4年連続4度目のバロンドール受賞を喜んだメッシ
[ワールドサッカーキング 0117号 掲載]
2012年、彼が公式戦でゴールネットを揺らした回数は90を超えた。
2013年1月7日、クリスチアーノ・ロナウドとイニエスタを退け、
4年連続4度目のFIFAバロンドールを受賞。
しかし、彼はこう繰り返していた。「バルサが優勝しなければ何の意味もない」と。
「最高の居場所」で、王様は勝利という目標(ゴール)を求め続ける。
インタビュー・文=アンディ・ミッテン Interview and text by Andy MITTEN
翻訳=田島 大 Translation by Dai TAJIMA
写真=アフロ Photo by AFLO
ゴールの喜びは子供の頃から変わらない
いきなりで申し訳ないけど、ゴール手前20メートルの位置でボールをもらったとしよう。君はどう動く?
メッシ(以下M)──本当にいきなりだね(笑)。答えは「ベストの選択肢を探す」だ。仲間へのパスか、それともゴールを狙うのか、それを瞬時に選択する。そのためには、ボールをもらう前に周囲のことをすべて把握しておく必要がある。味方の動き、DFとGK、それからゴールの位置もね。
ゴールを決めた時はどんな気持ちなんだい?
M──もちろん、最高の気分だよ。バルサでも代表でもそれは変わらない。ゴールを決めた時の喜びは、子供の頃から全く変わらないんだ。
「ゴール後の記憶がない」という選手もいるけど、そんな経験は?
M──答えは「ノー」。はっきりと覚えているよ。さすがに、すべてのゴールとは言わないけど、簡単に忘れることはないし、しばらくはかなり鮮明に覚えてる。映像でゴールを振り返ることもあるし、メディアや他の選手、時にはファンからもゴールについていろいろ聞かれるから、思い出させてももらえるんだ。
君にとっての点取り屋としてのヒーローは誰だい?
M──ロナウドだね。彼は僕の憧れだった。(ジネディーヌ)ジダンやロナウジーニョ、リヴァウドのプレーを見るのも好きだったけど、ロナウドは僕が見た中で最高のFWだ。圧倒的なスピードがあって、誰よりもうまくボールをミートできる。何もないところからゴールを生み出せる唯一無二の選手だったね。
君もかなり「ゴールを生み出せる選手」だと思うけど、シュートを打つ時はどのタイミングでGKの位置を確認するんだい?
M──ケースバイケースさ。GKの位置をしっかり確認できることもあれば、確認する時間がない時もある。でも、僕がGKを意識するよりも、向こうに僕を意識させることが大切なんだ。あとは自分の本能に委ねる。重要なのは、GKの位置よりもゴールの位置。だって、GKは動くけど、ゴールマウスは動かないから(笑)。
チームメートのゴールをお膳立てするよりも自分で決めたほうがうれしいものなのかな?
M──チームが得点を挙げるなら、誰が決めようと同じこと。得点と同じくらいアシストもうれしいよ。
では、君にとって得点王の意義は?
M──何度も繰り返してきたけど、個人賞は二の次。チームの勝利が一番さ。もちろん、努力が認められるのはうれしいよ。でも、やっぱりチームの成功が何よりの喜びなんだ。歴代の偉大な選手と肩を並べられるし、ピチーチ(得点王)は素晴らしいことだけど、バルサが優勝しなければ何の意味もないからね。
僕にとってバルサは最高の居場所
少し質問を変えよう。君以外の選手が決めたゴールで、過去最高のものは?
M──イングランド戦の(ディエゴ)マラドーナのゴール(1986年のメキシコ・ワールドカップ準々決勝)だね。
僕のようなイングランド人の前で、それは選んじゃダメだよ。
M──ハハッ(笑)! でも、正直、あまり覚えていないんだ。当時の僕はまだ1歳だし。ただ、テレビで繰り返し見た。あの大舞台で、何人も抜き去ってゴールを決める姿は本当に美しかった。
では、次の質問だ。君が子供の頃、サッカーをする時にゴールに見立てたもので最も変わったものは何だい?
M──ゴールに似ていれば何でも良かったよ。2本の木の間、道端の電柱の間、壁の落書き、本当に何でも良かったんだ。13歳でスペインに渡るまでは、いろいろなものをゴールにしていた。そんな僕が、バルサに来てからは素晴らしい施設を使わせてもらっている。本当に幸せなことだと思うよ。
スペインに渡る前という話が出たから、君の母国について聞かせてくれ。来年はブラジル・ワールドカップが控えているけど、アルゼンチン代表の今の状況はどう?
M──アルゼンチンは今、チームとして成長しようとしている。(アレハンドロ)サベージャ監督の下、新しいシステム、戦術、動き方を学んでいるんだ。選手の関係性もいいし、ブラジル大会に向けて一丸となって突き進んでいる。まだ先は長いし、予選でタフな試合がいくつも控えているけど、本大会行きが決まったら、隣国の地で優勝を目指すよ。
優勝と言えば、バルサは5月に再びウェンブリーでチャンピオンズリーグ優勝を果たせるかな?
M──優勝が最大の目標だし、その自信もある。僕はこのクラブで3度もチャンピオンズリーグを制した。そして、また優勝したいと強く思う。ウェンブリーは素晴らしいスタジアムだし、バルサの歴史において重要な場所でもある。バルサの最初の欧州制覇は92年のウェンブリーだった。そして2度目の優勝も2011年のウェンブリーだ。5月にも、あのピッチに立ちたいと思うよ。
ジョゼップ・グアルディオラからティト・ビラノバ監督への政権交代はうまく進んだのかな。
M──ペップ(グアルディオラの愛称)には感謝している。彼はバルサに多大な貢献を果たしたし、僕自身もペップの下で多くのことを学んだ。サッカーの新しい見解や戦術、そして勝ち方をね。ティトは、コーチとして最初からペップと一緒にいたから、タイプとしてペップに似ている。それに、バルサの哲学も変わっていない。もちろん、監督にはそれぞれの個性があるけど、僕はペップとも素晴らしい関係を築けていたし、ティトにも同じことが言えるんだ。
君はバルサであらゆるタイトルを手にしてきた。次の目標は?
M──次の目標は、次の試合に勝つことさ。いつだって、それが僕の目標なんだ。アルゼンチン代表でワールドカップを制することも僕の夢だ。バルサでいくつタイトルを獲得しようと、勝ち続けるという目標は変わらない。
では最後の質問だ。君がバルサを離れる日は来るだろうか?
M──できる限りバルサでプレーし続けることが夢だし、その気持ちは変わらない。僕はここで幸せだし、この街が大好きだ。クラブやチームメートのこともね。家族もバルセロナで幸せに暮らしている。僕にとって、バルサは最高の居場所なんだ。
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