[サムライサッカーキング6月号 掲載]
サッカーファンにお馴染み『やべっちF.C.』。大先輩からバトンを受け、竹内由恵アナが新アシスタントMCに就任。日本サッカーの新しい勝利の女神の誕生として、毎週末の現場で感じるサッカーの魅力、2代目としての決意、そして今日6月4日に迫った決戦への想いを語ってもらった。
インタビュー・文=岩本義弘
写真=樋口涼
竹内由恵アナ 大好きな先輩の後を継ぎ責任ある2代目の座に
──先輩である前田有紀さんが3月末をもってテレビ朝日を退職されて、『やべっちF.C.』を卒業されました。卒業回となった3月31日の放送では、最後の挨拶をする前田さんの隣で涙を流されていましたね。
竹内 前田さんは2003年に入社してすぐに『やべっちF.C.』の担当になって、番組にずっと携わってこられたので、いろいろなことがあったのだろうな、というのを改めて考えたら、思わず涙が出てきてしまいました。すごく仲良くしてくれた先輩でしたし、テレビ朝日への出社自体があの日が本当に最後だったので、番組が始まる前から、悲しい気持ちになっていました。
──前田さんと一緒に過ごした期間はどれくらいですか?
竹内 私は08年10月からこの番組のフィールドリポーターを務めさせてもらっているので、もうすぐ丸5年が経ちます。スポーツ取材の基本的なことは、前田さんの背中を見て学んだという感じですね。
──卒業回では、矢部浩之さんの結婚報告もありましたね。『やべっちF.C.』にとってすごい回だったと思いますが、現場はどんな雰囲気だったのでしょう?
竹内 いろいろなことがありすぎて、ちょっと混乱するくらいでした(笑)。ただ矢部さんも、自分の結婚のことは置いておいて、この日は前田さんの最後の日だから、それをメーンにしていこうとおっしゃって、スタッフ全員がそういう雰囲気になっていました。
──見ているこちらにも良い雰囲気が伝わってきました。前田さんはどういう先輩でしたか?
竹内 本当に何でも相談できる先輩でした。他の番組では、アナウンサーは私一人ということがほとんどで、共演しているという意味ではアナウンサーの中で前田さんだけでしたから。一番話せて、一番身近な先輩という存在でした。
──そうした先輩の後を継いで、スタジオのアシスタントMCとなるわけですが、これまでの5年間と違って、メインで担当されるということについてはどう受け止めていますか?
竹内 ずっとフィールドリポーターをやってきたので、こんなふうにスタジオを任せてもらえる日が来るなんて、本当に思っていませんでした。ただ、フィールドリポーターの仕事を任されている以上、とにかくサッカーの現場には行こうという気持ちで取り組んできたので、その経験を生かせる場を与えていただいたというか、これから更にサッカーと真摯に向き合って、その魅力を伝えていきたいと思っています。
──確かに、これまでもほぼ毎週のようにJリーグの取材に行かれていますよね? 他の番組もある中で、かなりハードなのではないかと思うのですが。
竹内 そうですね。ただ、これからは今までよりももっと、何よりも優先して、サッカーについて詳しくなりたいと思っています。
──やはりメインのアシスタントMCという立場は、今までとは全く違うということでしょうか。
竹内 すごく責任を感じています。サッカーのサポーターの方々って、本当にサッカーを愛していて、『やべっちF.C.』のような番組に対しても、温かくも厳しい目で見ていると思うんですね。きちんとサッカーと向き合っていないと、それがすぐに伝わってしまうと思いますし、そういう意味では一層身が引き締まる思いです。
──前田さんの後を継ぐことが決まってから、サポーターの方々には何か声をかけられましたか?
竹内 「頑張ってね」といった励ましの声をたくさんいただきました。『やべっちF.C.』を見てくださっている方が本当に多いんだなというのを改めて実感したのと、そういう声を掛けてもらってすごくホッとしました。前田さんはサッカーの現場に精通していて、サポーターの方々からも愛されている存在だったので、その後私が入っていって大丈夫かな、という不安があったのですが、「頑張ってね」と言ってくれる人がたくさんいたので、本当にうれしかったです。もっと頑張ろうと思いましたし、サポーターの方々ともっとコミュニケーションを取っていきたいなと思いました。
──これまで取材された中で、お気に入りのスタジアムというのはありますか?
竹内 一つは、等々力陸上競技場ですね。取材に行っている回数も多いですし、川崎フロンターレの試合でフィールドリポーターもたくさんやらせてもらいました。川崎のサポーターの皆さんはすごく優しいですし、スタジアム全体がアットホームな雰囲気ですよね。
──卒業間近に訪れた前田さんに対してもコールしていましたね。他にお気に入りはありますか?
竹内 浦和レッズ戦の埼玉スタジアム2002の雰囲気はすごいなと思いますね。スタジアムに行く途中に、マンションのベランダに応援フラッグが掲げられたりしているのを見ると、本当にサッカーが根付いているんだなと思いますし、何と言っても試合中の雰囲気に圧倒されます。まるで、本当にこれから戦いにいくのではないかというくらい、サポーターの闘志がひしひしと感じられます。
──さいスタは日本代表にとっても特別な場所ですよね。
竹内 日本代表戦の時は、本当に「聖地」という感じがします。私たちは、試合前にピッチレベルに立つことができるのですが、それも申し訳ないというか、安易に足を踏み入れてはいけない特別な場所という感じです。それからナイトゲームなので、駅から歩いて徐々に近付いていくと、光っているスタジアムが迫ってくるというか、その光景を見ると気持ちが高まりますね。
──その気持ちはよく分かるのですが、駅から歩いて、ファンの方に囲まれたりしないんですか?
竹内 あんまり気が付かれないんですよ。前田さんと2人で電車で行ったこともありますが、そういうことはなかったですね。やはり皆さん、サッカーのことが第一という感じで、それどころじゃないんじゃないでしょうか(笑)
──本当ですか(笑)? ところで浦和と言えば、ライバルである大宮アルディージャも今季絶好調ですね。
竹内 NACK5スタジアム大宮での埼玉ダービー(1─0で大宮勝利)も取材に行かせていただきましたが、本当にすごい盛り上がりでした。昨シーズンも何回か取材に行かせてもらっているんですが、負けてしまう試合も多かったんです。でも今回行ってみたら、スタッフの方や関係者の方の顔が、本当にキラキラされていて、勢いに乗っているんだなというのがすごく伝わって来ました。
──ちなみに、応援スタイルで好きなクラブはありますか?
竹内 私は結構、浦和の応援の熱量がすごく好きです。怖いなとすら感じるような迫力と、うごめく旗を目の当たりにすると、気持ちが昂ぶります。それからガンバ大阪のコールも、聞いていると一緒に歌いたくなるような印象的なものですし、柏レイソルのサポーターも面白いと思います。
オーストラリア戦は点を決めて勝ってほしい!
──話は変わりますが、以前前田さんにインタビューした時に、竹内さんはリフティングが3回くらいしかできない、とおっしゃっていました。それは本当ですか?
竹内 本当です(笑)。でも、アシスタントMCを務めるにあたって、それではさすがに良くないだろうと思って、先日、ボールを買ったんです。
──買ったんですか? その発想はすごいですね(笑)
竹内 何かしなきゃという気持ちになってしまって……(苦笑)。ただ、なかなか練習する場所がなくて、まだ3回くらいしかできません。目標は10回です。
── 10回はたぶん、すぐできるようになるんじゃないですか?
竹内 いや、なかなかできないんですよ。ポンポンって、1回ずつ手に持ちながらだったら10回できるんですけど。
── それは普通できますよね(笑)。ボールはスポーツショップに買いにいったんですか?
竹内 いえ、スポーツショップが近くになくて、麻布十番にあるおもちゃ屋さんで買っちゃいました。ちゃんと売ってるのかなって思ったんですけど、店員の方が、「これが普通のサッカーボールですよ!」って言ってくれて。
──それ、おもちゃのゴムボールの可能性も否定できませんね(笑)。大学時代はボクシング部のマネージャーだったということですが、スポーツの魅力はどういうところにありますか?
竹内 例えば仕事で疲れた時だったり、落ち込んだりしている時に、スポーツを見に行くと、勇気がもらえて、元気になれて、爽やかな気持ちになれるんです。そういうところも魅力だなと思います。
──サッカーはどうでしょう?
竹内 サッカーは団体競技なので、試合中、選手一人ひとりに注目することってあんまりなかったりすると思うのですが、私が最近すごく面白いなと思っているのは、一人ひとりの背景に注目して見るということです。例えば、前の試合で悔しい思いをしていたとか、ケガから復帰したとか。個々のいろいろな想いが連なって、それが最終的にチームの得点につながっていくんだなと思うと、さらにサッカーの魅力にはまっていきます。一人ひとりにドラマがあるんですよね。
── それはよく分かります。では、どんな瞬間に一番ドキドキしますか?
竹内 私は、最初の1点が決まった後の瞬間というのが、すごく面白いなと思っています。試合が動いた瞬間ですね。その時のワクワク感みたいなのが好きです。
──番組についてもお聞かせください。4月から、中山雅史さんがレギュラー陣に加わりました。画面を通してもあのテンションがビシビシ伝わってくるのですが、共演者としてどんな方ですか?
竹内 すごいなと思ったのが、今、取材から実況、解説まで全て一人でこなす『ゴンオール』というコーナーをやられているのですが、ある回で、ご本人としては解説の部分で少し失敗してしまったようなんです。普通なら気が付かないような細かいところだったのですが、番組終了後、すごく落ち込んでいて。帰り際まで、「はぁ〜」って溜め息をつかれていたんです。その時に、この方は、何でも常に全力を尽くすんだな、だからあれだけのすごい実績を残されたんだなと思いました。
──いかにもゴンさんらしいですね。最後に、本日、ワールドカップ出場権のかかったオーストラリア戦があります。ホームでW杯出場が決まるかもしれないというのは初めてのことです。
竹内 やっぱり勝ってほしいですね。引き分けでも決まりますが、ぜひ点を決めて勝ってほしいです。個人的には、香川真司選手か本田圭佑選手が決めてくれたら、すごく盛り上がるなと思ったりしています。香川選手は前回のヨルダン戦で悔しい思いをし、本田選手も前回出場できなかったので、その分ここでゴールを決めてほしいです。それでスタジアムが湧く様子が見たいですね。
──本当に試合が楽しみですね。ありがとうございました。