[ワールドサッカーキング 0207号 掲載]
インタビュー=岩本義弘 写真=兼子愼一郎
ワールドサッカーキング最新号では、日本サッカー界の“キング”のインタビューを掲載している。15歳の若さで単身ブラジルへ渡り、プロ選手としての夢を実現し、1994年にはアジア人初のセリエAプレーヤーとなった三浦知良。欧州でプレーする日本人選手の先駆者として日本サッカーの発展に貢献した“キング”はどんな視点で海外組を見ているのだろうか。
今まで生で観戦した試合で一番面白かった
昨年末にオフを利用してヨーロッパでサッカー観戦をされたそうですね。
カズ ローマには仕事で行ったんですが、マンチェスターはプライベートですね。(マンチェスター)シティー対(マンチェスター)ユナイテッド戦とウィガン対QPR戦を見ました。
今まで、プレミアリーグを現地で観戦されたことは?
カズ プレミアを生で見るのは初めてでしたね。下部リーグは何度か見たことがありましたけど。
マンチェスター・ダービーは雰囲気はもちろん、試合も白熱していたので見応えがあったんじゃないですか?
カズ ええ。今まで生で観戦した試合で一番面白かったですね。僕はスタジアムの真ん中の一番高いエリアから見ていたんですが、その高さから見ても、ものすごいスピードとテクニックの高さを感じました。
普通、高い位置からだと、そういった臨場感はあまり感じられませんが、伝わってきたんですね。
カズ そうそう、技術の細かい部分って分かりにくいじゃないですか。でも、あの試合はそれがすごく伝わってきました。グラウンドに近い席で見ていたら、とんでもないレベルだったと思いますよ。これが世界最高峰の試合だな、と思いましたね。
ウィガン対QPR戦はいかがでしたか?
カズ 宮市(亮)君とパク・チソンは残念ながら出ませんでしたけど、試合は楽しめました。
香川真司選手や宮市選手とは現地で会われたのですか?
カズ 香川君とは毎晩一緒に食事をさせてもらいました。ウィガンはマンチェスターから近いので、宮市君とも会いましたよ。
宮市選手と会うのは初めてですか?
カズ いや、(昨年)7月の欧州組との食事会で会っていますね。
2人と話をしてどんなことを感じましたか?
カズ 2人とも若いので目が生き生きとしていたのが印象的ですね。一緒に食事して、新たなパワーを注入できたかなと思います。
現役でいるからお互い選手として話ができる
ローマでは長友佑都選手とも会われたんですよね。
カズ はい。ラツィオとの試合でローマに前泊していたので会うことができました。
セリエAでプレーした先輩から見た長友選手の印象はいかがでしたか?
カズ 長友君はよくチームに溶け込んでいますね。チームメートだけでなくイタリア人のスタッフからも可愛がられている。サポーターからの支持も得ているし、本当にうまくいっているということが現地に行ってよく分かりました。
長友選手のコミュニケーション能力というか、イタリア人からの愛され方は今までの日本人にはなかったことですよね?
カズ そうですね。サッカーの技術や能力はもちろん大事だけど、それだけじゃ成功はできない。やっぱり、コミュニケーション能力だとか、周りから信頼される、愛されるという、人間的な部分も重要なことだと思います。
ラツィオ戦は負けてしまいましたけど、長友選手がオリンピコでプレーしているのを見て、改めてどう感じましたか?
カズ インテル対ラツィオというビッグゲームの中で僕ら日本人の代表が、守備の中心としてプレーしていることが誇らしかったですね。守備だけじゃなく、攻撃でも起点となっていましたし、自分でチャンスを作ってシュートも打っていました。チームから信頼されていることをプレーからも強く感じました。
プレミアリーグでは日本人選手がプレーしている姿を見ることができませんでしたが、香川選手が、マンチェスター・ダービーでプレーするイメージは持てましたか?
カズ 持てましたね。試合後、本人にもピッチに立っている姿を見たいと伝えておきましたし、次に来た時はぜひ見たいですね。ウィガンの試合もそうですが、宮市君が出ていたらまた違う感動があったなと。でも、それと同時にピッチに立つのは本当に大変なことだなとも思いました。
香川選手と宮市選手と会って、2人から試合に出られなかった悔しさみたいなものを感じましたか?
カズ 言葉ではそんなになかったですね。香川君はケガのつらさとかもあるだろうし。でも、2人ともやれるという自信はひしひしと伝わってきました。
ヨーロッパでプレーする選手は皆、カズさんに会うのを楽しみにしているようです。先ほど話に出た海外組との食事会はすごい人数だったそうですね。
カズ いろいろな国でプレーしている選手や、いろいろな世代の選手と話すことはとても楽しいですね。僕は先駆者って言われますけど、現役でいるからお互い選手として話ができると思います。僕がクラブの経営者だったりGMだったり、コーチだったり、監督だったりしたら言えないこともある。年は離れてますけど、現役選手だからこそ同じ目線で一緒の感覚で話ができるのだと思います。
海外組の選手とコミュニケーションを取ることはカズさんにとってどんな意味を持っていますか?
カズ 刺激以上のパワーをもらってるって感じですね。もちろん、みんなが僕を慕ってくれていることはうれしいですよ。
フットサルの経験をプレーに生かしたい
カズさん自身について聞かせてください。ヨーロッパで現地観戦して自分自身に感じたことはありますか?
カズ もう一回相手から怖いと思われるようにならなければと、見ていて感じました。
2013年、個人的に取り組んでいこうと思っていることはありますか?
カズ フットサルを経験した感覚が、良い感じでプレーに表れているのでそれをもっと生かしたいですね。フットサルの前向きな気持ちや、ゴールへの積極性。そういうイメージのプレーをもう一度したいなと。あんまりベテランらしいって言われないように(笑)。
2013年はブラジルでコンフェデレーションズカップ、2014年にはワールドカップ(以下W杯)が開催されます。ブラジルでプロとしてスタートしたカズさんにとって、次のW杯はどういう意味を持っていますか?
カズ 第二の故郷でやるW杯という感じですね。当然、自分も目指したいですし、どういう形でもいいから現地に行きたいと思っています。
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