[サムライサッカーキング2月号掲載]
2010年の南アフリカ・ワールドカップ以降、「世界一のサイドバックになる」と常々公言してきた長友佑都。W杯後、日本を飛び出し、インテルへの移籍を果たした。あれから2年半が経った今、彼の目にははっきり見えるという。「あの光の方向に走れば、きっといつかはつかめる」という道筋が。「技術は大人になってからでも絶対に伸びる」と断言する長友は、差し込む光を追い続けている。
日本人はテクニックが高い」というのは、ちょっと違うんじゃないか
──今夏にはコンフェデ杯が行われます。日本はブラジル、メキシコ、イタリアと同グループになりました。ブラジルは最近対戦したので強さもわかると思いますが、ロンドン・オリンピックで優勝したメキシコとも対戦することになりました。今回のコンフェデ杯でも、五輪の優勝メンバーが相当入ってくると予想されていますが、現在のメキシコ代表についてはどういう印象を持っていますか?
長友 最近では、それこそロンドン五輪で見たくらいなんですが、メキシコは本当によく走るし、技術もしっかりしているので、正直、やっかいな相手ですよね。インテルにも南米出身の選手が多いので、そういった選手たちからメキシコ代表のことを聞きました。彼らもメキシコはここ数年ですごく伸びてきているし、技術も走力もすべてを兼ね備えていて、かなりやっかいなチームだと。だから難しい試合になると思います。
──メキシコのサッカーは、日本が目指すスタイルだと言われることも多いですが、それについてはどう思いますか?
長友 確かに、他の強豪国と比べると、日本のスタイルに近い部分はあると思います。ただ、そこを目指すというのは、僕自身は全然考えていません。日本人には日本人の個性があるので、他の国のスタイルを真似するよりも、自分たちの個性を伸ばして、日本の良さを生かした試合をする。そこをもっともっと追求するべきじゃないかなと。僕たちのスタイルを貫くことにこだわるべきだと思っています。
──長友選手自身の思う、日本の強みを教えてください。
長友 まずは協調性。常にお互いのことを考えられる協調性は、日本が一番誇れるものだと思います。それと、献身的なプレーができるところ。チームのために走ることができるというのは、強みだと思いますね。一方で、よく言われている「日本人はテクニックが高い」というのは、ちょっと違うんじゃないかと。世界のトップレベルの選手を見ていると、日本人選手との技術の差を感じます。確かに、日本人はプレッシャーのない中では間違いなく上手い。ただ実際に、トップレベルの試合でそのテクニックを出せるかと言えば、それはまだ難しいのかなと。サッカーのテクニックというのは、フィジカルがあってのテクニックですから。相手がいる中でテクニックを発揮するにはフィジカルがなきゃダメですし、相手に当たられてもキープできる、軸がブレないという部分が重要です。そういうプレッシャーがある中では、まだ日本人のテクニックというのは、ちょっと厳しいのかなと感じています。そういう面での対処は、日本人が克服していかなければいけない課題だと思いますね。
イタリア代表の守備陣は相当手強い
──最後にイタリア。母国との対戦となるアルベルト・ザッケローニ監督はもちろん、イタリアのセリエAでプレーしている長友選手にとっても、重要な意味を持つ対戦になると思います。現在のアッズーリ(イタリア代表の愛称)にはどういう印象を持っていますか。
長友 世界的なビッグプレーヤーがたくさんいるというわけじゃないですけど、一人ひとりがチームのために走ることができて、守備もしっかりしていて攻撃もできる。そういう何でもできちゃうタイプの選手が、今のイタリアには多いという印象はありますね。
──確かに。各クラブからユーティリティーな選手を集めているという印象は強いです。
長友 だから、試合の中でもかなり融通が利きますよね。あとはやっぱり、守備陣。ディフェンスラインはユヴェントスの選手で固めてますから、ここは大きなストロングポイントですね。チームワーク、連係面を考えると、普段から同じチームでコミュニケーションを取れているメリットは大きいですから。
──昨シーズンに引き続き、今シーズンもユーヴェの守備は安定していますしね。
長友 ユーヴェ、本当に堅いですからね。あれがそのまま、イタリア代表の守備だと思うと、相当手強いですよ。正直、こじ開けるのはかなり難しいと思います。
──しかも、中盤にも、(アンドレア)ピルロや(クラウディオ)マルキージオといったユーヴェの選手がいます。
長友 絶妙なんですよね、あのライン。一人ひとりがそれぞれ動くわけじゃなくて、全体がコンパクトに動いてディフェンスするので、それを崩すのは本当に難しい。