[サムライサッカーキング5月号 掲載]
《The perfect vision》。どんなに海外組が躍動しようが、日本の手綱を握るのはこの男。ピッチのすべてを見透すその目には、何が映っているのか?
インタビュー・文=岩本義弘
写真=伊藤信
「バックパスや横パスにも意味がある」
──自分自身のプレーヤーとしての良さやオリジナリティーはどこにあると考えていますか?
遠藤 自分の感覚的なものなので、説明しづらいですね。他の選手に指示を出しても、感覚が違うので上手く伝わらないこともあるくらいですから。あえて言葉にするならば、ゲームを読む力、パスの精度、といったところですかね。そこでは負けたくないという思いはずっと持ってやってきました。
──「次のプレーを読む」ということは、ある程度は共通理解として通じると思うんですが、「ゲームを読む」というのは、感覚的にはどういう感じなんですか?
遠藤 分かりやすく言えば、「一つ先の未来を自分で動かす」ということです。それを更に繰り返してやっていくと、一つ前、一つ先の未来が、今度は二つ先の未来を動かせるようになる。
──つまり、自分自身があるプレーを選択することによって、一つの未来を動かし、更にその未来がその次の未来を動かす、ということですね。未来を動かすために、逆算してあるプレーを選択する、とも言えますね。
遠藤 はい。敵も味方も、一本のパスで次のプレーを動かす、ということができるようになれば、自然にゲームの流れを予測することができますし、そうやって動かしていくことができます。
──分かりやすい例で言うと、遠藤選手が中盤で周囲の選手とパス交換を繰り返すことによって、相手のディフェンスラインが上がったり、サイドに寄ったりすることで、例えば別のスペースが空いて、そのスペースを活用した次の展開が生まれていく、というような感じですかね。
遠藤 簡単に言うとそうですね。
──これはたぶん、ライトなサッカーファンだとなかなか分からないことだと思いますが、分かるとすごく面白いところだと思います。
遠藤 実際、分かりづらいことですけどね。僕自身は、やっている選手が分かっていれば良いと思います。「ムダなバックパスや横パスが多い」とよく言われます。もちろんムダな時もあると思いますが、意味がある時も当然ある。それを、一緒にやっている選手たちが感じてくれればそれで良いと思います。
──いや、サッカーファンは、それが分かった時、すごく楽しいと思いますから、ぜひ分かる人を増やしましょうよ。
遠藤 そうですね。サッカーファンの方々のサッカーを見る楽しさが、もっと深みを増してくれればいいですね。「サッカーはボールだけを見ていれば良い」というのを、少しだけ角度を変えて見るようにすると、もっと楽しくなってくると思います。
「中村俊輔は敵にしたら本当に嫌な選手」
──現役の選手の中で、そういう感覚を人一倍持っているのは、中村俊輔選手だと個人的には思うのですが、そういう感覚について、中村選手と話したりするんですか?
遠藤 普段はあまりそういう話はしませんが、僕が初めてシュンとプレーした時に、「この人とは合うな」と思いました。感覚が似ているとは感じますね。
──現役のうちにもう一度、2人が同じチームで一緒にプレーするのを見たいです。
遠藤 そうですね。シュンとは同じクラブになったことがないので、1年間を通して一緒にやってみたいです。そんなことが実現したら、うれしいですね。
──2人とも、それぞれのクラブの顔です。どちらかがどちらかのチームに移籍する可能性は、残念ながら相当低いでしょうね。
遠藤 きっと、もう一緒にプレーすることはないと思います。
──実現しないからこそ、面白いのかもしれません。
遠藤 そうですね。
──現在の中村選手を、一人のライバルとして、どのように見ていますか?
遠藤 敵にしたら本当に嫌な選手です。フリーにさせたら何でもできますし、立場的にもチームのことを考えながらやっていると見ていて感じます。シュンが感じた経験を下の選手に伝えていますし、以前と比べてもよくしゃべるようになったと思います。「Jリーグを更に良くしていこう」という気持ちを感じますね。
▷▷日本代表、コンフェデ杯、自身の流儀、ゲームを読むということについて。サムライサッカーキング5月号では、遠藤保仁15,000字インタビューを掲載。永久保存すべき内容です。とくとご覧あれ。