浜松開誠館高校のDF松原后
本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。
文=安藤隆人
サッカー王国と言わる静岡県。このサッカーどころに、初の全国大会出場を目指すチームがある。浜松開誠館高校だ。
全国大会出場は一度もないが、元Jリーガーの青嶋文明監督が指揮を執り、これまで竹内涼(清水)、木下高彰(磐田)を輩出。静岡県では知る人ぞ知る高校だが、なかなか中部勢の壁を破れていない。静岡県と言えば、清水桜が丘(旧・清水商)、静岡学園、清水東、藤枝東、藤枝明誠、常葉学園橘など強豪がひしめき合っており、浜松開誠館はそれらの壁の前に涙を飲んでいる。
『今年こそ』
この思いを人一倍抱えているのが、キャプテンに就任したDF松原后だ。左足のキックに優れ、攻撃だけでなく守備でも力を発揮できる選手だ。昨年はU-17日本代表候補に選ばれたが、U-17W杯出場は叶わなかった。空中戦に強く、左利きであることと、CB、FW、サイドバック、サイドハーフもこなせるユーティリティー性もあり、現在プロのスカウトから注目を浴びている。
叔父はかつてアトランタ五輪で、ブラジル代表を撃破した『マイアミの奇跡』の一員である元Jリーガーの松原良香氏(現・暁星国際学園アストラインターナショナルコース・ジェネラルマネージャーなど)。
松原は、チーム初の全国大会出場を達成するため、インターハイ予選に向けて、モチベーションを高めている。
「全国に出るためにこの高校にやってきた。気づいたらもう3年生だし、絶対にこのチームを全国に連れて行きたい」
今季の浜松開誠館は新人戦を制し、プリンスリーグ東海では第5節を終了して3位と、いいスタートを切っている。しかし、昨年も好調で迎えたインターハイ予選では、準決勝で静岡学園にPK負け。選手権予選では早々に敗れてしまった。
「昨年は『まさか』と思う試合が多かった。でも『まさか』と思っている時点でダメだった。負けた試合は立ち上がりからフワフワしていたし、焦って後手に回ってしまった。今年はそうならないように、自分がもっと冷静に、高い意識を持ってやっていきたい」
目標はプロになること。しかし、その前にチームを全国に連れて行くという『責務』を果たすことに必死だ。
今年こそ全国へ! まずはインターハイ出場に全力を尽くす。