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最下位ハノーファーの運命を握る“救世主”…復帰迫る清武弘嗣、背番号10としての決意

2016.02.19

ハノーファーに所属する清武弘嗣。最下位に沈むチームの“救世主"となれるのか

 2月13日のドルトムント戦に惜敗し、ブンデスリーガで7連敗という泥沼に陥っているハノーファー。第21節終了時点での勝ち点はわずか14で、ダントツの最下位に沈んでいる。2部とのプレーオフに回る16位ブレーメンとも6ポイント差があり、彼らの1部残留は相当困難なミッションとなっている。

 だが、絶体絶命のピンチに直面するハノーファーに、“救世主”となり得る背番号10が帰ってくる。

 エースナンバーを背負う清武弘嗣は、昨年6月の日本代表活動中に右足第5中足骨を骨折。9月にいったんは復帰したものの、11月のカンボジア戦前日練習でほぼ同じ箇所を再び骨折してしまう。彼の非凡な創造性と高度なテクニックに攻撃面を依存していたハノーファーにとってはこれ以上ない痛手となった。12月末にはミヒャエル・フロンツェック監督が解任され、後半戦から経験豊富なトーマス・シャーフ監督が指揮を執っているものの、思うような立て直しができていないのが現状。そんな指揮官にとっても、清武の復帰は待ちに待った出来事だったに違いない。

 絶対的司令塔はすでに全体練習に合流。今週は紅白戦を含めたフルメニューをこなしている。週明けの16日に行われた10分×3本の紅白戦でも、最初の2本がサブ組、最後の1本は主力組に入って、それぞれトップ下でプレー。シャーフ監督も「キヨ!キヨ!」とひっきりなしに指示を送るほど強い期待を示していた。チームメイトのDF酒井宏樹が「キヨくんがいるとボールが収まるし、攻撃のバリエーションも増える」と語ったように、彼がいるだけで攻めのリズムは大きく変わる。スタメンかベンチスタートかはコンディション次第だろうが、指揮官が彼を21日に行われるアウクスブルクとの次節で戦力に加えるのは確実だろう。

 負傷後、年内は地元の大分でリハビリを行い、年明けからドイツに戻ってトレーニングを積んでいたという。前述の紅白戦では何度か足を気にするそぶりを見せていたが、「久しぶりのゲーム形式なんで、ふくらはぎがつりそうで(苦笑)。でも、ケガの箇所は全く問題ないですよ」と復帰のメドが立ったからか、とにかく明るい表情を見せていた。

「自分が調子がいい時にケガをするんだなと改めて思った。チームが苦しい時だったので、申し訳ない気持ちもありました。そんな時だからこそ、自分の気持ちと体を見つめ直すいい時間になったと思います。ブンデスリーガは100パーセントの力でプレーしなかったら戦えない。自分の状態がきちんと戻るまで我慢しなければいけないと思って調整してきました。次の試合は先発で出て交代するのか、途中からなのか分かんないけど、ピッチに立つ以上は何らかの結果を出していきたい。自分がチームを勝たせる力になりたいです」

 現在の素直な心境を口にした清武だが、リーグ7連敗中のハノーファーは残り13試合のうち、半分以上の試合で勝利を挙げなければ残留が厳しいと言われている。過去に大分トリニータ、ニュルンベルクで降格経験のある清武にしてみれば、追い詰められたメンタルの厳しさは嫌と言うほど分かっているはず。ただ、この重圧をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに考えるしかない――。今の彼は前を向き、いい意味で割り切って終盤戦に挑もうとしている。

「もう7連敗してるし、最下位だし、失うものはない。とりあえず2勝しないと16位に追いつかない状況ですからね。自分たちが思い切ったプレーをして、結果として落ちるなら仕方ない。消極的に戦って降格したら、そっちのほうが悔いが残る。サッカーには運もあるし、今はビクビクしてプレーしててもしょうがないって感じです。若い頃の自分だったら、すごいプレッシャーを感じていたと思う。ニュルンベルクで落ちた時はまさにそうでしたから。今はハノーファーで10番を着けさせてもらって、すごくやりがいを感じています。みんなも期待してくれて、『帰ってきてほしい』と言ってくれている。だから、今週のホームゲームで復帰できることがすごくうれしい。まだここから巻き返せると思うし、勝ち点3を常に狙っていく。僕が入ってチームを勝たせられるようにしたい」

 後半戦からはセレッソ大阪やロンドン・オリンピックでともに戦った盟友・MF山口蛍がチームに加わり、日本人3選手がハノーファーでプレーすることになった。この日の紅白戦3本目で彼らがそろって主力組でプレーし、息の合ったところを見せていた。シャーフ監督が3人を同時に使うかは定かではないが、清武自身にとってはこれが心身両面で大きな後押しになっているようだ。

「同じオリンピック世代の3人がドイツで一緒にプレーできるのはすごく珍しいこと。日本人ができるってことを僕はここで示したい。3人一緒に出られるのが理想。僕らでハノーファーを引き上げたいですね」

 対戦相手のアウクスブルクには、MFク・ジャチョル、DFホン・ジョンホ、FWチ・ドンウォンという韓国人トリオがいる。彼らはロンドン五輪の3位決定戦で対峙した面々。ある意味、因縁のある相手との勝負になる。この試合で復帰濃厚の清武が異次元の輝きを放ち、悩めるチームの救世主になってくれれば最高だ。この下位対決がハノーファーの浮沈を占う一戦になるのは間違いない。今シーズンを大きく左右する大一番で、果たして清武は真の“救世主”となれるのだろうか。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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