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ドラクスラーが見据える“サプライズの続き”「ブラジルW杯に必ず出場する」

2013.02.23

ワールドサッカーキング 0307号 掲載]

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インタビュー・文=トーマス・ゼー
翻訳=阿部 浩 アレクサンダー

 

デビュー2年目を終えた昨年5月、18歳にしてドイツ代表デビュー。大きなサプライズを提供したユリアン・ドラクスラーは、2014年のブラジルを見据えて、その後も存在感を高めている。

 

 

 昨年5月、ユーロ2012に向けたドイツ代表のメンバー候補27人が発表された時、最大の「サプライズ」は彼の名前だった。1992年生まれのマリオ・ゲッツェやマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンよりも、更に若い93年生まれ。そう、当時18歳のユリアン・ドラクスラーである。

 

 残念ながらユーロ本大会の最終メンバーには残れなかったが、ドラクスラーに失望はなかったという。

 

「もっと自分を鍛え上げるためのいい目標ができた」

 

 ドイツ代表のレギュラーの座をつかみ、ブラジル・ワールドカップ(以下W杯)に出場する。そんな野心を包み隠さずに語れるのは、若者ならではの特権なのかもしれない。だが、ピッチで見せるクレバーな動きや、右足の力強く正確なキック、そして何より、代表監督ヨアヒム・レーヴが彼を招集し続けているという事実は、彼の持つポテンシャルの大きさを示すものだ。

 

 シーズン後半戦、本来の勢いを失っているシャルケをどう立て直し、その中でどう自分をアピールするのか。そして、1年4カ月後のW杯をどこで迎えることになるのか。「サプライズ」の続きを期待しているのは、きっと私だけではないだろう。

 

「10番」にはこだわっていきたい

 

早速だけど、シャルケの調子はなかなか上向かないね。昨年12月にフーブ・ステーフェンス監督を解任して、心機一転、シーズン後半戦の復調を狙っていたはずだけど……まだイェンス・ケラー新監督のやり方に慣れない部分があるということかな?

 

ドラクスラー(以下D―新監督がすぐに成果を出すのは簡単じゃない、ということだろうね。ただ、目指しているサッカー自体が大きく変化したわけじゃないから、選手に混乱はない。違いがあるとすれば、ケラーのほうが守備から攻撃への切り替えを重視していて、より組織的なサッカーを目指しているということかな。時間は掛かるかもしれないけど、必ずもっと良くなると思うよ。あと、ステーフェンスに比べると、ケラー監督は落ち着いていて物静かだね。

 

ステーフェンス前監督は昨シーズン、チームを3位に引き上げた。彼を解任するというクラブの決定は正しい判断だったと思う?

 

D―成績が悪かったわけだから、クラブとしても何らかの形でチームに刺激を与えなければいけないと考えたんじゃないのかな。その手段が監督交代で良かったかどうかは、僕には何とも言えない。チームの成績が良くないのは監督だけのせいではないしね。ただ、サッカー界では監督が責任を取るのがルールだってことは知っている。(フェリックス)マガトが解任された時も、(ラルフ)ラングニックの時もショックだったよ。プロの選手なら慣れなくちゃいけないんだろうけど……。

 

ただ、監督が交代しても君はレギュラーの座をしっかり確保している。チーム内でのポジションも少しずつ変わってきたのでは?

 

D―どうかな。チームのみんなは僕のことをまだ「ユースチームのユリアン」だと思ってるみたいだ(笑)。だけど、僕自身にそんなつもりはない。ブンデスリーガではもう60試合以上に出場しているし、他の誰よりもプロフェッショナルな選手でありたいと思っている。

 

この1年で、体つきがかなり変わった印象を受けるけど、実際は?

 

D―そのとおり。1年半で体重が7キロ増えたよ。筋肉を増やしたんだ。ユース時代、トップチームに参加するたびに自分のパワー不足を思い知らされたからね。ブンデスリーガでプレーするには、相手に競り負けないために最低限の筋肉は付けておかないと。

 

なるほど。ちなみに、君は以前から中盤のセンターでプレーしたいと主張しているよね。今のチームでは主に左サイドでプレーしているけど、トップ下が定位置だったルイス・ホルトビーがトッテナムに移籍しても、クラブは君をセンターで使う意向はないようだ。

 

D―一番好きなポジションは「10番」。それはずっと言ってきたことだ。ユース時代からすべてのカテゴリーで、僕はずっとこのポジションでやってきた。自分の持ち味を最も生かせるのはやっぱりセンターだと思っている。別に左サイドが嫌だと言っているわけじゃないよ。ただ、アピールを続ければチャンスはあると思うし、そのチャンスを生かせる自信もある。だから「10番」にはこだわっていきたいんだ。

 

エジルを見ていると勇気づけられる

 

君はシャルケのクラブ史上最年少でプロデビューを飾り、10代にしてドイツ代表にも選出された。ここからは、君を育てたシャルケのアカデミーについて聞きたいんだけど、いいかな?

 

D―喜んで。何せ、僕は生粋のシャルカーだからね。

 

出身地はこの近く?

 

D―グラッドベック(ゲルゼンキルヘンの隣町)だよ。シャルケのアカデミー時代、チームメートの多くは寮で生活していたけど、僕は両親がいる自宅からトレーニングに通っていた。10歳からはシャルケと提携しているベルガーフェルト総合制学校に通った。あのマヌエル・ノイアーとかメズート・エジルも通っていた学校だよ。

 

ユースアカデミーで学んだ中で、最も大事なことは何だろう?

 

D―シンプルだけど、自分を信じること。ポテンシャルに恵まれた選手はたくさんいるけど、全員が成功できるわけじゃない。つまり、どこかで必ずハードルにぶつかるものなんだと思う。僕も一時期、成長期に起こる背筋痛に悩まされていた。だけど最後まで諦めなかったおかげで、プロ選手になることができた。

 

とは言っても、努力すれば誰でも、君のように10代でトップチームに加われるわけじゃない。

 

D―運が良かったんだよ。マガト元監督は僕の才能を認めてくれて、試合で起用してくれた。そして僕は与えられたチャンスを生かすことができた。ブンデスリーガにデビューして10日後、DFBカップのニュルンベルク戦で、勝ち越しゴールを決めたのが大きかったね。これで一気に自信がついた。

 

シャルケのユースアカデミーは、近年多くのプロ選手を輩出している。その理由は何だと思う?

 

D―確かにね。ノイアー、エジル、(ベネディクト)へヴェデス。ドイツ代表に3人もシャルケ出身者がいるのは誇らしいことだ。シャルケのユース育成組織はかなり綿密に計画されているし、施設も充実している。コーチも技術スタッフ、メディカルスタッフ、メンタルケアのスタッフがそろっていて、とにかく恵まれていたと思う。僕にとっては当たり前だったけど、今から思えば素晴らしい環境だったと思うよ。この先、もっと多くの才能ある若手選手が生まれてくるはずさ。

 

シャルケのクレメンス・テンニース会長は「ドラクスラーの才能はマルコ・ロイスやマリオ・ゲッツェをはるかにしのぐ」と言っている。

 

D―会長がそう言ってくれるのはうれしいけど、僕自身、あの2人のレベルに追いついてないことは分かっている。でも、絶対に追いつけないとは思わないよ。とにかく少しでも早く、代表チームで2人のポジションを脅かせるようになりたいね。ただ、目標はやっぱりエジルだな。彼もゲルゼンキルヘン出身で、シャルケのユースで育った。彼を見ていると、僕だっていつか彼のようにレアル・マドリーでプレーして、ドイツ代表のレギュラーになれるって勇気づけられるんだ。

 

ドイツ代表でも必ずレギュラーを奪う

 

君は昨年5月にドイツ代表デビューを飾り、その後も継続的に代表に招集されている。ドイツ代表のレギュラーは現実的な目標だと思う?

 

D―デビューと言ってもユーロに向けたテストマッチだし、本大会のメンバーには入れなかった。レーヴ監督はストレートな人だから、「お前のパフォーマンスには満足できなかった」とはっきり言われたよ。でも、落ち込んでなんかいない。とにかく代表への扉を開いたことは事実だし、もっと自分を鍛え上げるためのいい目標ができたとポジティブに捉えたんだ。その後も代表には呼ばれているし、ドイツ代表でも必ずレギュラーの座を奪って、来年のブラジルW杯に出場する。これが今の目標なんだ。

 

ちなみに、ドイツ代表に初招集された時はどんな気分だった?

 

D―そりゃ大騒ぎさ(笑)。レーヴ監督から電話が来た時、僕はちょうど学校の授業中でね。携帯が鳴ったけど出られなくて、休憩時間に留守電を確認したら代表監督からメッセージが入っていたんだから! まさか、監督から直接電話が来るとは思ってなかったから、本当にビックリしたよ。

 

初めて代表レベルの試合を経験して、サッカーに対する考え方に変化はあったのかな?

 

D―まあね。周りの状況が一変するから、嫌でも変わらざるを得ないと思う。取材が増えたり、スポンサー契約の話があったりとか。スターになったような気分がしたよ。

 

一夜にしてスターか。映画のストーリーみたいだね(笑)。

 

D―そう。でも、その時に両親に言われたのは「自分を見失うな」ってことだった。知名度に引かれて近寄ってくる人間には気をつけなさいってね。でも、心配はいらないよ。僕はスターになりたくてサッカーをやっているわけじゃないし、自分にとって一番重要なことはサッカーだって分かっている。

 

これは日本の雑誌のインタビューなんだ。そこで最後に一つ、チームメートの内田篤人について聞かせてくれるかな。君は彼とかなり仲が良いみたいだね。

 

D―ウシー(内田)と仲良くなるのは難しいことじゃないよ。彼は本当にいいヤツだから。礼儀正しくて頭が良くて、まあドイツ語はもうちょっとうまくなってもいいと思うけど(笑)。選手としても尊敬できるプレーヤーだと思う。右サイドからダイナミックに上がってきて、ジェフ(ジェフェルソン・ファルファン)とのコンビネーションで仕掛けるプレーなんか、本当に見事だ。もうシャルケに不可欠な存在と言えるだろうね。

 

 

 

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