KOBE, JAPAN - FEBRUARY 06: Keisuke Honda of Japan hugged Shinji Kagawa of Japan after he scores Japan's 2nd goal during the international friendly match between Japan and Latvia at Home's Stadium Kobe on February 6, 2013 in Kobe, Japan. (Photo by Kaz Photography/Getty Images)
ザックジャパンにおける最重要テーマといえる本田と香川の2大エースの起用法。コンフェデレーションズカップでの2人のプレーについて、『10番は「司令塔」ではない』の著者・北健一郎が各試合ごとに詳細に分析していく。
ブラジル戦の「10番」は本田だった
「10番」というのがピッチ上で困ったときに周りの選手に頼りにされる存在と定義するならば、ブラジル戦に関して言えば日本代表の「10番」は香川真司ではなく本田圭佑だった。
本田というのはチームが苦しくなればなるほど頼りになる選手だ。ブラジルのプレッシャーの速さと、デコボコのピッチによって日本の選手が本来のプレーができない中でも、本田は普段通りにボールをキープしていた。
本田がボールをキープできる要因としては当たり負けしない身体の強さが真っ先に挙げられるが、ワンタッチ目とツータッチ目でボールの角度を変えることができるのも大きい。ワンタッチ目で相手の足が届きそうな場所にボールを“さらして”食いついてきたところで相手の重心の逆をとる。
ブラジルは昨年10月のブロツワフの試合を受けて本田を日本の重要人物と位置付け、ボールを入ったところに複数で囲んできた。それでも失わなかったことで本田のキープ力が改めて際立つことになった。
もちろん本田にも課題はある。怪我の影響からか後半の10分過ぎから足が止まってしまい、ボールに絡む回数がパッタリと減ってしまったことだ。本田がパスコースに顔を出せなくなると最終ラインが縦方向のパスコースを見つけられずボールを前に運べなくなってしまう。90分間を通じてプレーできるコンディションでないことは明らかだった。
一方、香川はボールを持ってから素早いターンで相手をかわそうと試みたものの、2人目に引っかかってしまうことが多かった。香川の場合、相手が強くなったときに「自分が何とかしなければいけない」という気持ちが強過ぎて空回りしてしまう傾向がある。
ブラジルに押し込まれたことによって香川がボールを受ける位置は必然的に低くなる。ターンでうまくかわせたとしてもゴールまでは距離がある。香川にクリスチアーノ・ロナウドやベイルのようなスピードがあるなら別だが、長い距離をドリブルしても追いつかれてしまうのは目に見えている。
本田と香川では得意なプレーも、持ち味を出せるプレーエリアも異なる。香川の場合はペナルティエリアの境目の左サイド寄りで前を向いてボールを受けたときに、彼の良さであるクイックネスとテクニックが最大限に活かされる。
しかし、ブラジル戦のように押し込まれてしまうとチーム全体のプレーエリアが下がるため、香川を高い位置でプレーさせることができなくなるのだ。後半に入ると香川はほとんど試合から消えてしまっていた。香川自身のコンディションが悪かったわけではなく、香川が活きるような試合展開ではなかったというのが正直なところだろう。
香川は味方に使われて活きる選手であり、パフォーマンスが試合展開に左右されやすい。強豪国との試合では日本が押し込まれ時間が長くなることが予想される。その中で日本の「10番」をどのように活かすべきか。これはワールドカップ本番までにザックジャパンが解決しなければならない宿題といえるだろう。
文●北 健一郎 写真●Getty Images
10番は「司令塔」ではない-トップ下の役割に見る現代のサッカー戦術-
サッカーの戦術が変化する中で「トップ下」と呼ばれるポジションの役割も変わってきた。かつての考え方では「トップ下」とは呼べない「トップ下」の選手たちも生まれている。サッカーを観る上で重要な視点を紐解く。
◆目次
第1章 トップ下を見るための10の視点
第2章 FC東京・高橋秀人が語る「戦術的トップ下論」
第3章 浦和レッズ・柏木陽介が語る「「技術的トップ下論」
第4章 現代サッカーを面白くする10人のトップ下
第5章 本田と香川の使い方を探る