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「強いシュートが入る」定説を幻想に変えた同志社大にみる、決定力の高め方

2016.04.14

開幕戦で白星を手にした同志社大 [写真]=小澤一郎

 理論の有効性が証明される勝利だった。9日に開幕した関西学生サッカーリーグ(前期)1部リーグの開幕戦で1部昇格組の同志社大学が昨季準優勝の強豪・阪南大学を2-0で破る金星をあげた。

 この試合を「単なる大学サッカーでの番狂わせ」で終わらせたくない理由は、同志社大が1年以上をかけてコツコツと「ゴールを奪う」、「試合に勝つ」ための理論を方法論に昇華させてきたからであり、戦前の予想では「格上」と見られていた阪南大相手にロジカルなゴールと勝利を奪ったからである。

 ゴールは49分と92分に生まれているが、得点者である同志社大のMF鶴崎光(4年/神戸U-18出身)、岡村悠矢(4年/暁星高出身)にとってはいずれのシュートもこの試合におけるファーストシュートだった。2部落ちとなった昨シーズンからテクニカルディレクターとしてチームにサッカーやシュートの理論を落とし込んでいる同大OBで元Jリーガーの中西哲生氏は、普段の練習から選手たちに「シュート練習で大事なのは試合のシチュエーションに近い最初と最後のシュートを決めること」を課してきた。

試合を見守る中西哲生氏 [写真]=小澤一郎

試合を見守る中西哲生氏 [写真]=小澤一郎

 中西氏が「決定力が求められるゴール」と定義する先制点を叩き出した鶴崎は、左サイドハーフとしてドリブル突破が特徴の選手だったが、中西氏のシュート理論に出会ったことで急激に決定力を高めているプロ注目のアタッカーだ。49分のゴールは、PA外から左足のインカーブでファーサイドのサイドネットに巻いて落としたシュートだったが本人は試合後にこう振り返る。

「あの角度と場所から打つ時には、哲さん(中西氏)からインカーブで巻いて落とせばGKの頭を超えると言われていますし、それを意識して自主練からやっているのでホンマに狙い通りのシュートでした」

 未だサッカー界では日本のみならず世界でも「強いシュートが入る」という定説が浸透しているが、同志社大ではその定説を「幻想」と認識した上でシュートを打つ際のボールからゴールの四隅の角に直線を引いた四角錐の外から巻く(インカーブとアウトカーブ)、落とす(ループ)3種類のシュート、つまり四角錐の体積を増やすシュートの習得に注力している。

 アディショナルタイムに交代で入った岡村がカウンター攻撃から放った見事なボレーシュートによる追加点についても彼自身が「あれよりも早いタイミングで打っていれば絶対に枠の上にふかしていたと思います。哲生さんからボレーシュートは半テンポ待てとずっと言われていたので、実際に半テンポ我慢していい落ち際で打てたので良かったです」とシュートが決まった理由をロジカルに説明している。

 岡村のシュートは「GKの動きを加味した上でGKに読まれにくいシュートをどう打つか」という中西氏のシュート指導における第2段階を忠実にクリアしたものだ。阪南大戦での2点は共に“ゴラッソ”(スーパーゴール)だったが、得点者のコメントやその文脈に隠された理論をきちんと読み取れば偶然性に任せたまぐれ当たりのシュートではないことが一目瞭然だ。

 開幕戦の1試合ではあったが、阪南大戦でのロジカルな勝利とここ最近の同志社大の取り組みからは、シュートの再現性と決定力を高めるための理論をきちんとシュートの方法論につなげることで最終的には「勝利の確率を引き上げることができる」という勝利の方程式までもがうっすらと見え始めている。

文=小澤一郎

By 小澤一郎

スペイン在住歴5年。ラ・リーガに精通するサッカージャーナリスト。『サッカーキング』の動画出演以外にも、U-NEXTでのラ・リーガ中継の解説、NHKをはじめとしたJリーグの試合解説なども行う。これまでに20冊近くの著書を発売。自身でのYouTubeチャンネル『Periodista』も手掛ける。

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