大会通算3度目の優勝を果たしたバルセロナ [写真]=本田好伸
8月28日、『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2016』の大会最終日が行われ、バルセロナが決勝で大宮アルディージャジュニアを1-0で破り、2年ぶり3回目の優勝を飾った。
最終日は、舞台をヴェルディグラウンドから味の素フィールド西が丘に移して、準決勝、3位決定戦、決勝が行われた。
準決勝第1試合は、バルセロナと東京ヴェルディジュニアが対戦。前半は、試合を重ねるごとに連係を深めてきた東京Vがペースをつかむと、人とボールが動きながら中盤のスペースを支配し、バルセロナの攻撃を封じていた。
しかし19分、12番のマルク・フラードが右サイドを突破してミドルシュートを突き刺し、バルセロナがワンチャンスを確実にゴールへつなげて先制した。すると後半は一転、「前半はミスもあったがハーフタイムで修正できた」(セルジ・ミラ監督)と、ギアを上げてきたバルセロナが試合を掌握し、多彩な攻撃から3点を加えて4-0で勝利。先発11人全員が交替しながらプレーの質を高めていくなど、優れたゲームマネージメントを披露したバルセロナが、前回大会でPK戦の末に敗れた準決勝を突破した。
続く準決勝第2試合は、川崎フロンターレU-12と大宮アルディージャジュニアが対戦。前半から中盤の制し合いとなった試合は、両者ともになかなかゴール前での決定機を作れないまま、互いに譲らずにスコアレスでタイムアップ。今大会で4試合目となるPK戦での決着となった。川崎の先攻で始まり、両者1人ずつが決めて迎えた川崎の2人目、ここまでチームの司令塔として存在感を示してきた30番の山田新己のシュートを、アルディージャのGK石井波友がストップ。そのまま大宮は残り2人ともに決めてPKスコア2-3で大宮が初の決勝進出を果たした。
バルセロナと大宮の決勝は、互いに攻守の特徴が際立つゲームとなった。前半から主導権を握ったのはバルセロナだったが、大宮も組織的なDFで相手の自由を許さず、数的有利な状況を作らせない。後半に入ってもバルセロナが攻め込みながらも拮抗していたが、残り15分を切り、「選手にもっと個人対個人の対決を体感させたかった」(森田浩史監督)と、大宮がマンツーマンのDFにシフトし、リスクを高めた戦いを選択したことでバランスが崩れていく。
迎えた44分、左サイドの15番、アレックス・バジェからのパスを中央の18番、ニコラス・フエンテスがスルーすると、ボールはフリーで抜け出した9番のチャビエル・プラナスの足元へ渡り、これを左足で冷静にゴールへと結び付けてバルセロナが先制。最後まで1点を争う好ゲームとなったが、そのままバルセロナが逃げ切った。
なお川崎と東京Vが対戦した3位決定戦は、中盤で厚みのある戦いを見せた東京Vが試合をリード。そして後半から出場した女子プレーヤー、14番の大山愛笑が1ゴール1アシストと全得点に絡む活躍を見せ、2-0で勝利を収めた。
また、順位決定戦の2試合で4得点をマークしたガンバ大阪ジュニアの9番・南野遥海が通算7得点で得点王に輝き、チームは10位に終わったが、個人として大会にその名を刻んだ。
世界最高レベルの育成組織と評されるスペインからの刺客が、優勝候補大本命の予想に違わぬスキルを見せ付けて3回目の優勝を飾った今大会。MVPには6番のアドリア・カプデビラが選ばれたが、そのことがまさに“今年のバルサの強さ”を物語っていた。
今大会に参加したチームは、圧倒的な強さを誇った第1回大会のチーム以上のレベルにあるとされていたが、ずば抜けたスター選手はいなかった。全員が高い技術を誇り、誰か特定の選手に偏るわけではなく、チーム戦術の中で個人の特徴を発揮していく戦い方で勝ち上がった。そうしたスタイルのカギを握っていた選手の一人が、アドリア・カプデビラ。「シャビやセルヒオ・ブスケツのような選手を目指している」という言葉通り、攻守のつなぎ役であり、攻撃を円滑にするためになくてはならない存在として才気を振るった。まさに、“組織と個の融合”を高次元で体現するバルセロナを象徴する選手だった。
■『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ 2016』最終日結果
●準決勝
バルセロナ 4-0 東京ヴェルディジュニア
川崎フロンターレU-12 0-0(PK2-3) 大宮アルディージャジュニア
●3位決定戦
東京ヴェルディジュニア 2-0 川崎フロンターレU-12
●決勝
バルセロナ 1-0 大宮アルディージャジュニア
取材・文=本田好伸
By 本田好伸