第92回全国高校サッカー選手権大会の三回戦が3日に行われ、三重県代表の四日市中央工と神奈川県代表の桐光学園が対戦し、四日市中央工が1-0で勝利を収めた。
樋口士郎監督
「ちょっとびっくりするくらい選手たちがのびのびと戦ってくれた。16小林と17井出川の縦関係、14森島のボランチより少し前目のイメージ、そこの関係が非常によかった。
「(先制の場面で桐光学園は熱くなってしまったように思いますが)あのプレーだけじゃない。たぶん桐光学園は自分たちのゲームができると思ってきていた。だから思ったよりパフォーマンスが発揮できていないという感じがあったように思います。選手権というこの空気が選手を育ててくれるんですよ。1戦、1戦成長してくれます。2年前も1回戦と決勝ではまったく別のチームでした。この大会は2日目、3日目という連戦が勝負なんですよね。(1試合少ない)シード校の方がフィジカル的に絶対に有利ですから。でも今は多少フィジカル的に疲れていても払いのけてしまう空気感がありますね。
「(後半に守備的な指示というのは?)1点だけありましたね。前半もあったんですけど、うちがラインを上げたときに2列目から入ってくるのがちょっと怖かったで、『センターバックに自分のマークと2列目が入ってきたときに捕まえることを頭に入れておけよ』といいました。しっかりいいポジションを取って、ラインもきちっとコントロールできていたので、相手にとって本当にいい状態での1対1という場面はほとんどなかった。2年前も「3秒、シンプル、球際」というコンセプトがあったんですけど、奪われた後の3秒、今日もこれを徹底しようと。桐光学園も同じようにそこの囲い込みは早かったですから。相手を上回るくらい取られた後の早さを見せてくれたと思います。風は吹いてるなと思います。3年生が後ろで頑張って精神的に安定させて下級生がのびのび戦う。学年とか関係なく信頼関係を持ってみんなで戦っている。選手、スタッフ含めて、今自分がやるべき仕事がしっかりとできている。77年に準優勝したときと同じ空気感がある。
四日市中央工・4坂圭祐
「先輩からリベンジしてくれといわれていたし、そういう意味で気負ってしまっていた部分が正直あったんですけど、終わった瞬間は肩の力が抜けた。うれしいという気持ちしかなかったですね。
「(終盤の競り合いではスタンドから歓声もあがっていたが)最近あまりそういうのがなかったんですけど、去年とかは結構多くて。でも今年はあまりヘディングの調子がよくなくて、でも全国に来てから調子が上がってきていて、久しぶりに歓声を聞いたので気持ちよかったです」
「(対戦前に桐光学園に勝ち上がってきてほしいという気持ちはあった?)はい。同じ会場で同じ相手とやれるチャンスというのは滅多にないと思うので、チーム全体がマイナスなほうに捉えずにプラスに捉えていたので、それも勝利につながった要因だと思いますね。大会前は2年前の市船戦のビデオをもう一度見て、悔しい気持ちを思い出してました。それがモチベーションにもつながってます。先制点は正直、レフェリングの部分でラッキーなところがあって、オフサイドを取られてもおかしくなかった。そこが流されたというのは自分たちに運が向いていたのかなと」
「(1回戦では相手の圧力に1、2年生がビビってしまった部分があったと話していましたが、今日は桐光学園相手にもビビることはなかった?)自分たちの得点が1点だけだったというのもあって、緊張感がある中でゲームが進められたので、2、3点入るよりか、1点のほうが1年生にとってはよかったのかなと思います。
「(両サイドバックから質の高いセットプレーのボールが入ってたと思うが)試合を重ねるごとにタイミングが合ってきてるので、いつゴールになってもおかしくない感じになってきていると思います。カンナバーロ選手はそんなに大きくないと思うんですけど、ポジショニングで駆け引きをしている。キャプテンですし、あこがれますね」
四中工・17井出川純
「1点目はボールが来て動き出したんですけど、オフサイドポジションだというのがわかってスピードを緩めたら14森島が走ってきて2列目からの飛び出しということでよかったですね。14森島の触るなというのは聞こえていたし、自分でもラインを見てオフサイドポジションにいることはわかったので止まりました。自分は桐光学園がライバルだとは思っていないし、リベンジといわれるけど去年はベンチで見ていただけなので。向こうはプレミアリーグでやっているので、格上だと思っていた。強いなというのがあって、チャレンジャーの気持ちで勝てたらいいなというのがあった」
「(2回戦までより今日がいちばんのびのびプレーできていたように見えるけど)そうですね。相手が来るというのはわかっていて、本当にうまいDFばっかりだったんですけど、自分は体を張ればいいかなと思っていました。ボールをタメなくてはいけないところで、タメられたのでよかったと思います。今日は相手も強かったし、いちばん楽しかったですね」
「(14森島、16小林がリズムよくプレーできていると自分も生きる?)あいつらがボールを持って、相手を揺さぶってくれるので自分が生きるという部分があるので。本当にうまいやつらなので、僕は無駄走りでも多く走れればいい。監督から一人一人が駆け引きをしないと、相手は強いからお前ら通用しないぞといわれていたので、今日はみんなが駆け引きできていて、それで相手もプレッシャーがかかってミスをしたと思っているので、今日はチーム全体がいいプレーができたと思います」
四中工・14森島司
「(桐光学園の寄せの早さは食いついてくるから逆にやりやすかった?)ミーティングでも相手が食いついてくるので、ワンタッチのフリックとかを入れて、相手をあざ笑うという意識でやっていこうというのはありました」
「(そういう相手のほうがやりやすい?)そうですね。僕は食いついてくる方がリトリートされるよりもやりやすいですね。今までは結構ゲームを支配できていて、でも今日は苦戦すると思っていました」
「(2試合やったことで落ち着いてプレーできた?)1回戦の時は緊張してなにもできなかったので、2回戦から徐々に慣れてきました」
桐光学園・鈴木勝大監督
「立ち上がりもいい状態で入れたので、非常によかった。決定的なシーンがあって、それをうちが決めきれなかったところが力不足かなと思います。相手に流れが移った気まではしないですが、やっぱり決めるべきところで決めていればここまでゲームが難しくなることはなかったんじゃないかと思います。2トップに対して少しロングボールが多かった。向こうのセンターバックも高さがあってよかった。少しゲームの中での駆け引きとか、ペースをつかむところであったりだとかをしっかりとやっていけば、また違った結果になっていたのかなと思います」
「(本当はもうちょっと横幅を使いたかった?)そうですね。横幅を使ってもう少し緩急をつけて攻撃をして行けば四中工のウイークポイントを突けたのかなと思います」
「(失点シーンについて)まあ、子供たちは一生懸命やってますからね。大人の力でゲームが決まってしまうようなことは非常に残念ですね。ただ、これはピッチの中に限らず、子供たちが社会に出てもこういった理不尽なことはあるかもしれないと、正直に伝えました。(ハーフタイムの指示)こんなゲームのイニシアチブの取られ方というのは非常に不愉快だったので、とにかく絶対に追いついて逆転しようと、そこに対しては強く意思表示しました。選手たちは命がけでやってますからね。それなりの終わり方があるかなと思う中では、いちばん残念な終わり方かなと。気の毒だと。選手たちは本当によくやった。僕の力不足と、大人の力かなと思います」
桐光学園・9植木隆之輔
「微妙なプレーが得点につながってしまって悔しいですね。点が取れなかったので今日は全然ダメでした」
桐光学園・4宮野剛
「自分たちはオフサイドをかけにいって、副審もフラッグを上げたのでオフサイドだろうと思って。そこで上がってなければ普段は走るんですけど、上がったので確実かなと思って。そこで足を止めてしまったのが自分たちのミスかなと。でも悔しい気持ちが強いですね。(昨年8月に亡くなった大西健太と)一緒に国立に行くと約束していたので、それがいちばんの悔いというか。監督は、天国の大西は『よくやった』といってるはずだと話してくれたんですが、約束を果たせなかったので悔しい気持ちでいっぱいです。失点直後は動揺しました。でも隣の5中島や14杉本とDFラインから声を掛け合って、なんとか立て直して後半やろうと話していました」