文●田中亮平(サムライサッカーキング編集部)
ブラジルW杯開幕まで、あと1年あまり。その1年間のチーム作りについてザッケローニ監督は、コンフェデ杯が開幕する前、W杯最終予選イラク戦の前日会見でこう述べている。
「コンフェデ杯が終わった後は全員がスタート地点に立って、ゼロから競争が始まる。我々は一つの区切りを迎え、最終章に入る」
ザッケローニ監督は就任以来、時に「メンバーを固定化し過ぎている」という批判さえ受けながら、一つのチームを作り上げた。2011年のアジアカップを制したメンバーをベースにしたチームは試合ごとに成熟度を増し、アジアを勝ち抜いたが、集大成として挑んだコンフェデ杯では3戦全敗での敗退という現実に突き当たった。
嫌というほど思い知らされた現在地から導き出されたのは、現状のままでは世界で勝てないという解だ。望んだか望んでいないか、まさに「一つの区切り」を迎えたチームは、手が届きそうで届かない、追いつきそうで追いつけない、世界とのその差を埋めるための「最終章」に突入する。
「ゼロからの競争」という言葉を聞いて、連想してしまう名前がある。7月12日に発売されるサムライサッカーキング8月号では、セレッソ大阪の柿谷曜一朗、鹿島アントラーズの柴崎岳、サガン鳥栖の豊田陽平の三者にロングインタビューを行った。
「今年の一番のビッグイベントは、自分がセレッソの8番を付けたことなんです。『代表に入るんじゃないですか?』って言われるのはもちろんうれしいですけど、『いやまあ、そうっすね』くらいにしか思わないですね。代表に入るためにサッカーはしてないです」
クラブに対するアイデンティティを強烈に表現する柿谷は、代表に対してそうそっけなさを見せながらも、次のようにも言った。
「僕が感じるのは、『(今の日本代表に)自分の色を出している選手はあんまりいないな』ということです。例えばですけど、(原口)元気とかみたいに、自分の色をブワーって塗りつぶすように出す選手は、監督はたぶん好きじゃないんやろなって。僕は元気みたいな選手が大好きですよ。僕もそうやし」
21歳にして鹿島の中核を担う柴崎は、そのプレースタイルそのままに、すべての受け答えが冷静だ。しかしその淡々とした口調の中に、日本代表への強い思いも覗かせる。
「今代表にいるボランチの選手を見ると、どちらかといえばタイプが似通っていると思っていて、前線にスプリントしていくタイプの選手はあまりいないなと思います。監督はたぶんバランスを崩すことがあまり好きではないので、後ろの良い位置でサポートしながら、という感じだと思います。それはそれでしっかりやらなければいけませんが、それだけになってしまうと攻撃が手詰まりになるのも事実です。自分が選ばれたらそういう(前線に飛び出していくような)プレーをすべきかな、というのが僕個人の思っていることです」
「(遠藤保仁の後継者候補と言われることについて)正直、何も思わないというのが本音です。似通った部分はあると思いますが、遠藤選手にも僕にも違った特徴があると思います。遠藤選手がいなければおかしくなってしまう、というのも良くないですし、後継者を探すという時点で、あまり良い状況ではないのかなとも思います」
柿谷と柴崎。彼らは現代表に対する自らの考えをストレートに表現した。「オレを試せ」と言わんばかりの熱量が言葉の端々から伝わってくる。一方、得点ランキングで上位争いを繰り広げるトヨグバこと豊田は、あくまで殊勝に、それでいて確固たる自信を次のように語っている。
「Jリーグではしっかりと点を取れるようになったという自信が付いたので、その『十分にやれる』という自信がチャンスに変わればいいなと。(日本代表に)少しでも近付いているという感覚はここ最近感じるようになりました」
7月12日発売のサムライサッカーキング8月号では、三者のインタビューをそれぞれ1万字超の大ボリュームで掲載。サムライブルーをヴィヴィットにする若武者たちの言葉に、ぜひ触れてほしい。
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