課題を浮き彫りにするかのような“終戦”だった。インテルとのミラノ・ダービーに2-4で敗れたミラン。同時刻に開催されたカリアリ戦でユヴェントスが2−0の勝利を収めたため、1節を残し、ユーヴェの9季ぶり28度目のスクデット獲得が決定した。
ダービーでの2得点はイブラヒモビッチがマーク。セリエＡ連覇に向け、ユヴェントスと激しいデッドヒートを繰り広げたミランは、リーグトップの72ゴールをたたき出しているが、そのうち28ゴールがイブラヒモビッチ一人によるものであり、ＭＦのノチェリーノがチーム2位の10ゴールを記録していることを踏まえれば、イブラヒモヴィッチを除くＦＷ陣の決定力不足は明らか。故障者が続出した今シーズン、ゴール、アシスト、潰れ役まで前線の仕事をオールラウンドにこなす絶対的エースへの負担は膨れ上がる一方だ。
“イブラ依存症”、彼の負担を軽減できるパートナーの獲得はこの夏の必至事項であり、再び欧州の頂点を狙うべく、ガッリアーニ副会長は大舞台で活躍が期待できるビッグネームの補強を画策している。その獲得候補とはずばり、マンチェスター・シティの“2大問題児”であるテベスとバロテッリだ。
とりわけテベスに対しては、ガッリアーニがいまだ熱視線を送り続けている。今年1月に決まり掛けていたテベスのミラン移籍はパトのパリ・サンジェルマン行きが直前で決裂したために白紙となったが、3月下旬のチェルシー戦を観戦したガッリアーニは、「およそ半年ぶりの実戦復帰にもかかわらず、ピッチで誰より荒々しく戦っていた。テベスは私を夢中にさせる」と公の場でラブコールを送っている。今もテベスがミランの獲得リストの最上位に記載されていることは間違いない。無論、再オファーとなれば1月の交渉実績がモノを言ってくるだろう。
もう一人の候補者のバロテッリはプレミアリーグの首位争いの原動力として活躍していたが、毎月のように起こすルール違反や事故、女性関連の話題が表面化。マンチーニ監督やチームメートとの口論も絶えず、21歳となった今も反抗期は真っ盛りだ。ただし、イタリア代表監督のプランデッリが今夏のユーロでのレギュラー起用を示唆しているように、ＦＷとしての実力に疑いの余地はない。本人も少年時代からミラニスタであることを公言しており、相思相愛の関係にあるのは周知の事実だ。
■シティが悪童2人を引き留める理由はない
度重なる問題行動に愛想を尽かしたシティが、この2人を何が何でも引き留める理由はない。4月のアーセナル戦での退場に腹を立てたマンチーニ監督から「もうここでプレーしなくてもいい」と三行半を突きつけられたバロテッリには、彼の呼び戻しを画策している古巣インテルと獲得を競合している。テベスに至っても、今夏に相応のオファーが届けばクラブを離れるという確約を得ているという。
大富豪シルヴィオ・ベルルスコーニが名誉会長職に復帰したとはいえ、ミランの財布のひもは相変わらず固い。冬に続き、今夏に再びパリ・サンジェルマンがパトに巨額オファーを提示してきた場合、負傷が多すぎる彼を今度こそ放出するだろう。さらにロビーニョには、創立100周年を迎える古巣サントスへの復帰話も現実味を帯びている。1月に加入したマキシ・ロペスは目立った活躍を見せられないままレンタル元のカターニアへ返却される可能性が高く、心臓の病から復帰したばかりのカッサーノや19歳のエル・シャーラウィに過度な期待を寄せることはできない。結局、ミランのＦＷ陣にはイブラヒモヴィッチ以外に頼れる存在がいないのだ。
イブラヒモヴィッチは1月のマーケット期間中に「一流選手なら誰が来てもプレーを楽にしてくれる。それがテベスだったら、俺は喜んでアシストする」と歓迎の意向を示した一方で、インテル時代のチームメートだったバロテッリに対しては「ミランにアイツの居場所はない」と冷たく一蹴している。
テベスか、バロテッリか、それともーー。エースの意向を尊重するのであれば選択肢は前者となるが、いずれにせよ、“イブラ依存症”からの脱却が、ミランにとって今夏最大のミッションであることは間違いない。
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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。
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