12月6日、第8回 SURUGA bank CUP フットサルフェスタがスルガ銀行フットサルパークにて行われ、レディースチームによるフットサル大会と豪華ゲスト陣のトークショーが実施された。
トークショーの第1部では、サッカー漫画『キャプテン翼』の作者、高橋陽一先生の公開インタビューが行われ、『キャプテン翼』と静岡のつながりなどを語った。第2部では静岡県出身の元日本代表FW武田修宏、同FW松原良香、同MF平野孝が登場。サッカー番組でおなじみのタレント平畠啓史さんがMCを務める中、静岡のサッカーについて熱い想いを述べた。
第1部:高橋陽一先生の公開インタビュー
――『キャプテン翼』の舞台を静岡にしたのはなぜですか?
高橋陽一(以下、高橋) 翼の連載が始まったのは1981年で、当時はまだJリーグがなく、日本リーグはありましたけど、高校サッカーが人気でした。その中でも、静岡の高校はすごく強くて。
――当時、強かった学校と言うと?
高橋 清水商業高校(現清水桜が丘高校)、清水東高校、静岡学園高校、東海大学第一高校(現東海大学付属静岡翔洋高校)あたりですね。翼たちは小学生なんですけど、全国少年大会も当時は清水FCが本当に強かったので、日本の中のブラジルみたいなイメージで東京から見ていました。
――静岡の選手はこういう選手が多い、というイメージはありますか?
高橋 日本代表の半分くらいが静岡県出身みたいな頃もありましたよね。その当時から、静岡は本当にいい選手がたくさん出てくるというイメージがあります。でも、最近は代表選手も減ってきているように感じるので、どうしてなのかなと。全国的にレベルアップしてきたとも言えますけど。
――今後、先生が挑戦していきたいことはありますか?
高橋 葛飾区に南葛SCを立ちあげて、今年、東京都社会人3部リーグで優勝して、来季は2部に上がります。Jリーグ入りを目指して頑張っていきます。
第2部:平畠啓史、武田修宏、松原良香、平野孝トークショー
ジュビロが昇格して、本当にホッとしました(平野)
平畠啓史(以下、平畠) 今シーズン、ジュビロ磐田がJ1に昇格できて良かったですね。
平野孝(以下、平野) 本当にホッとしましたね。ずっとドキドキ、ハラハラしていました。名波浩さんは僕が高校1年生の時に3年生だった大先輩なので。
平畠 今年、名波監督はひざを傷めて松葉杖を突いている時期もありましたけど、心配だったんじゃないですか?
平野 松葉杖もそうですけど、喉を痛めて入院もしていましたからね。
松原良香(以下、松原) 満身創痍ですね。
平野 悪い気を全部もらったと言っていました。
平畠 でもそのおかげで、最後は劇的な展開でしたね。
平野 名波監督の素晴らしいところは、現状に満足してないところ。ここからスタートだと言っているのがいいですね。
平畠 J1昇格が決まってから連絡を取ったりしたのですか?
平野 メールを送ったんですけど、名波さんはメールを返さない人で、ショートメールを受け取るだけ。LINEもやらないんです。だから、70文字しか打てないのでシンプルに、「昇格おめでとうございます。まずは休んでください」と送って、のちに会って聞いたら、メールが300件以上来て、なかなか読むのに苦労したと言っていました。
武田修宏(以下、武田) 来年、ジュビロのコーチになったらどうなの?
平野 僕ですか? 鈴木秀人がいるので大丈夫です(笑) 。
武田 僕は高校1年生の時、3年生に長谷川健太さんがいました。健太さんは新聞の記事とかをよくチェックしているので、この前も「何で(サンフレッチェ)広島と浦和(レッズ)のサッカーがいいって言っているんだ」と連絡がきました。
平畠 何で「ガンバ大阪のサッカーがいい」って言わないんだと。そういえば、武田さんはジュビロ時代、サイドバックをやっていませんでした?
武田 やっていましたね。僕、ずっとセンターFWとしてヴェルディ(川崎/現東京ヴェルディ)で活躍していたのに、ジュビロでは右サイドバックで使われて、サポーターから「武田、しっかりやれ」って野次られたんですよ。僕からしたら、「何で右サイドバックで使うんだって監督にブーイングしてくれよ」と思いながらやっていましたけど(笑)。
平野 当時のFWは誰ですか?
武田 (サルヴァトーレ・)スキラッチと中山雅史、中盤にはドゥンガがいて。僕とドゥンガが渋谷に飲みに行ったことが週刊誌に載ったのは、その頃です(笑)。それが今やブラジル代表の監督ですからね。
松原 僕、ドゥンガに日本代表の監督をやってもらいたかったんですよ。2014年のブラジル・ワールドカップの時に、ブラジル代表監督になる前に霜田さん(正浩/日本サッカー協会強化担当技術委員長)に直接電話をして、「ドゥンガを監督にどうですか?」と言ったんですけど、もう後任が決まっていたみたいで却下されました(笑)。
武田 現役時代の仲間が今では監督をやっているんですよね。ラモン・ディアスもパラグアイ代表の監督をやっていますし。
平畠 だんだんJリーグの監督も若返っていますよね。
武田 今回、清水からオファーが来るかなと思っていたんですけど、全くなかったです(笑)。あと、同世代の伊達(倫央)さんが強化部長に就任したので、同い年で中学から静岡県選抜として一緒だった江尻(篤彦)に「お前、監督やれよ」と言ったんですけど。
平畠 もし江尻さんが監督になっていたら?
武田 江尻が監督になったら俺もコーチとして入って、中山も連れていこうって。清水東、清水商業、藤枝東ってそろったら、静岡の人たちは応援してくれるはずなので(笑)。
平畠 面白そうですよね。当時のつながりって今でもあるんですか?
平野 もちろんありますよ。特に静岡県出身の指導者は多いので、クラブハウスに行くと先輩や同級生がいて、僕はやりやすいです。
松原 いつまでも一緒ですからね。僕は小さい頃から武田さんを見てきましたし、たかぼうはずっと選抜などで一緒でしたし。
平畠 Jリーグも、もっとこの世代の人たちが監督になってほしいですね。
武田 僕はよく日本代表などの試合見ながら長谷川健太さんや森保(一/広島監督)と電話をして、「このサッカー、どう思う?」と話しています。そうすると、いろいろ言うから面白いなって。
平野 どんなことを言うんですか?
武田 ここでは言えませんよ(笑)。彼らはスポンサーのことがあるから、言えないことが多いんです。それを、僕が替わりに伝えていければいいなと思っています。
エスパルスは誰が強くするのか!(松原)
平畠 静岡のサッカーを強くするにはどうしたらいいか。良香さんは甥っ子さんがエスパルスの選手ですからね。
松原 エスパルスはJ1でチャンピオンにならなきゃいけない。もちろんジュビロもそう。ジュビロは名波さんが強くしてくれる。エスパルスは誰が強くするのか!
武田 お前だよ!(笑)。
平野 今シーズンのエスパルスは非常に残念でした。やっぱり静岡県出身の41歳男性として、本当に悔しかったです。実家に帰っても親父もイライラしていますし、隣の親父さんも俺の顔を見るなりエスパルスの話をする。それぐらい、地域に浸透しているクラブなので、やっぱり頑張ってほしいと思う。これだけ静岡県出身のいい指導者がいるので、やっぱり育成のところから改めて見つめ直して、土台を作ることで今後強くなれるんじゃないのかなと思います。
平畠 来年J1に上げることはもちろんですけど、もっと根本的なところから作っていくと。
平野 土台がしっかりしていないと、また今回のようにJ2に落ちてしまうと思います。せめて優勝はできなくても、常に優勝争いをする、そういう基盤を作っていかなければいけないですね。
松原 1996年のアトランタオリンピックの時、メンバー18人中、エスパルスから選ばれたのは僕とテル(伊東輝悦)と白井(博幸)の3人だったんですよ。あれから約20年経っています。エスパルスは、本来であれば北川航也や水谷拓磨といったユースから上がった選手が、トップチームに入った時にレギュラーにならなければいけない。もっと言えば、代表チームに絡まなきゃいけない。ただトップに上げればいいという考え方で育成をするのではなくて、選手をどうやって強くするか。一つの方法として、競争させることがあります。ライバルを作ると自然と強くなりますし、プロだったらそれぐらいの厳しい気持ちでやらないと絶対に強くならない。
平畠 平野さんも良香さんも熱く語ってくれましたけど、武田さんはどうですか?
武田 やっぱり広島の真似をすればいいんじゃないの(笑)。冗談ではなく、広島はあれだけ主力選手がいなくなっても、抜けたところをしっかりと育成しているんです。森保監督は5年を目処に長期のビジョンで今のチームを作ってきたんですよ。広島から出たい選手は出ていい、その代わり質のいい選手を取ってきてと、強化担当と毎日一緒に食事をしたりして密着しながらやってきたんです。森保は3年前のACLの時に、若手を使って批判されました。でも、「このチームはお金がないから、若手を育成するしかない」と答えて、そして今のチームがある。清水は去年、失点がリーグで2番目に多かったんですけど、外国人FWを2人補強して、最後に角田(誠)を取りましたよね。チームの希望と強化部が獲ってくる選手のバランスが取れていなかったと思います。もっと現場とフロントがコミュニケーションを取ることが大事だと思いますね。
平畠 意外と真面目な答えでびっくりしました。良香さんは現場とフロントの関係について、どう考えていますか?
松原 日本の場合は海外と仕組みが違いますよね。でも、静岡の場合はいい選手がたくさん出てくるのに、育ってないんです。スペインのアスレティック・ビルバオなんかは、地元の選手が育って選手になって、その後は指導者になったりフロントに入ったりと、ほぼ地元の選手たちで完結して、プラスアルファで外国籍選手がいる、という形ですよね。
武田 「サッカー王国静岡」って言いますけど、今は他も強いですし、結果もなかなか出てないですから。この前、金沢に行ったけどいい選手がいっぱいいて、僕はもう、サッカー王国静岡という感じではないと思ったよね。
平畠 昔は静岡が抜きん出ていたけど、他の都道府県も頑張っていますもんね。
松原 南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、とサッカーってそれぞれ違いますよね。それって歴史や気候、文化が反映されているんですよ。静岡は気候もいい、雪も降らない、東京から近い。だからいい選手が育って当たり前なんですよ。クラブとしてしっかりと目指すサッカーを掲げて、これまでの歴史と新しいものを融合させてチーム作りを行っていくことが大事だと思いますね。
平畠 静岡といえば、沼津にもチーム(アスルクラロ沼津)ができましたね。
武田 中山が現役復帰して観客も増えましたよね。来年もプレーしたいと言ってましたよ。西部、中部、東部はやっぱりライバル関係ですから、切磋琢磨していけたらいいですね。
平畠 それぞれのチームが強くなっていったらすごい面白くなるんじゃないですか。
平野 いろんなダービーが見れますもんね。
平畠 10年後くらいに静岡のチームがJリーグのトップを争っている可能性もありますからね。
武田 本当にそうですよ。最近はラグビーの五郎丸(歩)さんの方が人気があるから、サッカーも頑張らないと。
平畠 エスパルスとジュビロも一度、チャンピオンシップで戦っていますもんね。ああいうのを見たいですね。
平野 あれは興奮したね! ああいうの、次はいつ見れるんでしょうね。
僕がやりたいサッカーは堅守速攻(武田)
武田 僕は今年のチャンピオンシップを見ても、超満員のスタジアムで同じドーハ世代の森保と健太さんが監督をやってるんだという見方をしていました。
平畠 武田さんはいつバラエティーからテクニカルエリアに舞台を移すんですか?
武田 来年にでもオファーがあれば行きたいと思っていますよ。監督は短いと1年くらいでクビになってしまいますから、リスクは大きいですよね。でも、やってみたいです。僕がやりたいサッカーは勝つサッカーです。堅守速攻で、しっかり守ってセットプレーで勝つ。
平野 チームで言うと、どこのような感じですか?
武田 同級生の森下仁之が監督をやっているツエーゲン金沢とか、カマタマーレ讃岐の北野誠監督も同級生ですし、どちらもしっかり守るサッカーですよね。長谷川健太さんには、「FW出身の監督を見てみろよ。FWは結果がすべてだから、全員勝つサッカーをするぞ。お前も絶対そうなるよ」と言われました。
平畠 平野さんはどういうサッカーをしたいですか?
平野 僕は全く想像もつかないですね。
松原 監督をやってみたいとは思っているの?
平野 やってみたいとは思いますけど、まだライセンスも取ってないですし、時間がかかりますね。
平畠 良香さんはもう実際に監督をやっていますが、イメージと全然違うものですか?
松原 全然違いますね。あれはまたやってみたくなる。でもやっぱり、監督は難しいですね。選手が持っている能力を最大限に引き出すのが仕事ですから、自分の理想を押しつけすぎてもダメですし、自分が思っていることと違うことを言う時もあり、人によって言い方を変える時もある。だから僕、健太さんってすごいと思うんです。
武田 健太さん、清水の時は若手が多かったからガンガン言ってたけど、ガンバに行ったら遠藤(保仁)も今野(泰幸)もいるから何も言わないですもんね。
松原 ピッチ上っていつも状況が変わるんです。失点した、追加点を入れられた、と。その時にどう判断して、決断するか。練習でやってないことは基本的にやらないけど、でも思いきってやることあるし、そこの判断は難しいですね。
武田 チャンピオンシップの広島で言うと、浅野(拓磨)を出すタイミングとかね。監督からそういう話を聞きながら試合を見ていると、面白そうだなと思います。
平畠 “武田監督”をぜひ見てみたいですね。
なお、同日に開催されたレディース・フットサル大会は、高橋陽一先生が監督を務める『南葛シューターズ』を含む6チームが参加。4勝1分けの好成績を収めた『ドラえもんJAPAN』が優勝を果たした。
そして、イベントの最後には、優勝チームの『ドラえもんJAPAN』とゲスト陣+アスルクラロ沼津の選手によるエキシビジョンマッチも開催。武田修宏が現役時代と変わらぬ決定力の高さを発揮して活躍し、5-4でゲストチームが勝利した。