ドルトムントのエースMFロイス(手前)を完封したバイエルンMFキミッヒ(奥) [写真]=Bongarts/Getty Images
日本代表MF香川真司が所属する2位のドルトムントと、勝ち点差5で首位を走るバイエルンの直接対決が5日に行われ、結果は0-0のスコアレスドローに終わった。
この試合で自身の評価をさらに高めたのは、バイエルンに所属する弱冠21歳のMFヨシュア・キミッヒ。彼こそがドイツ版クラシコ『デア・クラシカー』最大の勝者だったのかもしれない。
試合後のジョゼップ・グアルディオラ監督は、同選手のことを名指しでこう評価している。
「彼はとても、とても、とても、とても素晴らしい選手だ。私は、彼と彼の仕事ぶりを愛している。学ぶことにとても貪欲で、志しが高く、情熱に溢れ、全てを備えた選手だ。彼を補強したバイエルンには最大級の賛辞を送りたい」
ドイツ紙『ビルト』によれば、この“ドイツサッカー頂上決戦”という大舞台におけるキミッヒのデータは、21歳のそれとは思えないものだった。ボールタッチ数は121回で、元スペイン代表MFシャビ・アロンソの125回に次いで2位。64パーセントという1対1勝率は、元ドイツ代表DFフィリップ・ラームの67パーセントに次ぐチーム2番目の成績。パス成功率も94パーセントでバイエルン内のトップ。走行距離もセンターバックを務める選手にしては非常に多く11.1kmだった(バイエルンのオーストリア代表DFダヴィド・アラバは9.8km、ドルトムントのドイツ代表DFマッツ・フンメルスは10.4km)。
そもそも同選手の本職はボランチであり、センターバックを務めるようになったのは、ごく最近のこと。しかもその体格は公称176cmで、小柄な部類に入る。にもかかわらず、グアルディオラ監督の信頼を勝ち取り、バイエルン最終ラインの中心としてこれだけの数値を残すことができるのだ。
観戦のためスタジアムを訪れたドイツ代表ヨアヒム・レーヴ監督は、CS放送『Sky』のインタビューで「将来、我々のチームで重要な役目を担う選手を見に来た」と話した。名前こそ挙げなかったが、キミッヒの力強いパフォーマンスは同監督の目に焼き付いたことだろう。
ドイツのサッカーファンも、新たなヤングスターの登場に色めき立っている。『スポーツビルト』誌が行ったオンラインアンケートでは、投票数約2万4000のうち85パーセントが、「キミッヒをユーロ2016フランス大会に連れていくべき」とした。ちなみに、負傷から復帰を果たしたものの、5試合連続でベンチを温めているドイツ代表MFマリオ・ゲッツェについて『ビルト』が同様の調査を行ったところ、賛成派は73パーセント。現時点では、1年半前にブラジルの地で同代表を24年ぶりの戴冠に導いた男よりも、その評価は高い。
ドイツ代表の一員としてフランスに行くのか、それともU-23同国代表メンバーとしてリオデジャネイロに向かうのか――いずれにしても、今シーズン終了後のキミッヒがゆったりとしたオフを過ごせないのは確実なようだ。
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴