長友(上)への信頼を語ったカンビアッソ(下) [写真]=Getty Images
『ガゼッタ』紙の採点と寸評で振り返る、長友佑都の2012-13シーズン通信簿
イタリア3年目、長友佑都の2012-13シーズン公式戦はヨーロッパリーグ予選のハイデュク・スプリトで幕を上げた。今シーズンは、本職の左サイドバックに加え、右サイドバック、中盤の両サイドなど、複数のポジションで出場。試合中に2度、3度のポジションを変更し、昨シーズン以上にその万能性を重用され、アンドレア・ストラマッチョーニ監督から「絶対に手放したくない選手」との高い評価も得た。
しかし、前半戦はチームトップクラスの公式戦24試合に出場したものの、後半戦は左ひざの負傷に悩まされて欠場が続いた。長友の2012-13シーズンの全公式戦記録を、イタリア最大スポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の採点と寸評とともに振り返ってみよう。
▼2012-13シーズン前半戦 長友佑都 出場記録
セリエ:25試合・0得点・1アシスト
ヨーロッパリーグ:8試合・2得点・1アシスト
コッパ・イタリア:2試合・0得点・0アシスト
【8月】
■8月2日|ヨーロッパリーグ予選3回戦1st leg vsハイデュク・スプリト(A)3○0
出場時間:先発フル出場(1得点)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「抑え気味のスタートにはなったものの、次第に相手が嫌がるような存在となり、得点も決めた。(シュートが相手に当たって)偶発的な得点だったと言えるが、欧州の舞台で決めた最初のゴールとなった」
■8月9日|ヨーロッパリーグ予選3回戦2nd leg vsハイデュク・スプリト(H)0●2
出場時間:35分間(途中出場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「驚きのスタメン漏れ。途中出場後は左サイドを活性化し、(相手右サイドのミルコ)オレムスを相手陣内にとどめさせた」
■8月23日|ヨーロッパリーグ プレーオフ1st leg vsヴァスルイ(A)2○0
出場時間:69分間(途中出場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「すぐに、拍手かっさいにふさわしいプレーを見せることはできなかった。ニクラエに対してスピードで敗れ、ボールへの寄せを多少怠った。だが、何本かの効果的なクロスで次第に挽回。ショート・パスの判断よりも、空中戦の対応のほうが優れていた」
■8月26日|セリエA第1節 vsペスカーラ(A)3○0
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「(開幕直前に加入した)アルバロ・ペレイラがレギュラーの座を奪おうと脅かしているが、積極的に攻撃参加し、(マッチアップした)ダミアーノ・ザノンを落ち着かすことなく攻め続けた」
■8月30日|ヨーロッパリーグ プレーオフ1st leg vsヴァスルイ(H)2△2
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「左MFは彼のポジションではなかった。左サイドバックの選手とポジションを代わったが、落ち着きがなく、リズムに乗れなかった。(リビウ)アンタル(ヴァスルイの最高採点7)にずっと同じやり方で打ち負かされた」
【9月】
■9月2日|セリエA第2節 vsローマ(H)1●3
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「長友と(マッティア)デストロのバトル。小さなジャッポネーゼ(日本人)が、ジャッロロッソ(ローマの愛称)の巨人と対決。長友は常にサイドの海を航海し、最高の能力を示して、そしてスラロームからシュートへの素晴らしい動きでゴールまであと1歩と迫った。戦犯を逃れる少ない1人」
■9月16日|セリエA第3節 vsトリノ(A)2○0
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「左サイドバックを任された前半に対決した(マリオ)サンターナよりも、後半から右サイドバックにポジションを移して対峙した(アレン)ステヴァノヴィッチに苦しめられた。つまらないミスがいくつかあったことと、(ホイッスル後にボールを蹴ったことで警告された)愚かなイエローカードを受けたことは残念」
■9月20日|ヨーロッパリーグ グループリーグ第1節 vsルビン・カザン(H)2△2
出場時間:先発フル出場(1得点)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「長友のサイドからあまりにも多くのことが起きた。立て続けに攻撃され、その度に立て直したからだ。それは、コウチーニョが長友を助けなかったからだ。最後は、ボレーを叩き込み、チームを救っている」
■9月23日|セリエA第4節 vsシエナ(H)0●2
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「闘争心に関しては10点の評価に値するだろう。それは、すべてのボールに、まるで人生を懸けているかのように立ち向かっていたからだ。だがこういった奮闘から、効果的な攻撃をほとんど作りだせなかったことが問題だ」
■9月26日|セリエA第5節 vsキエーヴォ(A)2○0
出場時間:68分間(先発途中交代、1アシスト)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「それまで3度のボールタッチだったが4度目でうまく事が運ぶ。0-0で迎えた場面、クロスを放つとキエーヴォの(ニコラ)フレイに当たり(アルバロ)ペレイラに。そのペレイラがゴールに流し込み先制点が生まれた。長友のアシストによって、試合の展開はインテルの流れに変わった」
■9月30日|セリエA第6節 vsフィオレンティーナ(H)2○1
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「(アンドレア)ストラマッチョーニ監督は、(フアン・ギジェルモ)クアドラードを大人しくさせるために長友を高い位置に置いておきたかった。問題はクアドラードが長友の注意から逃げてしまうことだった。失点を喫した場面では、マークを外してしまい失点につながってしまった。多少、弁解の余地はあるが、クアドラードが背後から迫った」
【10月】
■10月7日|セリエA第7節 vsミラン(A)1○0
出場時間:48分間(先発、48分退場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:4
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「前半は、(ステファン)エル・シャーラウィのマークで終えた。というのも、(アンドレア)ストラマッチョーニ監督が、長友にエル・シャーラウィを抑え込むように指示をしたからで、長友は相手に仕事をさせなかった。だが、(マリオ)ジェペスへのファールで警告を受け、未熟なハンドで提示された2枚目のイエローカードも妥当なものだった」
■10月28日|セリエA第9節 vsボローニャ(A)3○1
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「左サイドで上下動を繰り返し、試合開始直後にはクロスを放ったが印象に残るプレーはなかった。終盤にエリア内に侵入し、GKフェデリコ・アリアルディに見舞ったシュートの動きは良いプレーだった」
■10月31日|セリエA第10節 vsサンプドリア(H)3○2
出場時間:27分間(途中出場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「攻撃力を高め、サンプドリアをコンパクトにさせないために、より高い位置でプレーした。実際に、長友が入ってサンプドリアは間延びし、攻撃力は弱まった。長友は貢献した」
【11月】
■11月3日|セリエA第11節 vsユヴェントス(A)3○1
出場時間:先発フル出場(1アシスト)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:7
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「ナガトモの2つの顔が見られた試合だった。前半は、良くない部分が目立った。集中力の欠如から、危うく2点目を喫する場面も作ってしまったことは忘れられないものだ。ところが、後半は、まるで切れ長の目をした(アジア人を意味)トッテナムの(ギャレス)ベイルのように変わり、ユーヴェの右サイドを徹底的に痛めつけた。(ロドリゴ)パラシオへのアシストはとても素晴らしいもの」
■11月8日|ヨーロッパリーグ グループリーグ第4節 vsパルチザン(A)3○1
出場時間:45分間(先発途中交代)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「長友と対峙した(ラザル)マルコヴィッチは何度も自分のポジションを離れた。パルチザン指揮官にとっては評価できない動き。一方、長友はマルコヴィッチの背後をつき、精力的に走った。恐れを抱かす、疲労も感じさせない動きをみせた」
■11月11日|セリエA第12節 vsアタランタ(A)2●3
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「開始から、はつらつとしたプレーを見せていたが、それもエセキエル・スケロットが勇敢なプレーを見せるまでの少しの時間だった。ずるずると後退せざるを得なくなり、度々苦戦を強いられ、困難に陥った」
■11月18日|セリエA第13節 vsカリアリ(H)2△2
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「継続してサイドを攻め続けた。もし(ディエゴ)ミリートが長友の絶妙なクロスを外していなければ、この場で長友のアシストを称賛していただろう」
■11月26日|セリエA第14節 vsパルマ(A)0●1
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「長友の攻撃参加は、アレアンドロ・ロージにとって煩わしいハエのようなものとなった。だがパルマの攻撃も長友のサイドから仕掛けられた。常にゲームで存在感を示したとは言えない」
【12月】
■12月2日|セリエA第15節 vsパレルモ(H)1○0
出場時間:26分間(途中出場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「前半を終えて(アルバロ)ぺレイラに代わって入ると期待されたが、(ハビエル)サネッティと交代して入り、チームに活気を与えた」
■12月6日|ヨーロッパリーグ グループリーグ第6節 vsネフチ・バクー(H)2△2
出場時間:37分間(途中出場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「左サイドハーフで投入されると1分も経たず、仕事を果たす。ボールを要求し、リヴァヤにクロスを放った。前節のパレルモ戦のようにこの試合も、途中出場で攻撃を活性化。クロスバーを強く叩くシュートも放っている」
■12月9日|セリエA第16節 vsナポリ(H)2○1
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「長友のサイドには、(ファン・カミロ)スニーガが待ち構えていたが、(ロレンツォ)インシーニェもいた。軽視してはならない2人の選手がいた“ジャングル地帯”からの突破を抑える。テクニックやフィジカルよりも、より戦術的な戦いでナポリが4-3-3にシステムを変更したあとには、インシーニェを封じるため、(サイドハーフから)サイドバックにポジションを移した」
■12月15日 セリエA第17節 vsラツィオ(A)0●1
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「セナド・ルリッチとの対決に屈せず。恐らく、この試合最も手堅い対決だった。グアリンがボールを持ったときには、最低でも顔を出してサイドを駆け抜けた。持久力があることで後半から中盤にポジションを変更。カウンターでは彼のスピードが威力を発揮した」
■12月18日 コッパ・イタリア5回戦 vsヴェローナ(H)2○0
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「左サイドMFを務め、ワイドに広がり、カッサーノの動きに合わせて攻撃に参加した」
※終盤に足を痛め、同22日のジェノア戦欠場が決定
【1月】
■1月20日 セリエA第21節 vsローマ(A)1△1
出場時間:57分間(先発途中交代)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「ジャッポネーゼはやらなければならない守備ができず、できるはずの攻撃をやれなかった。シュートを放つまでは、迷いのあるプレーが続いた。ストラマッチョーニ監督はナガトモをなんとか機能させようと努めたが、後半に入ってサイドが変わり、試合の流れから消えてしまうと、ベンチに下げた」
■1月23日 コッパ・イタリア準決勝ファーストレグ vsローマ(A)1●2
出場時間:45分間(途中出場)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「(ジョエル)オビに代わって途中出場。サイドをコントロールし、少なくともオビも(アルバロ)ペレイラも決して確実なものにできなかった落ち着きをもたらした」
■1月27日 セリエA第22節 vsトリノ(H)2△2
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「負傷から戻ったあとも、彼本来の姿には戻っていない。状況を変えられるときでも、ボールは常に足元に残ったまま。それに加え、ミスも非常に多い」
【2月】
■2月3日 セリエA第23節 vsシエナ(A)1●3
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:4.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「1本の正確なクロスさえも放つことすら、もはやできず、偶然のクロスを放つことさえもない。サイドを駆け上がるまでは良いが、放たれたクロスは目を覆いたくなるようにサイドを割っていった」
■2月10日 セリエA第24節 vsキエーヴォ(H)3○1
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「後半は集中力が増して有益になった。守備でも貢献し、カッサーノとのコンビからの斜めへの動きは素晴らしかった」
■2月14日 ヨーロッパリーグ決勝トーナメント1回戦ファーストレグ vsCFRクルージュ(H)2○0
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「走るタイミングが悪く、動きが無駄になったり、どっしりと構えられず、ボールよりも早く前に出てしまった。それでも次第に良くなり、相手に打ち勝った。及第点の出来」
■2月17日 セリエA第25節 vsフィオレンティーナ(A)1●4
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:4
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「これほどまで苦戦を強いられたことはかつてなかった。常に攻め込まれたファン・クアドラードに恐怖を味わい、非常に驚かされた。3点目のクリアを誤った」
■2月24日 セリエA第26節 vsミラン(H)1△1
出場時間:77分間(途中交代、1アシスト)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:5.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「無防備の右サイド。ナガトモがサイドにいる間は、インテルは不安定な状態だった。ナガトモは攻めず、守りもせず、ステファン・エル・シャーラウィと(マッティア)デ・シリオの猛攻を受けた。しかし、サッカーでは、一瞬にして、愚かな者がヒーローに成り得る。左サイドにポジションが変わり、同点のピンポイントクロスを放つ。アシストを決めて、4.5から5.5になった」
【4月】
■4月14日 セリエA第32節 vsカリアリ(A)0●2
出場時間:8分間(途中出場、途中交代)
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点、寸評なし
【5月】
■5月12日 セリエA第37節 vsジェノア(A)0△0
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:6
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「謎めいたひざの故障からカムバックしたジャッポネーゼ(メインスタンドにはいつものように多くの日本人記者が観戦)。前半は攻撃参加が何度も続いた。アンドレアス・グランクヴィストがナガトモに対し、口論を仕掛けたが、ナガトモのスポーツマンシップに則った対応にマラッシ(ジェノア本拠地の愛称)の観衆が拍手を送った」
■5月19日 セリエA第38節 vsウディネーゼ(H)2●5
出場時間:先発フル出場
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙採点:4.5
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙寸評
「守るのか、攻めるのか、これが問題だった。与えられた役割がはっきりとせずに困惑していた。試合の大部分で傍観していた」