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サッカー、ラグビー、バレー…東福岡高校はなぜ強い? 目指すは今年度“7冠”

2015.01.08

2014年夏のインターハイを制した際の東福岡サッカー部 [写真]=川端暁彦

 東福岡高校が3冠ならぬ“7冠”を視野に入れている。もちろん、サッカー1種目の話ではない。

 東福岡のサッカー部は2014年夏の高校総体を制した強豪。今大会も優勝候補の筆頭と目されていた。3回戦で静岡学園に敗れたこそしたが、全国的な強豪であることに間違いはない。今季は中島賢星、増山朝陽とJ1クラブ入りする逸材を擁し、ユース世代のトップリーグである高円宮杯U-18プレミアリーグでも4年連続の残留を決めている。

 サッカーの強豪校は、他のスポーツでも結果を出している例が多い。現在行われている高校サッカー選手権の4強を見れば、例えば前橋育英は2013年夏の甲子園チャンピオン。鈴木徳真、渡邊凌磨といった前橋育英高サッカー部の3年生なら、同級生にドラフト1位指名を受けて西武入りする右腕・高橋光成がいる。

 そんな中でも東福岡の凄さは一段上。今季は既にサッカー1冠、ラグビー3冠、バレー2冠の計6冠が確定している。春高バレーの結果次第では球技3種目が合計“7冠”だ。

 ラグビー部は春の選抜大会、夏のセブンスを制し、冬の全国高校ラグビー選手権(通称花園)も圧倒的な強さで優勝。1月7日の決勝戦では御所実業を57-5と圧倒し、ファイナルとしては史上最大の点差をつけた。戦力も高校日本代表候補を1チームから12名出すという圧倒的なモノ。過去10年で6度目の決勝進出、5度目の優勝である。

 バレーボール部も今季は夏の高校総体、秋の長崎国体で二冠を達成している。現在開催中の全日本バレーボール高校選手権(通称春高バレー)もベスト4に残っており、10日に準決勝を控えている。金子聖輝(2年)は188センチの長身と跳躍力、空中姿勢の安定を兼ね備えたウイングスパイカー。日本バレーボール協会が社会人から高校生までの大器をピックアップした“コアメンバー”10選手に名を連ねている。

 強さの背景は何より“土地柄”だろう。世間の常識が正しければ、何かの特別に競技が強ければ、他競技は割を食うはずだ。例えばサッカーが盛んなら、野球には有望なアスリートが流れなくなる…。そういう因果関係があっても不思議はない。

 しかし福岡はすべてが強い。野球も大阪府に次ぐ2番目の人数(48名/2014年度)をプロに輩出しており、これは人口の多い東京や神奈川より多い数だ(※人数比で最多は沖縄県)。県内の有望中学生が各地各校に分散する傾向があり、長らく甲子園優勝校は出ていない。しかし14年夏の甲子園を制した大阪桐蔭高は、中村誠主将を筆頭に、レギュラー9名のうち4名が福岡県出身者だった。

 サッカーも決して東福岡“だけ”ではない。当然アビスパ福岡のユースがあるし、永井謙佑を輩出した九州国際大附属、久保竜彦の母校・筑陽学園といった強豪も忘れてはならない。

 スポーツが盛んな土地柄を証明する一つの材料が、中学時代の成績だ。バレーボールを見れば、福岡県選抜は2012年冬に行われた第26回全国都道府県対抗中学大会(JOCカップ)を金子の活躍で制している。ラグビーも年末に行われる全国ジュニア選手権を、今年度は福岡県スクール選抜が制している。つまり高校に入る時点ですでに福岡県勢は強い。

 バスケはバレーと長身選手を奪い合う“競合関係”にある種目だが、福岡県はバスケットボールも盛んだ。例えば今季は福岡大大濠高(男子)が夏の総体で優勝、12月のウィンターカップも準優勝を果たしている。福岡県の少年少女が遺伝子的に特別優れているということは流石にないだろう。要はスポーツを尊び、戦いを好む文化が土地に根付いているということだ。

 そんな福岡県のトップ選手が、いくつかの種目ではこの学校に結集している。東福岡は1学年約20クラスという規模を誇る私立の男子校。1学年に800人前後という“規模のメリット”がある。大学のキャンパスのような建物群が市街地に林立しており、運動施設は特に抜群だ。サッカー部とラグビー部は、それぞれ夜間照明付きの人工芝グラウンドを持っている。芝の質、ピッチのサイズとも公式戦開催が許される規格だ。

 加えて見逃せないのが交通の便である。東福岡高の校舎は、地下鉄・東比恵駅から徒歩5分。博多駅からも徒歩15分という抜群のアクセスを誇る。少し時間はかかるが北九州市、熊本県北部からも通学は可能だ。成立学園や実践学園のように1時間近く掛けて練習施設まで移動する首都圏の強豪もある中、東福岡は校舎のすぐ隣にピッチがある。

 学校内のノリも抜群で、運動部同士で励まし合う校風があるという。東福岡の生徒にとって毎年9月の学園祭は多くの模擬店が出て、県内の女子高生も集まる一大イベント。例年これに合わせてサッカー、ラグビーの試合が行われる。サッカー部は国見など強豪校を呼んで招待試合を行っていたが、今は高円宮杯U-18プレミアリーグの公式戦が学園祭の一環として開催されている。附属中も加えた全校生徒に、近隣の女子高生が加わってピッチサイドで千人単位が体育座り。その雰囲気は推して知るべしで、相手サポーターからは“究極のアウェー”として恐れられている。

 この土地柄、学校の規模と施設があるからこそ、指導者や選手の努力も実っているのだろう。それと同時にサッカーが強いからラグビーも強くなる。ラグビーが強いからバレーも強くなるという“相乗効果”もあるのではないだろうか。同級生が結果を出せば、それに負けまいという気持ちが自然と湧いてくる。全国制覇が当たり前という環境にいれば、自然と“勝者のメンタリティ”は身に付く。そんな環境が、各種目で東福岡の強さを支えている。

文=大島和人

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