世界への扉を開いた前園真聖氏が自身の経験と取材を基に日本サッカーがさらに強くなるための方策をちょっと辛口で提言。連載3回目の今回は、3戦全敗に終わったコンフェデレーションズカップについて自身の見解を語った。
3戦全敗……。
これが今現在の日本代表の実力だ。これをしっかりと受け止めなければならない。コンフェデレーションズカップのグループリーグ、ブラジル、イタリア、メキシコを考えればこの結果も不思議ではない。ただもっとチャレンジできたし、試合によっては勝てるチャンスもあった。
大事な初戦であるブラジル戦は、俺も楽しみにしていたけど、残念な結果だった。何も出来なかったというより何もしようとしてなかった。開始3分のネイマールの素晴らしいゴールによって試合の主導権を握られたのは間違いない。その後ブラジルに対して日本はチャレンジすることなく、とても貴重な90分を自分達で無駄なものにしてしまった。特にボールを持っていてもブラジルの選手達に寄せられると、慌ててコントロールミス、パスミスが目立ち、プレーの迷いが判断を遅らせることで、日本はまったくサッカーをさせてもらえなかった。逆にブラジルは、ボールを持つと積極的に仕掛け、寄せられても1人で局面を打開できる技術がある。だからこそ迷いがなく自信を持ちプレーしている。もちろん相手に寄せられる前に素早い判断でプレーすることが必要だが、これぐらい高いレベルになれば時間とスペースを与えてもらえない状況がたくさんある。その時に”個”でその局面を打開出来る力があるか? ドリブルで仕掛け突破できるか? 1人2人に寄せられても焦らずパスコースを自ら作れるか? 日本にはまだその力はない。
2戦目のイタリア戦は、逆に試合の流れを見極めるチームとしての経験の差がでた試合だった。
日本は立ち上がりから、高い位置でプレスをかけイタリアを混乱させていた。
前半で2点を取り、試合を優位に運んでいたように見えた。2-0で前半を終えることもできたはずだが、日本はその勢いで3点目を取りにいっていた。結局1点を失い、そのままの流れで後半もイタリアに主導権を奪われた。失点は自らのミスと集中力を欠いたこともあるが、それ以上に、チームとして試合の流れを見極めることができていなかった。
日本はどんな状況でも同じリズムでプレーしていた。攻める時間と守る時間帯の中でプレーの質や状況判断ができていなかった。奪われてはいけない時間帯でボールを失ってしまい、シンプルにクリアしたりファールを誘ったりするなど、流れを断ち切るプレーも出来なかった。これは前半良い戦い方をしていたメキシコ戦でも同じことが言える。
アジアやホームでの戦いでは感じることができない本気の戦いの中で、「試合の流れを見極める戦術眼」と「個のレベルの差」をこの3戦で俺は感じた。
では、日本はこれから、どうやって「戦術眼」や「個のレベルアップ」を鍛えればいいのだろうか。
まず、ひとつ目に関して。
経験の差と言ってしまえばそれまでだが、そこに尽きると思う。いまの代表選手のほとんどはヨーロッパで経験を積んでいるが、それは個人の経験であって、チームとしての経験ではなかった。チーム全体として経験を重ねることによって、試合の流れを読み、メリハリをつけることを学ばなければいけないと思う。
ふたつ目に関しては、今回対戦したブラジル、イタリア、メキシコの3チーム共に国外リーグでプレーしている選手がほとんどだが、国内リーグでプレーしている選手も多くいる。メキシコ代表は国内組の選手がほとんどだった。今でこそ日本も海外でプレーしている選手が多いが、みんなJリーグで経験を積み、レベルアップをして海外でプレーしている。もちろん海外での厳しい環境での経験が成長につながることは間違いないが、それ以前のJリーグでの経験はより大事な場所だと思う。今回対戦したこの3チームはベースである国内リーグのレベルも非常に高い国であるのは間違いない。
JリーグとブラジルリーグやセリエAとの違いは、特にボール保持者に対してのプレス、寄せる時の厳しさにあると思う。Jリーグはとても緩いと思う。このことが選手に考える時間とスペースを与え、余裕のある判断と技術でもプレーできてしまう。もしかすると国内リーグの差が世界と戦う時には大きな差に繋がっているんじゃないかな。国内リーグのレベルがより高いレベルになれば、より日本のサッカーのレベルは上がるし、海外組が増えるだけではなく、1番大事なJリーグ全体のレベルを上げることが世界の強豪国と互角に渡り合えることにつながるはず。世界と本気で戦う為にもう1度Jリーグを見直すべきだと俺は思う。
写真●Getty Images