2012.07.20

【第7回】関係者が語るウニベルシダ・デ・チリの強さと魅力

文=池田敏明
写真=市川陽介、ウニベルシダ・デ・チリ

「ウニベルシダ・デ・チリはサポーターの数が多く、非常に有名で人気のあるクラブです。近年は多くの成功も収めていますしね」
 
 チリのサッカー専門チャンネル『CDF』のコケ・ゴンサレス記者は、ウニベルシダ・デ・チリというクラブについてシンプルにそう説明してくれた。チリのサッカー界ではもともと、ウニベルシダ・デ・チリのライバルであるコロコロが“盟主”としての地位を築いていた。しかし最近、両者の立場は逆転している。

 ラジオ局『ラディオ・アグリクルトゥーラ』のアンドレス・フェルナンデス記者によると、「以前はコロコロのほうがサポーターの数が多かったが、今はほとんど同じぐらいの数」だという。南米の人々は自分が生まれ育った地元のクラブを応援するのが一般的だが、国際タイトルを獲得したり、ビッグクラブから勝利を挙げたりとインパクトのある結果を残したクラブは全国的な人気を獲得することが多い。2011年にウニベルシダ・デ・チリが達成した国内リーグ前期、後期完全制覇、コパ・ブリヂストン・スダメリカーナ優勝は、その人気を爆発させるのに十分な成績だった。

 もちろん、物心ついた時からウニベルシダ・デ・チリを応援している熱狂的ファンも多数存在する。今回の取材ではサンティアゴ市の様々な人に話を聞いたが、声をかけた人の大半はウニベルシダ・デ・チリのファンだと回答。ユニフォーム姿で街を闊歩する老若男女の姿もよく見かけた。

 チリ大学の学生であるアリエル君は、「子供の頃からスタジアムに通い詰めている」という熱狂的なサポーターで、現在はソシオのメンバーにもなっている。「スペクタクル溢れるサッカーを見せてくれるので、スタジアムに行くのが楽しみ。週末ごとにゴール裏に陣取り、声援を送るのが僕の人生の一部です」と言うほどだから、彼にとってこのクラブは絶対的な存在なのだろう。

 サンティアゴ中央市場の鮮魚店で働くカルロスさんは「俺にとって一番大事なのはこの仕事だ。仕事をしなきゃ金を稼げないし、金がなかったらウニベルシダ・デ・チリの試合も見に行けないからな」と、独特の言い回しでチームへの愛情を表現した。彼らにとって、人生の中心にあるのはいつも愛するクラブ、ウニベルシダ・デ・チリなのだ。
 
 では、彼らを惹きつけてやまないチームの魅力、強さの秘訣はどこにあるのだろうか。18歳でトップチームに昇格し、レギュラーとして活躍するFWアンジェロ・エンリケスは「グループとしてまとまっていて、ホルヘ・サンパオリ監督の理念が十分に浸透していること」を挙げる。「全員がハードワークを行い、高いポゼッションで攻撃を仕掛ける一方で、高い守備意識も保ち続ける。それがどんな試合でも勝利を収められる理由だと思う」と続けており、選手たちの絶え間ない努力が爆発的な強さに繋がっていることを実感しているようだ。

 守護神ジョニー・エレーラは、コパ・ブリヂストン・スダメリカーナを制した要因について次のように語っている。

「チームの全員が団結し、一つひとつのプレーに全力を尽くした結果、クラブ史、そしてチリサッカー史に残るタイトルを獲得することができた」

 傑出したタレントがいるわけでなく、派手なプレーを見せることに重きを置いているわけではない。全員が100パーセントの力を発揮し、勝利を目指してひたすらハードワークに励む。それがウニベルシダ・デ・チリ特有の圧倒的な攻撃サッカーを生み出し、ファンの熱狂を誘っているのだ。

【動画編】関係者が語るウニベルシダ・デ・チリの強さと魅力 

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