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バルセロナの強さの秘密を解き明かす超戦術論 最終回「概念の革命」

2011.12.18

 世界一のタイトル獲得を目指すバルセロナが、ついに来日した。直前のクラシコではレアル・マドリーに3−1で逆転勝利し、改めてその強さを世界に知らしめた。究極形とも言える彼らのフットボールは何が優れて、何が違うのか。ペップ・バルサの“真の戦術”を読み解く。(第9回/全9回)

 もともとパワープレー的な放り込みや、一か八かのアーリークロスをしないバルサだが、イブラヒモヴィッチが去り、ビージャを獲得して以後、クロスは完全に「入れる」のではなく「合わせる」ものとして認識されるようになった。
 
 グアルディオラが監督になってからもアフェライやアレクシス・サンチェスといったウインガーを獲得しているように、サイド突破できる選手の需要そのものは消滅していないが、「突破してクロス」という部分の質は追求されてきた。
 
 現在のバルサの前線にはメッシ、ビージャ、ペドロ、中盤にはチャビ、イニエスタ、セスク、チアーゴ・アルカンタラといった小柄な選手が揃うため、相手が「セット」している状態で高い軌道のクロスを入れてもゴールが決まらないどころか、競り合いにもならない。よって、バルサのサイド攻撃というのは、「クロス」というよりも「サイドからのラストパス」という崩しのイメージが強くなっている。
 
 アウヴェス、アビダルらのサイドバックの攻撃参加のランニングラインにも変化が見られる。アウヴェスはセビージャ在籍時代からもそうだったが、前方のウイングがライン際に張っている時にはサイドから回りこむのではなく、ダイアゴナル気味に斜めに入っていく。逆にビージャ、ペドロが中央寄りのポジションでボールを受けて、サイドバックの直線的なオーバーラップのためのコースができる場合もあるが、直線的なラインでワンパターン化することはない。
 

 
 バルサもサイド攻撃を重視しており、ピッチをワイドに使ったサッカーを目指しているが、サイドを突破するためのサイド攻撃は存在しない。最終的にセンターで決定機を作るため、そして“深み”を取るための「ボールの一時的な保管場所」として、サイドが用いられている。
 
 サイドバックについても3-4-3のシステムで試されているのは“ウイングバック化”であり、バルサのサッカーがこのまま順調に進化を続けていけば、近い将来、「センターバック」、「サイドバック」というポジションの概念が消滅することになるのではないだろうか。
 
 Mトップの項でも言及したが、前線のサイドにはトップの選手が入るようになっており、ウイングという概念が今後どのようになるのかにも注目している。その上で鍵を握るのはサンチェスで、彼がサイドで圧倒的な力を発揮して「ウイング」を残すのか、それとも今のバルサの戦術に合わせる形でトップの選手に変化していくのか。戦術史においては大きなパラダイムシフトとなる可能性もある。

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