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本田圭佑スペシャルインタビュー「僕は世界一になれると確信している」

2012.09.12

サムライサッカーキング Oct.2012 掲載]
 2010年南アフリカW杯は、ベスト16という望外の結果を残した。1998年に初めてW杯のピッチに立ってから、2002年の熱狂、2006年の惨敗を経て、日本サッカーは着実にステップアップしている。代表選手の半数以上が海外クラブに所属し、欧州のビッグクラブもいまや遠い存在ではない。しかし、それで満足だろうか? 同じ土俵に立っただけではないか? 僕たちは何かを成し遂げたのか? 日本サッカーが真の意味で世界のトップになるために。日本サッカーを変える孤高のサムライの、魂の咆哮に耳を傾けろ。

本田圭佑
インタビュー岩本義弘 写真=新井賢一

──本田選手は常々、「目標はワールドカップ優勝」と言っています。その目標のために、より高いレベルに日本代表がたどり着くためには、何が必要だと考えていますか?

本田圭佑 まずは、選手それぞれが、それぞれの器を広げることですね。それぞれが器を大きくすることで、僕は本気で世界一になれると確信しています。だから、技術論じゃないです。人として、ということなので、幅は広いですよね。だから、すごい抽象的な言い方になりますけど、抽象的なものが重要になってくると。

──こういう話は、日本代表のチームメートともしているんですか? 以前、長友(佑都)選手や岡崎(慎司)選手とは、「どうしたらW杯で優勝できるか」という話をしていると、口にしていましたが。

本田圭佑 まあね……難しいんだよな……。ユウト(長友)もガキやからなあ、ホンマに。オカ(岡崎)もそんなこと何も考えてないしなあ。

──それだけ話していても、難しいことなんですね。

本田圭佑 いや、僕が求めるハードルが高いんで。世界一の器を求めているんで。もちろん、オカにしてもユウトにしても、日本レベルで見たら立派な大人ですよ。自分をしっかりブランドにしていて、足一本で日本代表まで上り詰めて、その中心にいるわけですから。それは日本人から見たら、憧れの的と言っても過言ではないでしょう。でも、僕が求めているのは世界一ですから。ユウトにはインテルのヤツらに負けてもらっては困るんですよ。

──むしろ、インテルを引っ張るぐらいじゃないと困るわけですね。

本田圭佑 そうですよ。オカだってシュトゥットガルトの、あの個性の強いヤツらを引っ張っていってもらわな困るんです。シンジに関しても一緒ですよ。英語がしゃべれないとかいって、イジられているようじゃダメなんですよ。たとえ、マンチェスター・ユナイテッドだとしても。

──そういうことも含めて、それぞれが、それぞれのクラブで、一番の存在感を出していかなきゃダメだと。

本田圭佑 そうです。もちろんね、それぞれのキャラクターがあるから、俺みたいに引っ張れとは言わないですよ。スタイルが違うんで。ただ一人の男として、やっぱり自立して、その自立心っていうものを磨いていく。それぞれが、もっとカッコいい男になった時に、その男たちが一つの集団になった時に、それぞれの技術論が、そこで初めて戦術になり、結果的に、すごい集団になると思うんです。

──器がより重要になるのは、クラブではなく、代表だからというのもありますよね。クラブチームだったら、日々の練習で、戦術だけで高いレベルに達することも可能かもしれないですけれど、代表チームはたまにしか集まれない。やっぱり、その違いは大きいですよね。

本田圭佑 違いますね。それぞれが日々をどのように過ごしているか、そこで差が出ると思うんですよ。4年に一度のW杯でも、1カ月くらいしか準備する期間がないわけですから。

──本田選手のそういった意識というのは、いつ、どんなタイミングで芽生えたんでしょうか? 誰しもが持っている意識ではないですし、日本を代表する選手たちでさえ、ほとんどの選手は持っていないものじゃないですか。環境なのか、人なのか、何かのきっかけなのか……。

本田圭佑 どうなんでしょうね。よく、この質問をされるんですけど。どうしてそういう考え方が芽生えたのかと。

──もちろん、理由は一つじゃないと思いますが。

本田圭佑 そうですよね。もともとは、僕もこういう考え方をしていなかったと思うし、そもそも考え方って先天的なものではないと思ってますから。でも、やっぱり先天的な部分もあるんですかね? まあ、そうだとするならば、半分は性格で、半分は環境だと思いますね。僕は、小さい頃に両親が離婚して、父親のほうに引き取られたんですけど、父親が仕事で忙しかったこともあって、実質的には祖父母に育てられてたんですよ。それで、同世代の連中が、どういう教育をされているかっていうのを、当時、子供ながらに見てたんですが、僕の家の教育がひときわ厳しかったのは確かですね。

──祖父母に育てられたのに、厳しかったんですね。それは珍しくないですか。

本田圭佑 いや、僕は珍しいといった感覚はないんですよ。僕の感覚では、祖父母は厳しいもんだと思ってますからね。それがスタンダードなんで。

──でも、おじいちゃん、おばあちゃんは、孫に対しては甘くなるというのが一般的な感覚だと思いますよ。

本田圭佑 いや、僕の祖父、祖母はね、本当に僕のことを息子のように思って育ててくれたと思うし、本当は優しい人たちだったとは思うんですけど、あえてね、厳しく接してくれてたというか。それが分かったのは大人になってからですけどね。

──子供の頃は、「何でこんなに厳しいんだろう?」と思っていたわけですね。

本田圭佑 当時は受け入れられなかったですね。それぐらい厳しくて。正直、「俺のことがどんだけ嫌いやねん」って思ってましたから。そう思わされるくらい、厳しく教育されてましたね。でもそれが愛情だっていうのは、大人になってから分かるもんなんですね。初めて気づいたのは、高校(星稜)に進学して、家を出て一人暮らしを始めてからですから。

──日本のサッカー、Jリーグのサッカーと、ヨーロッパのスタンダードなサッカーとの一番の違いはどういうところだと考えていますか?

本田圭佑 これはよく議論されていることだと思うんですけど、一番は「プレー効率の違い」だと思います。いかにしてゴールに向かって行くのか、そのやり方が違う。日本は手数掛けますからね。ヨーロッパのスタンダードで話をすれば、手数を掛けずにシンプルにシュートまで持っていく。効率の良さを最重視するんです。そこが一番違う部分かな。

──それは代表、クラブに限らずということですか?

本田圭佑 いや、今の日本代表はヨーロッパのスタンダードの中でやっている選手が多いから、ミックスになってますよね。日本とヨーロッパのいいところを、合わせたような集団になってると思います。

──確かに、縦に早い時は早いし、丁寧にいく時は丁寧につないでいく、という印象はあります。

本田圭佑 もっともっとこれを高めていけば、見ている人たちも面白くなるんじゃないかなと思いますね。

──ということは、世界一になるにはまだまだだけど、以前と比べて、明らかに日本代表に対しては手応えを感じているということですか?

本田圭佑 いや、まだまだですね。

──「手応えを感じてる」って言っちゃアカン、という感じですか?

本田圭佑 そんな感じです(笑)。いや、言ってもいいんですけど、言いたくないという気持ちのほうが先行してますね。

──ここで満足したら上に行けないから?

本田圭佑 まだまだギアを上げなきゃいけないと思うんですよ。これは僕だけが感じてもダメやし、でも僕が発信しないと始まらないし。はっきり言って、若い連中も全然アカンし、まだまだですよ。いい選手はいるんですけど、それをいい選手と呼んだらアカンし、まだ全然です。

──だから、札幌でのベネズエラ戦の後も、「全然まだまだ」と発していたわけですね。何となくレベルアップしていくだけじゃ、高みには行けないと。

本田圭佑 絶対に無理です。シンジくらいが普通にならないとダメですよ。マンUに入っても、「あー、マンUね」っていうくらいにならないと。それを、マンUに行っただけで騒いでたらアカン。分かるけど、(メディアも)数字取りたいだろうしね。ただ、もう騒ぐなと、まだ何もしていないと。ごっつぁんゴール1つ取っただけやと。もっと、本質を扱ってくれと。

<2万字を超えるロングインタビューを収録した全文は、サムライサッカーキングの本誌に掲載>

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