2012.07.30

【第10回】鹿島対南米王者、決戦迫る「立ち上がりの15分が鍵」

文=池田敏明
写真=野口岳彦、ウニベルシダ・デ・チリ

 2011年は国内前、後期リーグを制し、コパ・ブリヂストン・スダメリカーナ2011で南米王座に君臨したウニベルシダ・デ・チリ。2012年の国内前期リーグでは第6節から破竹の9連勝を飾るなど圧倒的強さを見せ続けており、その勢いは全く衰えていない。

 国内リーグでは首位でレギュラーシーズンを終えると、8チームによるプレーオフでは準々決勝でコブレロアを危なげなく下し、準決勝で宿敵コロコロとの死闘を制してファイナル進出を果たす。決勝のオイギンス戦は2戦合計3−3というタイスコアのままPK戦に突入したが、守護神エレーラが3本をブロックする大活躍を見せて3季連続、通算16回目の国内タイトルを手にしている。

 一方、コパ・リベルタドーレスでは首位でグループステージを突破し、決勝トーナメントでも1回戦でデポルティーボ・キト(エクアドル)に大逆転勝利を飾るなど快進撃を披露。準決勝でボカ・ジュニオルス(アルゼンチン)に屈したが、南米屈指の強豪と互角に渡り合って見せた。

 国内タイトルを一つ増やし、王者の貫録を増して来日するウニベルシダ・デ・チリ。鹿島アントラーズとのスルガ銀行チャンピオンシップ2012 IBARAKIはどんな試合になるのだろうか。実際にチリを訪問し、突撃取材を敢行した名良橋晃さんは「お互いの特長である攻撃力を生かした展開になると思います」と予想する。

「主導権はウニベルシダ・デ・チリが握るでしょう。チャルレス・アランギスやグスタボ・ロレンゼッティといった中盤の選手は攻撃だけでなく守備能力も高いので、鹿島のボールの出所である小笠原満男や柴崎岳に激しいプレスを掛けてくると思われます。鹿島としてはそれを切り抜けてサイドに展開し、相手のサイドバックを押し込みたいですね。マティアス・ロドリゲスやエウジェニオ・メナといったサイドバックはかなり攻撃的で手を焼くと思いますが、サイドの攻防を制することができればチャンスが増えるはずです」

 また、名良橋さんは「立ち上がりの15分間が勝負」と分析する。

「初対決なので、ウニベルシダ・デ・チリにとっても相手がどんなチームか分からない部分はある。そこで鹿島には最初の15分間、とにかく前からプレッシャーを掛けて、攻撃的にいってほしい。そこで先制できれば面白い展開になるでしょう。相手も勢いよく前に出てくることが予想されるので、裏のスペースが空くことで遠藤康やドゥトラの仕掛けがより生きるのではないかと思います。ここはジョルジーニョ監督の采配に注目ですね」

 名前の挙がった遠藤は、記者会見で「相手に合わせるのではなく、自分たちのプレーをしたい」と意気込みを語った。鹿島らしさを見失わずにプレーできれば、南米王者から勝利を収めることも可能になるはずだ。

 チリ取材最終日、サンティアゴ市街を散策する名良橋さんに一人のチリ人男性が話しかけてきた。「あなた、スルガ銀行チャンピオンシップの取材で来た元日本代表だろ? 俺はウニベルシダ・デ・チリのサポーターだ」。見ればユニフォームを身にまとい、帽子には「JAPAN 2012」の文字。「仲間たちと一緒に日本に行くんだ。もうエアーチケットも取った」。

 チリから日本へは地球を約半周、ルートによっては30時間以上を要するが、今回の試合では彼のような熱狂的サポーターが数多く日本に押し寄せるだろう。ピッチ上はもちろんだが、スタンドの熱気でも絶対に負けるわけにはいかない。雌雄を決する大一番はまもなく。スルガ銀行チャンピオンシップ2012 IBARAKIから目が離せない。

【動画】鹿島対南米王者、決戦迫る「立ち上がりの15分が鍵」