オーストラリアとの親善試合を2-1と勝利し、来年1月に行われるアジアカップのホスト国を破ったことで、日本が精神的に優位に立ったことは間違いない。その代表戦で輝いた遠藤保仁と今野泰幸が所属クラブのガンバ大阪に戻り、J1優勝を争う浦和レッズとの頂上決戦で、彼らがどのような活躍をするかを見極めたく、埼玉スタジアムまでやってきた。
この日の撮影は、クライアントからG大阪の選手を撮ってほしいという要望もあったのだが、もし浦和が勝てばリーグ優勝が決まるので、浦和の攻撃も撮っておきたい。散々迷った挙句、前半はG大阪の攻撃を撮り、試合の展開によっては後半、浦和の攻撃を撮ることに決めた。
浦和のゴール裏に陣取りながら、埼玉スタジアムを埋めた真っ赤なサポーターを見て、日本のJリーグもW杯で使用したスタジアムを満員にするほど成長したのだと感嘆した。ポジションを最初の15分はメインスタンド側のゴール裏、次の15分はバックスタンド側のゴール裏、そして最後の15分は、バックスタンドのタッチライン側にと、G大阪の全てのフィールド選手を撮れるように移動した。
前半は、ほぼ五分五分の内容。G大阪の司令塔である遠藤にはボールがよく集まっていたが、代表2連戦の疲れからか、ややパスの精度が欠けている。浦和がやや押し気味に試合を進めるのだが、最後の部分の精度が甘い。チャンスをシュートでなかなか終われない。前半はスコアレスだった。後半の最初15分から20分を、ポジションを変更せず、バックスタンド側のタッチラインから浦和の攻撃を撮りながら、G大阪のゴールキーバーとディフェンスラインを撮ることにした。・
浦和の攻勢が続くがG大阪が耐えている。アウェーでありながら、何とか自分たちのスタイルを貫いている。私は、このまま浦和の攻撃を撮るか、あるいは、反対のゴール裏に移動してG大阪の攻撃を撮るか、迷っていた。
しかし、アウェーでありながら、相手の攻撃を凌ぎながら耐えているG大阪にチャンスが訪れるのではないかと感じて、時計の針が残り30分を指したところで、反対側のゴール裏に移動した。G大阪のサポーターの前にあたる、メインスタンド側のゴール裏にポジションを取る。もし、G大阪がゴールを決めれば、自分たちのサポーターの前で大喜びするだろう。
試合はどちらが勝ってもおかしくないほど拮抗していた。だが、その中でも落ち着いてプレーし、躍動していたのは今野泰幸だった。先日のオーストラリア戦のようにチャンスにはドリブル、クロスを上げ、シュートも放つ。
ベテランとは思えないほど、運動量も多く躍動感もある。
残り時間20分になって長谷川健太監督が動いた。この日、ボール離れが悪かった宇佐美貴史に代えてリンス。残り15分になって大森晃太郎に代えて倉田秋を投入。そして残り10分を切ってパトリックに代えて佐藤晃大と次々にカードを切った。
チャンスをもらいながら、潰すほうが多かったリンスが残り2分、中央に切れ込んで相手ディフェンスを2人引きつけ、そこに出来たスペースに走りこんで来た佐藤に預けた。佐藤は、GK西川周作だけになったゴールにボールを流し込むだけだった。
先制点を奪われた浦和が、同点に追いつこうと必死に前がかりになったところをさらに
追い討ちをかけるように、倉田がダメ押しのゴールをアディショナルタイムで奪う。今野がいぶし銀のように輝いたこの試合、選手以上に渋い輝きを見せたのは、交代した選手が2ゴールを奪う采配をした長谷川監督だった。
これで、J1の優勝争いは浦和、G大阪、鹿島、鳥栖の4チームに優勝の可能性があるという最後まで目が離せない戦いになった。