三浦の活躍もあり、PK戦を制した桐蔭横浜大が優勝を果たした [写真]=梅月智史
歓喜の輪の中心にいたのは、桐蔭横浜大学GK三浦和真だった。「チームメートが寄ってきた時は本当に嬉しかったし、いろいろ感慨深いものがあったので、ちょっとうるっときた」
3日に行われた「アミノバイタル」カップ2016第5回関東大学サッカートーナメント大会(兼総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント関東予選)決勝戦、桐蔭横浜大は1-1の同点で突入したPK戦を6-5で制し、早稲田大学を撃破。創部19年目にして、伝統校を破っての初優勝という快挙を成し遂げた。
「前の試合を戦ったメンバーのためにも、勝たなければいけないと思った」。桐蔭横浜大の選手たちは口をそろえた。9日間で5試合をこなす超過密スケジュールが組まれた今大会。桐蔭横浜大はターンオーバーを採用して乗りきった。それは、選手のコンディションを保つだけでなく、チームの団結力、そして桐蔭横浜大に欠けていた「勝利に対する貪欲さ」を生み出す要因となった。
GKは1回戦から三浦と田中雄大が交互に起用されていたため、順番どおりであれば決勝は三浦の出番。チームスタッフの間では、準決勝に出場した田中雄の方がリーグ戦で正GKを務めるなど経験値が高いことから、決勝での起用を推す声もあった。だが、八城修監督は三浦を選んだ。「和真は雄大に遜色ないくらい、日々の練習からしっかりやっている。決勝という大きな舞台を、ぜひ彼に経験してほしいと思った」
GKというたった一つのポジションを同学年の田中雄と争う中で、これまで何度も悔しい想いを味わってきたはずだ。それでも、試合に出られない時は荷物運びなど、常にチームのことを考えた行動を貫いてきた三浦。決勝という大舞台で出番を手にしても、彼の口からはライバルを敬う言葉が次々とあふれた。
「雄大がいるからこそ、日頃から質の高い練習ができている。雄大は声でチームを鼓舞できるし、1本のビッグセーブで流れを変えることができる。本当に気さくな人で、いつもチームに良い影響を与えてくれている。雄大がつないでくれたおかげで、決勝という素晴らしい舞台に立てたので、今日は自分が結果を出さなきゃと思った」。ライバルの想いも背負ってゴールマウスに立った三浦は、安定したプレーで延長戦も含めた110分間を最少失点に抑えた。
PK戦では味方のキックの際、ゴールに背を向けた。「相手のGKがどう飛ぶか見るといろいろ考えてしまうので。あとは、仲間が決めてくれるだろうと信じているから。自分はしっかり準備をしようと思った」(三浦)
先攻の桐蔭横浜大が2人目で失敗するも、相手の2人目のキックを三浦がセーブ。そして、決着は8人目。相手のシュートがポストを直撃した瞬間、桐蔭横浜大の勝利が決まった。「ここまで頑張ってきた浅川(隼人)と八戸(雄太)がPKを失敗してしまったので、あいつらのためにも僕が1本止めようと思ったら、ドンピシャでボールが来た」。仲間を信じる気持ち、チームメートを思いやる心が、勝利の運をたぐり寄せたのかもしれない。
8月に行われる総理大臣杯に向けて、ここから再び激しいポジション争いが繰り広げられる。「雄大には雄大の、僕には僕の良いところがある。雄大にはないものを伸ばしていきたい」。関東王者の座に輝き、一躍ヒーローとなっても謙虚な姿勢を崩さない三浦。次は全国舞台でピッチに立つことを目指して、最大のライバルと切磋琢磨しながら、さらなる成長を遂げる。
文=平柳麻衣
By 平柳麻衣