コロンビア代表は攻撃的なスタイルが特徴だが守備に弱点を抱える [写真]=Getty Images
■攻撃的なポゼッションスタイルを採用
ワールドカップ南米予選を16戦9勝3分4敗で終え、首位アルゼンチンと勝ち点2差の2位で3大会ぶりの本大会出場を決めたコロンビア。同予選では10チーム中最小の16試合13失点と数字上は守備の安定を印象づけたものの、その特徴は極めて攻撃的なプレースタイルにある。
3月5日にバルセロナで行われたチュニジアとの親善試合では4ー3ー3や4ー2ー1ー3といったオプションを積極的に試しているものの、南米予選で用いたシステムはほぼ一貫して中盤ボックス型の4ー2ー2ー2。中盤の底に位置するアベル・アギラールを起点にDFライン手前から丁寧にショートパスをつなぎ、ボールポゼッションを保ちながらゲームを進めていくのが基本的なスタイルだ。
攻めては超攻撃的な両SB、右のカミーロ・スニガと左のパブロ・アルメロが快速を飛ばして両サイドを駆け上がり、左足での柔らかなボールタッチから意外性のあるスルーパスを通すハメス・ロドリゲス、フィジカルと機動力に優れたフアン・ギジェルモ・クアドラードらインサイドMFとのコンビネーションでサイドを深くえぐっていく。彼らのスピードと突破力を生かした崩しは破壊力抜群であり、守備側はスピードアップに必要なスペースを与えず、1人抜かれてもすぐ2人目がカバーに入れる距離感を保つことが求められる。
逆に言えば、相手がしっかり守備ブロックを固めた状態でからもゴールをこじ開けられるほどコロンビアの遅攻の質は高くない。そのため以前はボールは持つがチャンスは作れず、攻め上がった両SBの裏をカウンターで突かれる負けパターンにはまることも珍しくなかった。
ただ、2012年1月にホセ・ペケルマン監督が就任して以降はその問題もかなり改善されてきた。ボールポゼッションスタイルによるゲームコントロールという基本コンセプトはそのままに、ボール奪取の直後は相手の守備陣形が整うより先に素早く前線にボールを運ぶ。守備→攻撃の切り替えスピードを上げ、シンプルかつダイレクトな速攻を仕掛けるオプションを加えたことで、チームの得点力が飛躍的に高くなったのである。
その恩恵を最も受けたのは2トップのファーストチョイスであるラダメル・ファルカオとテオフィロ・グティエレスだ。2人は共に機動力とスピード、テクニック、そして決定力を兼ね備えたカウンタースタイルには打ってつけのストライカーであり、南米予選でもボール奪取の直後に素早くDFライン裏へ抜け出す彼らへのラストパスからいくつものゴールが生まれている。
■ファルカオ不在でもFW陣の人材は豊富
とりわけエースのファルカオは自ら挙げた9ゴールに加え、質の高いポストプレーで周囲を生かす役割も果たしてきた。それだけに、彼の復帰が本大会に間に合わないようであれば戦力ダウンは確実。そのファルカオは先日、「間に合うと確信している」と前向きにその可能性を語っていたが、現実的に見て100パーセントの状態で6月を迎えるのは難しいと考えるべきだろう。
とはいえ、今のコロンビアには彼の代役として本大会でシンデレラボーイになる可能性を秘めたFWが何人もいる。
昨季ファルカオの後釜としてポルトに加入し、1年目からポルトガルリーグ得点王に輝いたジャクソン・マルティネス。昨季ベルギーリーグでMVPと得点王を受賞し、今季よりセビージャのエースとして活躍するカルロス・バッカ。昨季セリエAの年間最優秀若手賞を受賞した22歳、しばしばブラジルのロナウドと比較されるフィジカルとテクニックを持つルイス・フェルナンド・ムリエル。今季のブンデスリーガで得点王争いを引っ張る活躍により、2年ぶりに代表復帰したアドリアン・ラモス。飛び抜けたスプリント能力が母国の英雄ファウスティーノ・アスプリージャと比較される23歳の逸材ビクトル・イバルボ。
5日の親善試合で招集された彼らFW陣に加え、2列目にも中盤のポジションならどこでもこなせるフレディ・グアリン、ハメスの後継者として期待されるポルトの21歳、フアン・フェルナンド・キンテロらが攻撃のオプションとして控えている。これだけ豊富なアタッカーを擁するチームは他のワールドカップ出場国を見てもそう多くはない。問題はペケルマンが本番までに彼らの能力を最大限に引き出す組み合わせを見いだせるかどうか。いずれにせよ、コロンビアの攻撃陣が大きなポテンシャルを秘めていることは間違いない。
■センターバックの脆さは深刻な問題
豊富な攻撃陣とは対照的に、チームのアキレス腱となっているのが1月で38歳を迎えたマリオ・ジェペス、同35歳のルイス・ペレアがいまだに先発を張っているセンターバックだ。ジェペスのスピード不足は明らかで、ペレアは今も昔もあり得ないパスミスやあっさり裏を取られる守備の軽さを度々露呈している。
そんな2人を最後尾に残して攻撃参加を繰り返す両SBもまた対人守備に不安を抱えるため、ペケルマンは相手ボール時に2ー2ー4ー2や2ー4ー1ー3といった超前がかりな並びでハイプレスをかけさせている。引いて守っても守りきれる自信がないのなら、相手の攻撃が最終ラインに至る前に奪い返してしまえという発想だ。ボールポゼッションにこだわるのも同じで、彼らは保持し続けることで守備面の脆さを補っているのである。
■日本が採るべき攻略法とは
そんなアキレス腱を最終ラインに抱えるコロンビアに対し、有効と思われる攻略法は2つ。1つはボール奪取後に無理にショートパスをつなごうとしてプレスの網に引っかかるのを避け、前線にロングボールを入れてFWと両センターバックとの局面勝負に持ち込むこと。もう1つは両センターバック、特にペレアがボールを持ったタイミングを狙ってプレスをかけることだ。足下の技術に自信がないペレアはプレスを受けるとほぼ確実に意図のないロングボールを蹴り出すため、そのボールを回収することができればコロンビアのポゼッションを途切れさせることができる。
またセットプレーも大きな得点チャンスになるだろう。ペケルマンはニアに2人、ペナルティエリアのライン上に2人を置いた他はマンツーマンで守らせているが、ニアへの速いボールに飛び込まれると対応できない場合が多々見られるからだ。
コロンビアの守備を支えるのはポゼッションであり、相手にボールを支配され、押し込まれれば必ず最終ラインにボロが出る。一方、前線には単発のカウンターでゴールを奪えるストライカーが常に待機しているため、むやみにプレスをかけ続けるのも危険だ。
最終ラインからのビルドアップ時などピンポイントでプレスをかけ、それ以外は自陣で守備ブロックを作って裏のスペースをケアした上、ボールを奪ったら前線に素早くつないで両センターバックの裏を突く。さらにセットプレーのチャンスを上手くものにできることができれば、FIFAランキング5位の強豪を破ることは十分に可能なはずだ。
文=工藤 拓