香川について「ワールドクラスの才能の持ち主」と語り、同選手への賛辞を惜しまなかったマルティネス監督
[ワールドサッカーキング2014年4月号掲載]
プレミアリーグで確かな評価を得る40歳の青年監督、エヴァートンのロベルト・マルティネスに話を聞く機会を得た。かつて宮市亮を指導した気鋭の指揮官は香川真司を絶賛した。
文=森 昌利 Text by Masatoshi MORI
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images
「I like Kagawa, Yes!」
それがロベルト・マルティネスの第一声だった。
昨夏にエヴァートンの監督に就任し、1年目ながらスペイン人らしいアイデアを持ち込んでチームを躍進させた40歳の青年監督は、香川真司をどう思うかと尋ねられ、冒頭のように答えた。最後につけ加えた「イエス」という言葉は、「好き」を更に肯定する表現であり、「もちろん好きだ」、「好きに決まっている」といった意味合いになる。そして「自分のチームに所属していない選手についてコメントするのは難しいが……」と前置きしながらも、香川の能力を絶賛した。
マルティネスがウィガンの監督だった昨シーズン、私は宮市亮を追って何度も彼と顔を合わせていた。基本的にポジティブな性格で、大きな茶色の瞳をくるくる回しながら情熱的に話し掛けてくる。サッカーが本当に好きでたまらないという気持ちを、ラテン人らしい陽気さとともに伝えてくる人物だ。
そうした人好きのする性格の反面、監督としての評価は非常に高い。実際、2011-12シーズン終了後には、リヴァプールが監督就任をオファーしている。しかし当時38歳の青年監督は、リヴァプールの提示条件が「全権を委ねる」ものではなかったことでウィガンの監督にとどまったという。指揮官としての権限を制限されるからといって、ビッグクラブからの誘いを惜しげもなく断るのは難しい。このエピソードからも、マルティネスがサッカーに関して一本筋の通った哲学を持っていることが分かる。
リヴァプールの誘いを蹴った直後の昨シーズン、ウィガンはプレミアリーグからの降格を余儀なくされたものの、FAカップでタイトル獲得の偉業を達成。マルティネスは満を持してエヴァートンに引き抜かれた。
香川はワールドクラス、特に技術は素晴らしい
マルティネスに会ったのは2月4日、14-15シーズンからエヴァートンのユニフォームサプライヤーとなるアンブロのマンチェスター本社だった。
まず初めに聞いたのは、1月の移籍マーケットでクラブが本田圭佑の獲得に動いたかどうか。CSKAモスクワのエフゲニ・ギネル会長の言葉どおり「エヴァートンからもオファーがあった」のか、その真相を確かめるためだ。
しかしこの質問に関してはそっけなく「ノー」と一言。その一方で、「今回のイタリア移籍は彼の全盛期を捧げるもの。その創造性をミランでも発揮できるはずだ」と話し、今後の活躍に期待した。
香川に関する質問をぶつけたのはこの直後。するとマルティネスの表情は目に見えて緩み、冒頭で紹介した答えが返ってきたのだ。
私は追い打ちを掛けるように聞いた。「きっとあなた好みの選手だろうと思っていた。あなたの目指すスタイルなら、香川も本領を発揮できるのでは?」と。
ここからは、マルティネスの言葉をそのまま連ねる。
「多分、私のスタイルとの相性はいいだろうね。香川は現在欧州で経験を積んでいる日本人の中心にいる選手。日本代表の才能溢れる世代でも最も象徴的な選手だ。イングランドだけでなくドイツでの経験もあって、日本人の中では最も名の知れた選手。自分のチームに所属していない選手についてコメントするのは難しいし、私のチームの選手について他の監督が何かを言うのも好まないが、プレーを見れば彼がワールドクラスの選手、ワールドクラスの才能の持ち主だということはすぐに分かる。だからこそ、(マンチェスター)ユナイテッドは多額の移籍金を払って獲得したわけだ。特に技術は素晴らしい。世界でもトップクラスのスキルを持っている」
マルティネスの言葉は弾んでいた。特に「ワールドクラスの選手、ワールドクラスの才能の持ち主」というフレーズを語る際は実に流れるような口調だった。それだけでマルティネスの香川に対する評価の高さが伝わってくる。
ちなみにイングランドで「ワールドクラス」という表現は「世界のどのサッカー、どのチームに入っても通用する」という意味で捉えられ、選手にとっては最高の褒め言葉になる。
香川への賛辞を惜しまなかったマルティネス監督が、マンチェスター・Uで不遇の時を過ごす同選手に言及。また、香川獲得の意思は? 続きは、発売中のワールドサッカーキング2014年4月号でチェック!