート2本、アシストはわずかに1つのイニエスタだが、ピッチ上での存在感が抜群なのは頷ける。
ただ裏を返せば、狙い目がはっきりしているとも言える。実際、クロアチアはイニエスタを徹底マークすることで、彼のチャンスクリエイト数(=チャンスを作った数)を、わずか1回に抑えることに成功。それが金星を挙げられた1つの要因であった。クロアチア同様、イタリアも“イニエスタ封じ”を実践できれば、勝機が見えてくるかもしれない。
■ゴールを呼び込む選手は?
スペインは攻撃的なパス回し、そしてイタリアはイニエスタ封じ。両チームがやるべきことをやったとしたら、あとはゴールを奪うのみである。その点で重要な役割を果たすのは、果たしてどの選手になるだろうか。
それを推し測る指標として、グループリーグでのシュート数とチャンスクリエイト数の合計値を算出し、チーム内で比較した。その値が高い選手ほど、「ゴールに直結する仕事を請け負っている」ことを意味するからだ。
結果、スペインでNo.1の数字を叩きだしたのは、ダビド・シルバだった。シルバはグループリーグ3試合で、8本のシュートと12回のチャンスクリエイトを記録。その合計値(20)は、イニエスタのそれ(13)を大きく上回った。ちなみに、ノリート(14)もイニエスタを上回った選手だった。つまり、ゲームを作るのはイニエスタだが、ゴールを生み出す仕事はシルバ、あるいはノリートが請け負っていると解釈することができる。ここまでゴールもアシストも記録していないシルバだが、イタリア戦では彼の活躍がスペインの勝敗を左右するかもしれない。
一方、イタリアでチームトップの数字を誇るのは、グラツィアーノ・ペッレになる。彼の合計値9(シュート数6本、チャンスクリエイト数3回)はスペインのセルヒオ・ラモス(11)にも及ばないが、ボールを奪ってから縦に早い攻撃をするイタリアにおいては、最前線でプレーするペッレのパフォーマンスが重要な鍵を握っていることが分かる。スペイン相手に劣勢の展開が予想されるなか、イタリアの4年越しのリベンジ達成は、この長身ストライカーの両足に懸かっていると言えそうだ。
By Footmedia