during the Serie A match between AC Milan and FC Internazionale Milano at Stadio Giuseppe Meazza on November 23, 2014 in Milan, Italy.
ようやく異なる色のユニフォームを着た日本人がピッチに立つダービーが実現した。しかも“ミラノ・ダービー”とあってサン・シーロは約8万人のファンで埋め尽くされ、チケットも久々の完売となった。もちろん、インテルにロベルト・マンチーニ監督が戻ってきたことも影響している。ミラニスタは監督一年目のフィリッポ・インザーギに対する期待と情熱を失ってはいない。
キックオフでピッチに立っていたのはインテルの長友祐都だけだった。先日の代表招集リストから外れて、イタリアに残りコンディション調整がゆっくりできたはずだ。ポジティブな結果につながる予感はしていた。一方のミランの本田圭佑は今シーズン初のベンチスタートとなった。代表ウィークでの移動に二試合フル出場。さすがのインザーギ監督もリザーブを決めた。
インテルの2トップはマウロ・イカルディとロドリゴ・パラシオ、トップ下にマテオ・コヴァチッチが入った。長友は右サイドバックがマンチーニ監督から与えられた役割だ。この日はコヴァチッチが新しいポジションに慣れておらず、イマイチの出来だった。イカルディは後半、長友が基点となったプレーでシュートをバーに当てて悔しがった。長友自体は8本のクロスを上げ、よく走っていた。インテルはパスがよく回り、たった1週間でマンチーニ効果が表れていた。
1-1となった後半、ついに本田が出場することになった。「ウォーミングアップの時から普段のサン・シーロとは違うと感じていた」とダービーの独特の雰囲気を感じ取っていた。右サイドでマイケル・エッシェンからのパスを受けてカットインからゴールを狙った。コンディション的にはまだ疲れは残っている違いない。しかし「マエの選手は“惜しい”だけじゃ意味はない。しかし放たないと出られない」と素直な心境を語った。長友については「サイドバックとして守備に専念しているものの上がった時に結果を出す。我々にとって危険な存在」と要注意プレーヤーだと認めた。
また長友も本田の途中出場について「いやな時間帯に出てきた。最悪。彼はキープ力も高いし体も強い。改めて敵にしていやな選手だと思った」と、ディフェンダーとしてのコメントがあった。試合はドローでホイッスル。グラウンドでは自然に二人が抱き合い、健闘を称えた。国を背負っては共に勝利を目指し、クラブではライバルチームでボールを競り合う。日本のサッカー史にまた新しい物語が加わった。
この日、何よりもうれしかったのは長友に本来の明るさが戻ったことだ。ミックスゾーンでの彼はブラジル・ワールドカップ後、苦しんでいた様子だった。「夢や目標が見えなくなってパフォーマンスが出せなかった。心の中が重かった。サッカーが楽しくなかった。このまま続けていいのか」と悩んでいたという。今シーズンはけがやヴァルテル・マッツアーリ前監督解任とネガティブなことが続いた。カリアリ戦での退場処分などもあった。それは本人もどこかスッキリしなかったのだろう。しかし「心の中の整理ができた。今はサッカーが楽しい」と話す表情は、完全にふっきれたものだった。この“ミラノ・ダービー”が二人のサッカー人生にとって、新たなスタートとなった試合であると願いたい。