サッカーキング・フリー フォー・プレーヤーズAutumn&Winter ワールドサッカーキング11月21日/12月5日合併号
今シーズン、柏レイソルに加入した鈴木大輔は、一対一の強さと正確なフィードを武器に新天地でもレギュラーの座を勝ち取った。星稜高等学校時代に培ったという「自信」は、彼のサッカー人生にどのような影響を与えたのだろうか。
インタビュー・文=諌元知英 写真=足立雅史
試合に出場し続けてチームで結果を残さないと、その先に代表は見えない
――まず、今シーズンここまでチームとして個人としてのパフォーマンスを振り返っていただけますか?
鈴木大輔 リーグ戦は満足はできない順位にいますけど、戦いはここからかなという気持ちもあります。試合を重ねる中でチームとしても個人としても成長していて、精神的にタフになれたと思います。
――今シーズン、柏レイソルに加入されました。新天地でシーズンを迎えるにあたり、どのような思いを持っていましたか?
鈴木大輔 まずは環境に慣れたり、人間関係を作っていく難しさがあると思っていました。サッカースタイルの違いもありますし。ただ、その中でも自分としては柔軟に対応してきたつもりです。自分のプレースタイルを知らない選手もいたので、練習から自分のプレーを出していこうという意識は常に持っていましたね。チームになじむというところでは、僕は自分から話し掛けられるタイプなので、打ち解けるのも早かったです。
――レイソルのサッカーに順応するという意味でも、早かったですか?
鈴木大輔 レイソルでのポジションもセンターバックなので、プレースタイルも大きな変化は感じませんでした。ただ、サイドバックでプレーしたり、3バックや4バックというシステムが変化する中での出場もあったので、柔軟に対応する必要はありました。それでも、少しずつ自分のプレーを出せるようになってきたと思います。
――これまでサイドバックや3バックでプレーした経験はあったんですか?
鈴木大輔 実はレイソルで初めてプレーしました。だから、最初は違和感もありました。でもそこはポジティブに捉えて、何より自分はできると信じて、自信を持ってプレーしていました。
――今年はリーグ戦と並行してAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)もありました。過密日程での戦いでしたが、コンディション調整は難しかったですか?
鈴木大輔 僕自身、アジアでの戦いは初めてではないのでそこまで苦労は感じませんでしたね。移動もそうですし過密日程になることは分かっていましたから、コンディションは調整できると考えてやってきました。思ったほどの苦労はなかったです。
――ACLで戦う中で、Jクラブとの違いはありましたか?
鈴木大輔 各国それぞれのスタイルがあるんだなというのは感じました。Jリーグに似ているチームもあって、そういうチームはパワーを全面に押し出してくるスタイルが多かったです。
――結果としてはベスト4でした。この結果についての率直な感想はいかがですか?
鈴木大輔 タイトルを目指していたので本当に悔しかったです。準決勝で対戦した広州恒大(中国)は特に個々の能力が予選リーグで戦ったチームとは違いました。前線の外国人選手たちのパワーが強烈で、その選手たちに得点を決められてしまい完敗でした。でも、世界と戦うにはああいう選手を抑えていかないといけないんですよね。そういう意味でも、また挑戦したいという思いが強く残った大会でした。
――リーグ戦もいよいよ佳境です。残りの戦いへ向けての意気込みはどうですか?
鈴木大輔 少しでも順位を上げたいです。これまで取りこぼした試合もたくさんあったので、残りの試合は全勝して、来シーズンに向けての弾みにしたいです。
――日本代表についても聞かせてください。各年代の代表経験がある鈴木選手ですが、A代表へはどういった思いをお持ちですか?
鈴木大輔 チームで結果を残さないとその先に代表は見えてこないですから、まずはチームで結果を出し続けることと、試合に出場し続けることが大事だと思っています。でも、僕はあまり先のことは意識し過ぎないようにしているので、呼ばれるには一試合一試合でのアピールだと思っています。
――「先のことは意識し過ぎない」ということですが、リーグ戦で代表監督が視察にくる試合でも気張ったりしないんですか?
鈴木大輔 そういうのはどうしてもあると思うんですけど、意識はしないほうですね。常に同じモチベーションを持って戦うことが大事だなって、プロに入って本当に強く感じましたから。
――今年7月に開催されたEAFF東アジアカップ2013(東アジアカップ)では、A代表で初出場を果たしました。試合に出場したことで得たことはありましたか?
鈴木大輔 周りの選手と比べて、まだまだ足りないところがあるなと感じました。経験も浅いと思いますし、詰めなきゃいけないところは多かったので課題が見付かりましたね。失点シーンや失点した時間帯は見直す必要があるし、もう少し最終ラインからゲームをコントロールすることもできたかなって。チームでもそういった意識を持ってやれば、今後にもつながっていくんじゃないかと思います。でも、出場した試合では自分の特徴は出せたつもりですし、自信になったところもありました。
――来年6月からはブラジル・ワールドカップが開催されます。鈴木選手にとってワールドカップとはどんな舞台でしょうか?
鈴木大輔 まだ想像できない舞台です(笑)。今は「テレビで見る大会」というイメージのほうが強いです。
――本大会までは半年以上あります。メンバーに選ばれるための意気込みは?
鈴木大輔 もちろん狙っていますし、これからの自分のアピール次第では選ばれるチャンスはあると思っています。コンスタントに試合の中で自分の力を出すこと。一対一の強さや攻撃につながるフィードは自分の特徴だと思うので、そういったプレーをやり続けることが一番だと考えています。
「自信を持ってプレーすること」が大事。間違いなく、打たれ強くなりました
インタビュー・文=諌元知英 写真=足立雅史
「自信を持ってプレーすること」が大事。間違いなく、打たれ強くなりました
――それでは、高校時代についてのお話を。星稜高等学校サッカー部での生活の中で、思い出に残っていることはどんなことですか?
鈴木大輔 一番思い出に残っているのはやはり、選手権(全国高校サッカー選手権大会)に出場したことです。僕はキャプテンで、自分からチームを引っ張ろうと奮闘しました。まあ、それ以外はあまりキャプテンらしいことはしていなかったですけどね(笑)。
――練習での思い出はありますか?
鈴木大輔 キツかったことです(笑)。走り込みでアップダウン8キロある山に登ったり。石川県は冬に雪が降ってグラウンドが使えないので、グラウンドで練習する代わりのメニューが山登りだったんです。でも、やる年とやらない年があって。僕は2年生の冬にやって、すごくキツかったですね。
――星稜高等学校の河崎譲監督は当時の鈴木選手のことを「コミュニケーション能力が高く、自己主張がしっかりとしていた」と感じていたようです。
鈴木大輔 いやいやいや(笑)! よくぞ言ってくれましたって感じです。
――「奪った後のフィードを伸ばすことは徹底した」とも話していました。そういう指導は感じましたか?
鈴木大輔 インターセプトをしてからの攻撃面はよく言われていました。でも、「積極的にプレーしろ」と言われたくらいで、こういう風にやれと細かく言われたわけではなく自由にやらせてもらってました。特に3年生の頃は自信を持ってプレーしていましたし、奪った後は自分が起点になるということも意識していました。
――指導面では「個人としての特徴を消さずに、いかに伸ばしながら他の欠点を是正してあげるか」と。
鈴木大輔 確かに自分もそういう指導を受けました。いいプレーはいいって褒めてくれましたから。ただ、なかなか褒めない方なので……。さっきのは本当に意外で、よく褒めてくれたなって(笑)。
――監督の影響を受けたと感じるところはありますか?
鈴木大輔 メンタル面で「常に自信を持ってプレーすること」ですかね。消極的なプレーをするとすごく怒られて、1年生の頃から試合に出場させてもらってたんですけど、その中でビクビクしながらプレーしていると本当に怒られましたから。今も常に自信を持って、どういう状況でも堂々とプレーするように心掛けています。何よりも、自信を持つ気持ちが大事だってことを学びました。でも、僕らが選手権で敗戦した時は厳しいことを言うわけでもなく結構ケロッとしていて、「さ、帰るぞ」みたいな感じだったんで、切り替えの早さという面も今に生きているかもしれないです(笑)。
――星稜高等学校は人工芝グラウンドを保有していて環境が整っていますが、若い年代から整った環境でプレーすることは、どういった意味があると思いますか?
鈴木大輔 まず、練習に対する意欲が上がると思います。それから、いい環境でプレーすることは技術的にも向上しますね。僕自身は練習に対するモチベーションが全然違いました。いつも「早く練習したい!」って思っていて、練習が楽しみでした。
――技術面では具体的にどんな違いがあるのでしょう?
鈴木大輔 グラウンドが整っているので、パス一本にしても質の高さを求めるようになります。例えば、ボコボコの土ではミスをしても当たり前ではないですが、少なからず仕方がないところもあるんです。でも、人工芝だとパス一本の角度や細かい要求もできるようになる。実際、河崎先生も一本のパスや動きの質をすごく求めていました。
――厳しい練習や試合で敗戦した時など、若い選手は特に気持ちをコントロールすることが難しいと思います。鈴木選手はそういった時、どのようにモチベーションを上げていたのですか?
鈴木大輔 何を目標としてサッカーをやっているのかっていうのはすごく大きい。自分は本気でプロを目指していて、その前にチームとして選手権で優勝したかったんです。だから、そのためにはキツい練習も必要なんだって思い続けていました。本当に自信を持っていたし、一生懸命に練習に取り組んでいました。自分たちが勝つために練習しているという強いメンタルで取り組むことが本当に大事なんです。
――「プロを目指していた」ということですが、いつ頃から明確な目標になりましたか?
鈴木大輔 高校1年生の終わり頃から2年生くらいです。小さい頃はサッカーをやっていたから「サッカー選手になりたいです」って決まり文句みたいに言っていましたけど(笑)。
――プロへの目標が明確になった切っ掛けは?
鈴木大輔 ユース代表に選ばれたことです。全国から優れた選手が集まって、その中でプレーした時に意識するようになりました。自信を持ってプレーできましたし、自信をつけた場所でもありました。
――ところで、鈴木選手は星稜高等学校では寮生だったと思いますが、寮生活はいかがでしたか?
鈴木大輔 寮生活だったことで自分の行動に責任を持つようになりました。さっきの話みたいに、つらいことやキツい練習があってモチベーションを上げたい時、サッカー部のみんなと一緒に寮にいられたことはすごく大きかったです。実際はグチってばかりでしたけどね(笑)。でも、それでもみんなで集まって話すことで、いい方向へ持っていけたりモチベーションが上がるなら、僕は全然グチっていいと思うんです。現に僕らはそうやってきたし。だから、寮生活をしてきて良かったなって思います。
――寮生活は厳しい規則があるイメージですが。
鈴木大輔 他校の寮生活を聞くと本当に大変そうですけど、僕らはめっちゃ自由だったんです(笑)。寮の部屋もアパートの一人暮らしみたいな感じで。食事は食堂や学食を利用できましたし、とても過ごしやすい環境でした。今思うと、本当に恵まれていたと思います。
――寮生活だったり厳しい練習だったり、高校時代で培ったことが今、どのように生かされていますか?
鈴木大輔 間違いなく、打たれ強くなりました。練習でもめっちゃ怒られたし、めっちゃ走らされたし。練習終わったと思ったのに「まだ走るんかい!」みたいな(笑)。すごい量のご飯を食べなきゃいけない合宿みたいなこともあったり。そういう経験ってユースだとできないことだと思うんです。人間的な面でも厳しく指導されましたから、精神的な部分では絶対に強くなったと実感しています。
――それでは最後に、プロを目指している選手や部活生に向けてメッセージをお願いします。
鈴木大輔 今は練習を楽しみながらやるというのはやっぱり難しいところもあって、つらかったり気が乗らない時があったり、色々なことを感じると思うんです。でも、その経験はサッカー選手になってもならなくても、社会に出た時に絶対に生きてくるし、しっかり身に付いていると思うので、とにかくがんばってほしいです。今、自分がやるべきことをやり切ることが本当に大事なので、自信を持ってこれからも過ごしてください!