FOLLOW US

リオ五輪出場権獲得に貢献した“鹿島の若き三銃士”…三者三様のあり方と素顔に迫る

2016.02.20

dE1wT5LKHS96LWf1455875834_1455875854
[写真]=長田洋平/アフロスポーツ

 宿敵である韓国代表との一戦で劇的な逆転勝利を収め、AFC U-23選手権カタール2016で優勝を果たしたU-23日本代表。アジアの舞台で結果を残すことができず、ことごとく世界大会への道を閉ざされてきた世代のリオデジャネイロ五輪出場権獲得と大会制覇は、国内でも大きな話題を読んだ。“谷間の世代”と揶揄された彼らは、いかにして世界への切符をつかみ、アジアの頂点に輝いたのか。真相を探るべく、『サッカーキング』は『いばキラTV』との共同企画を実施。U-23日本代表の快挙達成に大きく貢献した3選手に、独占インタビューを敢行した。

 2016年2月11日、快晴の鹿島アントラーズ練習場。カタールの激闘から宮崎キャンプを経て、ホームタウンに帰ってきた櫛引政敏植田直通三竿健斗の3人は、チームメイトに混ざって汗をかいていた。

 先月、彼らはカタールで行われたAFC U-23選手権カタール2016に、U-23日本代表の一員として参加をしていた。3位以内のチームにリオデジャネイロ五輪出場権が与えられる重要な大会において、グループリーグを3戦全勝で1位通過したU-23日本代表は、準々決勝でイランに延長戦の末に3-0で勝利し、続く準決勝ではイラクとの120分間に及ぶ激闘を制して、見事にリオ五輪への切符をつかみ取った。そして、決勝ではライバルである韓国を相手に、一時は2点のリードを許したものの、後半に試合をひっくり返し、3-2で逆転勝利。劇的な展開でアジアの頂点に登りつめた。

 この激闘の中で、3人のアントラーズ戦士は大きな存在感を放った。櫛引は正GKとして好セーブを連発。特に準々決勝のイラン戦では、決定的なピンチを2度のスーパーセーブで凌ぐなど、神懸かり的なプレーを見せた。準決勝のイラク戦でも、失点を許して落ち込むチームメイトを鼓舞し、精神面においてもチームを支える活躍を見せた。植田はディフェンス陣の柱として、櫛引とともに6試合中5試合にフル出場した。空中戦では無類の強さを発揮し、対戦相手のロングボールをシャットアウト。対人では屈強なフィジカルを駆使し、相手の自由を奪った。また、北朝鮮戦における彼のゴールは、大会を振り返る上で欠かせない要素の一つ。緊張する大会初戦で、多くの選手の動きが固く、相手の出足に苦しむ中、セットプレーから貴重な決勝点をマーク。難しい初戦を制したことが、その後の快進撃につながった。

 チーム最年少だった三竿は、出場試合数こそグループリーグ第3戦サウジアラビア戦の1試合にとどまったが、ムードメーカーとしてオフ・ザ・ピッチでチームを盛り立てた。出番が少なく悔しい思いもあったはずだが、そういった素振りを一切見せずにフォア・ザ・チームの姿勢を貫いた。こうした彼の姿は、チームメイトのモチベーションを高め、優勝の一つの原動力となった。

 それぞれに存在感を発揮した3人が、今季から鹿島アントラーズでともに戦うことになった。櫛引は清水エスパルスから期限付き移籍で、三竿は東京ヴェルディから完全移籍で、鹿島にやってきた。U-23日本代表のチームメイトとして、深い絆を生み出した3人が、鹿島でさらにその絆を深める。今回の対談では、その絆を垣間見ることができた。彼らの性格を一言で表すと、櫛引はマイペース、植田はシャイ、三竿はフランクといったところか。

「普段はぼーっとしていることが多い」と語る櫛引は、ピッチに立てば人が変わったようにスイッチが入る。このオンとオフの差も彼の魅力の一つで、カタールの宿舎ではどちらかというと『自由』な雰囲気をチームにもたらしていた。

 植田は、中学校時代にテコンドーで世界大会に出場するなど、常に『闘い』に身を置く、『武士道』を持つ選手。シャイだが、闘争本能と仲間意識が強く、それが今大会での言動にも如実に現れていた。カタールから帰国した羽田空港で、「物足りないです」という彼の言葉を聞き、「何が物足りなかったの?」と問いかけると、「空中戦で相手が思ったよりもこなくて」という答えが返ってきた。これは闘争本能で相手を凌駕してきた表れでもある発言だったと言える。仲間意識という面では、北朝鮮戦での得点後に、彼がベンチに向かって一直線に走っていった光景が浮かぶ。チーム全員で喜びを分かち合ったこの行動は、「ベンチも含めて、『みんなで戦っているんだ』ということを示したかった」という彼の熱い想いが自然と身体を動かしたもの。そのゴールセレブレーションは以降、得点を決めたすべての選手が行い、チームの一体感を大きくさせていった。

 三竿は「僕のピッチ外の活躍が優勝につながったと思う」と語る。食事やミーティングの際の一発芸など、彼の明るいキャラクターがチームを盛り上げたことは、新聞報道などでも有名な話だ。前述したように、サッカー選手としての悔しさを押し殺してでも、チームの勝利を求めたメンタリティーは称賛に値する。もちろん、プレーもハイレベルであり、広い視野と正確な長短のパスは、鹿島でも確実に役立つはず。アントラーズサポーターには十分に期待をしてもらいたい、将来のアントラーズを支える選手の候補であることは間違いない。

 この3人がそれぞれの個性を出してくれた今回の対談。まじめな話、ちょっとズレた話、思い出話に、将来の話――。アントラーズだけでなく、日本の未来を支えていくであろう彼らの言葉を、ぜひ聞いていただきたい。

文=安藤隆人

■当企画に出演した3選手のプロフィールはこちら
GK 1 櫛引政敏 選手
DF 23 植田直通 選手
MF 20 三竿健斗 選手

SHARE

RANKING今、読まれている記事

  • Daily

  • Weekly

  • Monthly

SOCCERKING VIDEO