「オカ、うまく仕切ってくれよ。俺たち、ゴールした後のパフォーマンスをどうしたらいいか分かんないから考えてくれよ」
この試合が現役最後のキタジ(北嶋秀朗)が言ってきた。
12月28日にユアスタで行われたJPFAチャリティーサッカー2013。
キタジはJAPANスターズでプレーしていたんやけど、ユッキー(佐藤由紀彦)を含めて自分にとっては半分くらいが元チームメイト。そんな中、ミツオ(小笠原満男)やハットさん(服部年宏)も「何かやれよ」と言ってきた。
俺は今回は運営や盛り上げ役としてのオブザーバー的な役割やったから、選手のパフォーマンスについてはすっかり忘れていた。
前回は人文字やゴンさん(中山雅史)のゴールの演出など、前もって仕込んで、みんなでリハーサルをしたんやけど、今回は何も準備をしていなかった。
しまった。自分の求められてるキャラをド忘れしてた。
ベガルタサポーターに物産展で売り子として昆布とかを売るので満足してもうてた。
キックオフしていたから、十分な打ち合わせをできるとしたら、ハーフタイムしかないな。
何をしよう……。
分かりやすくて、みんながすぐにできて盛り上がるやつ。
焦る中で閃いたで。
楽天の銀次選手が始球式で来ていたから、巻き込もう。
銀次選手に直談判した。
ミツオが知り合いやったから仲立ちしてもらった。
「オカさん、銀次選手は岩手の人だから、ハードル高いのは無理ですよ」
これこれでこうしよう。
「それだったら、やってもらえそうですね」
銀次選手も楽天のスタッフの方も快諾してくれた。
ハーフタイムにロッカールームに銀次選手を招いてみんなでリハーサルをした。
盛り上げるために審判にお願いして、運営からも「そんなんして大丈夫?」と心配されたけど、やってまえ。
公式戦ではあり得ないジャッジをしてもらってPKをゲット。
ミツオのユニフォームを銀次選手が着てペナルティースポットへ向かう。
ちゃんと決めてくれるかの心配をよそに見事なゴールを左隅に入れた。
「銀次選手がピッチャーとして、投げるから、みんなは左打ちに構えてスタンド目掛けて打ち返してな」
リハーサルではなかなかみんなええ感じやったけど、
「銀次選手、打たれた後に打球の行方を見てうなだれてな」
「あと、テレビに抜かれやすいように、できるだけ正面でしてくださいよ」
銀次選手、あれだけ言ったのに、なんでサッカー選手みたいにコーナーポストに行くかな(笑)。
それでも、一連の流れを淀みなくやってのけちゃうんやから、やっぱりスターやな。まさに銀次劇場やったわ。
演出家気取りでご満悦気取りでいる中、キタジが
「やっぱオカは良い演出するな。ところでどうして参加しなかったの?」
しまった。一番テレビに映る場面で出しゃばるのを忘れていた。
奈良クラブのユニフォームを着て来たから全国ネットに映るチャンスやったのに。
「銀次選手、ブログにこのことを書いていいですか?あと、写真も載せていいですか?」
「全然いいですよ。本当にありがとうございました。本当に楽しかったです」
なんて良い人や。
自分がちっちゃい人間やと痛感しながらも、ブログに書く内容を構想してる俺でした。
JPFAチャリティーサッカー、みんなありがとう。
せやけど、俺、サッカー選手やけど、なんで試合にも出んかったんやろ。
まっ、えっか。
1978年4月24日生まれ。大阪府出身。
初芝橋本高卒業後、テスト生として横浜Mへ。打点の高いヘディングとガッツ溢れるプレーが評価されてプロ契約を勝ち取ると、デビュー戦から3試合連続ゴールを記録して一気に頭角を現した。大宮、横浜FM、C大阪、川崎F、福岡、柏、仙台と渡り歩く中、川崎F時代に始めた試合後の“岡山劇場”でサポーターの心をつかむ。柏時代には日立台のゴール裏でサポーターともに応援したこともある。09年に移籍した韓国・Kリーグの浦項ではACLを制し、FIFAクラブW杯で3位に入った。11年から昨シーズンまで札幌に在籍し、今夏からアマチュア選手として奈良クラブへ加入。J1通算64試合6得点、J2通算214試合20得点。