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「僕たちはエリートではない」…桐蔭横浜大、ポジティブに戦い続けた末につかんだ自力残留

2016.11.07

ゴールを喜ぶ鈴木国友(11番) [写真]=平柳麻衣

 大逆転での全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)出場を視野に捉えた。桐蔭横浜大学は5日、JR東日本カップ2016第90回関東大学サッカーリーグ戦後期リーグ第21節で早稲田大学と対戦。勝ち点「2」差で降格圏内の11位に沈む早稲田大に対し、3-2で逆転勝利を収めた。同節で最下位の国士舘大学が引き分けに終わったため、自力での残留が確定。また、最終節に勝利すれば、他会場の結果次第ではインカレ出場権を手にする可能性を残した。

 2点のビハインドにも慌てなかった。今節で負ければ降格が決まる早稲田大は、立ち上がりからエンジン全開で挑んできた。FW鈴木国友が「いつも通りにやろうとしたけど、やっぱり相手はこの試合にかける思いが強かったので、若干飲まれてしまった」と振り返ったように、勢いに押された桐蔭横浜大は前半のうちに2失点を喫してしまう。敗れれば一転、早稲田大に勝ち点で上回られ、降格圏に落ちてしまう中でのリーグ戦4試合ぶりの失点だったが、桐蔭横浜大の選手たちは動じなかった。GK田中雄大はこう振り返る。

「僕たちはずっと連勝してきた“エリート”ではない。今までも何度もミスや失点をしてきたので、ネガティブになることはなかったです。2点差はサッカーで一番危ないし、監督も『大丈夫』と言っていたので、前向きに後半に臨めたと思います。それに、早稲田が前半から全力できていて、90分持つとは思えなかった。後半はこっちが追い風だったので、チャンスは絶対に来ると思った」

 後半開始直後に杉山雄太のゴールで1点差に追い上げると、「あの点で早稲田が結構ガクっと落ちた」(田中雄)と、桐蔭横浜大が完全にペースを握る。58分には主将の今関耕平、68分には鈴木がゴールを決めて逆転に成功。「3試合取れていなかったので、やっと取れて本当に良かった」というエースの会心のゴールが決勝点となり、3-2で残留争いのライバルを下した。

 ポジティブに戦い続けた末につかんだ一勝だった。リーグ戦は昨季まで3年連続で9位に終わっている桐蔭横浜大。前期リーグを6位で折り返した今季は、「アミノバイタル」カップ初優勝、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントでベスト4と躍進を果たした勢いのまま、後期リーグでの上位進出を目標としていた。ところがフタを開けてみると、後期リーグは開幕6試合で2分け4敗。気づけば降格圏の足音が近づいていた。それでもチーム全体として落ち込むことなく、前向きな心理状態でリーグ戦を戦うことができていた。田中雄は言う。

「傍から見れば今年も残留争いをしているチームだったけど、その状況でも自分たちは『インカレ出場』を目指してやってきた。今日も『残留が決まるかもしれない』という受け身の姿勢ではなく、インカレを目指すチャレンジャーとして挑んだ。内容はどうであれ結果に結びついて良かった」

 また、毎年のように繰り返してきた残留争いの経験も生きた。「勝てなかった試合から学んで、吸収して、改善して、得るものがあった。そういう経験が多い4年、3年生を中心にいろいろなことにチャンレンジして答えを導き出した結果が、最近の試合の粘り強さや集中力につながっている」(田中雄)

 トーナメント戦で桐蔭横浜大史上最高の成績を残している今季のチームでの活動期間を、少しでも長く伸ばせるか。12日に行われる最終節では、8位慶應義塾大学と相見える。インカレ出場権が与えられる6位、インカレプレーオフに出場する7位のチームとの勝ち点差は「3」。6~9位のチームの結果次第では、次節勝利すればインカレ出場への望みをつなぐことができる。

「他力だけど、勝てばインカレに出るチャンスがある。もしダメだったら4年生との最後の公式戦になるし、今季はすごく良いチームなので、勝って笑顔で終わりたい」と鈴木。最後の最後まで上だけを見つめて取り組んだ先に、望んだ結果が待っているはずだ。

文=平柳麻衣

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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