前橋育英FW坂元達裕を囲むMF平岡巧己(右から2人目)ら大津メンバー [写真]=川端暁彦
平成26年度全国高等学校総合体育大会サッカー(男子)の準決勝が7日に行われ、大津(熊本)と前橋育英(群馬)が対戦した。
「日本で一番、二番の『勝負弱い高校』対決になったね」
前橋育英高校との準決勝を前に大津高校の平岡和徳監督はそんな自虐的な言葉を漏らしていた。そして、この言葉には伏線がある。平岡監督がまるで同じことを話していたのは、今から5年前の夏のこと。現・川崎フロンターレ所属の谷口彰悟ら豪華なタレントを擁していた大津は、同じインターハイ準決勝で前橋育英と対決した。共に多くのJリーガーや日本代表選手を輩出し、毎年のように「全国制覇を狙える」と言われながら頂点と縁のなかったチーム同士の対戦は、前橋育英に軍配が上がった。群馬のタイガー軍団はそのまま大会の頂点を極め、初の全国制覇を達成。「勝負弱い」という汚名を返上してみせた。
あれから5年。今度は大津がその不名誉な称号を返上するとき。「平岡先生もずっと悔しい思いをしてきたと思う」(MF葛谷将平)。選手たちの気持ちも定まっていたこの試合、大津は立ち上がりからロングボールを前橋育英サイドバックの裏へと積極的に蹴り込んでいく。ポゼッションで高い位置を取りたがる相手をけん制しつつ、あわよくばそこから1点を狙う構えだ。攻撃の起点となるMF鈴木徳真も厳重に監視し、わずかのスキを作らぬ構えを見せた。
3分には左サイドの崩しから早くも大津に決定機。MF古庄壱成のシュートはGKに阻まれるも、これでリズムはつかんだ。12分にはロングフィードからMF坂元大希が抜け出す絶好機も、このシュートは枠外へとそれていく。前橋育英も両サイドハーフの突破などから何度かゴール前に迫る。後半開始早々の38分には、MF渡邊凌磨がゴール前で決定的なチャンスを迎えたが、ここは勇敢に飛び出した大津GK井野太貴がビッグセーブ。得点を許さなかった。
そして迎えた45分だった。前橋育英守備陣の対応が乱れたスキをついた飛び出した坂元が値千金の先制点を叩き込む。この1点を守り切れるか否か。まさに「勝負強さ」を問われる展開になる中で大津イレブンは乱れなかった。虎視眈々とカウンターを狙いつつ、リスクは避けて試合を運んでいく。ポゼッション率では前橋育英が上回る展開となったが、チャンスらしいチャンスはほとんど作らせず。勝負強さを見せた大津が前橋育英を下し、ファイナルへと駒を進めた。
大津は8日に決勝に臨む。対戦相手は、青森山田を倒して勝ち上がった東福岡(福岡)。2014年のインターハイ、暑い夏の決戦は九州対決となった。
(取材・文=川端暁彦)