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家長昭博×今野泰幸「世界に近付いた一歩」

2013.03.13

世界との戦いを経験した、あるいは世界を目指す選手たちに、自身が感じる日本サッカーと世界との差、そして到達するための青写真を聞く。
インタビュー・文=田中亮平 写真=秀平琢磨
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今シーズン、1年でのJ1復帰を胸に戦うガンバ大阪の今野泰幸と家長昭博。ともに各世代の代表を経験してきた彼らが感じる、世界と日本の距離とは一体どれほどか。過去の経験を振り返りつつ、世界への思い、日本サッカーの課題と希望を語った。

戦いの中で感じたボールへの執着心

最初に「世界」というものを意識したのは何歳の時ですか?

今野 18歳ぐらいですね。AFCユース選手権(現AFC U-19選手権)を経験して意識するようになりました。

家長 僕も同じようなタイミングですね。19歳の時にワールドユース(現U-20ワールドカップ)に出たことがきっかけです。

今野選手は03年のワールドユースに出場していますね。ベスト8まで進出し、準々決勝でブラジルに1-5で敗れました。どういう部分で世界との差を感じましたか?

今野 その時の日本は、大会全体を通して、守備をがっちり固めてカウンターで仕留める、みたいな戦い方でした。守備を固めればある程度強いチームに対してもやれるという手応えはありましたね。そういった中でブラジル相手にどれくらいやれるのかなと思っていたのですが、ブラジルはセンターバック、サイドバックも含めて全員がドリブルできて、必ず一人をはがせるから、守備が後手後手になってしまい、完璧に崩されました。あれは本当に衝撃でしたね。

家長選手も05年にワールドユースに出場しています。日本は1勝もできませんでしたがグループリーグを突破しています。

家長 失点はあまりなかったですが、自分たちがやりたかったことができなかった。というより、ここは?やらせてもらえない?世界だというのを感じましたね。一対一の場面ではみんな止められるし、抜かれるし。それをグループでなんとかカバーしていたという感じです。負けないことはできるけど、勝つのは大変だと思いました。

今野選手はその後04年にアテネ・オリンピックにも出場しています。

今野 イタリア戦では、セリエAなどで活躍している選手たちと対戦したのですが、やはり常に結果にこだわってプレーしているというか、チャンスで決める力や、勝負強さというのがすごいなと。執着心を感じたし、そういったところの差を感じましたね。

家長選手は11年にリーガ・エスパニョーラのマジョルカに移籍しましたが、今野選手の言う「差」は感じましたか?

家長 ボールへの執着心は尋常じゃないほど強いし、それがゴールへの執念とか、ゴールを守る時の身体の張り方につながっているなというのは感じました。そういうのは世界ならではというか、日本ではなかなか感じられない部分だと思いますね。

スペインで通用した部分は?

家長 特になかったですね。スペインは、日本人が目指す形の理想、みたいな選手が結構いるんですよ。(リオネル)メッシや(アンドレス)イニエスタ、チャビはもちろん、バルセロナに限らず、いろんなチームにあのようなタイプの選手がいる。その中で日本人が、ある意味で同系統の最高クラスの選手たちからポジションを勝ち取っていくというのは大変だと思います。

今野 スペインは大好きなリーグだし、僕もやってみたいという気持ちもありますが、相当難しいんだろうなと思います。

家長 どの辺が難しそう?

今野 他のリーグだと、どこかに穴がある気がするし、そういう穴というか、勝つチャンスみたいなものが見えたりするんだけど、スペインはどれをとっても一流というか、穴がないように見える。例えば、イタリアだったら、試合を観ていて、ちょっと間延びしてるなと感じる時もあるし、ドイツだったら、相手が小回りきかないから、ドリブルでいけそうだなとか。まあオレがいくわけじゃないけど(笑)。

どのリーグが自分に一番向いていそうですか?

今野 ……うーん、日本ですかね(笑)。

家長 オレは、今ちゃんはスペインに向いていると思う。スペインだと、イングランドとかドイツより、今ちゃんみたいなDFがセンターバックを務めているケースが多いんですよね。例えばバルセロナだったら、(ハビエル)マスチェラーノがやっていたり。今ちゃんみたいな選手は結構センターバックとして重要視されてるし、メッシみたいなタイプを止めるのは、そういうタイプじゃないと難しいとも思う。

今野 やってみたいけどね。日本代表として、ブラジルとかと対戦する機会ができて、もちろん大敗してすごい悔しいというのはあるけど、単純にそういう選手たちと試合をするのは楽しい。ワクワクする。試合前日の夜とか、すごい興奮するからね。

世界はまだ日本を意識していない

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10年W杯はまさに興奮した大会だったと思います。パラグアイに負けてベスト16敗退となったわけですが、まだまだいけたという思いはありますか?

今野 いや、良かったんじゃないですか、あれで(笑)。前評判がものすごく低かったですからね。グループリーグで敗退するだろうと思っていた人が大半だったと思うし、僕らの雰囲気やチームの状態的にもそういう感じだった。そこから、あそこまで持ち直せたというのはすごいと思うんですよ。しかも、直前になって戦術を変えている。その変更にうまく対応して、あそこまでいったというのは、もちろん岡田(武史)監督のおかげでもあるし、忠実にこなした選手の力だとも思う。

やはりベスト16のラインが、世界の壁と言えるでしょうか。

今野 グループリーグを突破するのだけでも大変ですけどね。でも確かに、決勝トーナメント1回戦で勝つか負けるかっていうのは大きな差かなとも思いますね。あそこを勝っていくチームは、何かチームとしてのスタイルを持っていますよね。

近年日本が国際舞台で残している成績によって、世界が日本を見る目は変わったと思いますか?

今野 アジアは変わりましたよね。特に日本ホームの時には、日本のほうが相当格上だっていう感じの戦い方をしてくる。どうにかして日本の良さを消そうと、自分たちのスタイルを捨ててやってきますから。だけど世界からの目という意味では、まだ全然変わっていないんじゃないですか。たぶん、日本のことは何とも思ってないと思います。日本代表っていうより、「マンチェスター・ユナイテッドの香川真司」とか「インテルの長友佑都」とか、そういう感じで見られているだけで、日本を相手にしたら嫌だなって思われるまでには至っていないと思う。

それは12年の欧州遠征でブラジルと戦って実感したことですか?

今野 あの試合は、ブラジルも最初は驚いたと思うんですよ。結構日本もパスを回せたし、ペナルティーエリアの近くまで行けましたし。圭佑(本田)のシュートが入っていれば、ブラジルも焦ったと思うんですね。でもそこで決められなかった。そのうちにブラジルも本気になって、自分たちの戦い方をしてきて、決めるべきところを決めると。その決定力は本当にすごかったですね。ただ、03年のワールドユースで1-5で負けた時よりは、4点という点差は変わってないけど、ちょっとは縮まったと思います。やろうとしていることを少しは出せたんじゃないかなと。

家長 06年のW杯でブラジルに負けた時と似ていたよね。あの時も20分くらいまでは日本も強いなと思っていたけど、時間が経つにつれて、やっぱりちょっとレベルが違うなと。でも06年と違うのは、ボールをつなぐやり方も、守備の仕方も、日本は90分間ブレなかったので、見ていて楽しかった。あれがこの先、ブラジルを倒していくことにつながるのかなと。それにしても親善試合にしてはブラジルも本気だったよね?

今野 ブラジルって、全然適当じゃないんだよね。規律もすごくしっかりしている。そこが意外だった。僕も隙があったら……。

家長 フランス戦みたいにドリブルで上がろうと思った?

今野 いや、そうじゃないけど(笑)。ブラジルが守備をさぼってくれたら、オーバーラップとかもできるのかなって思ってたんだけど、サイドハーフはしっかり戻るし、ダブルボランチの運動量もすごかった。もっと華麗で、上手くて、ボールを支配されて圧倒的に負けるのかなって思っていたけど、そういう感じではなかったね。ディフェンスがしっかりしてて、カウンターを仕掛けてくるみたいな。そっちのほうが勝てないなって思った。もしかしたら、あえてボールを持たされたかもしれないし。

厳しい環境がレベルアップにつながる

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それらの経験を踏まえて改めて感じる、日本人選手の武器、特徴は?

今野 組織力。あとは俊敏性だと思います。

家長 僕は香川、乾(貴士)、清武(弘嗣)とチームメートでしたが、彼らは身体が大きくないし、めちゃくちゃパワーがあるわけでもない。それでも世界であれだけやれているというのは、本当に日頃の練習の賜物だと思うし、子供にも参考になる。彼らみたいな技術を身に付ければ、世界と戦っていけるという、良いお手本だと思いますね。

逆に足りないところは?

今野 うーん、個性ですかね。海外って、左足はめちゃくちゃ下手だけど、ヘディングがすごく強いとか、足がすごく速いとか、何か武器を持っている選手が多いですよね。そういう選手が日本は少ないと思いますね。みんな上手いけど、みんな一緒に見えるというか。それも良いことではあるんですけど、世界の強豪に勝っていくためには、個性、誰にも負けない武器が必要になる。組織力と紙一重ではありますけどね。

家長 僕がマジョルカ時代に感じたのは、本当にいろんな国からいろんな選手が来ているけれど、みんなすごく大人びているということ。生活が苦しい状況から来ている選手もいたりして、サッカーに対するスタンスが日本人とは違うというか、明確にお金を稼ぐために来ていたりする。そういう厳しい環境にいると、精神的に出てくるものも違ったりすると思うので、シビアさ、厳しさというものを自分から追い求めて、そういう環境に身を置くべきだと思いますね。追い求めていれば到達できると思う。

今野 そうだね。レベルの高い環境、厳しい環境が意識を成長させるよね。

最後に、今シーズンの目標を。

今野 一番達成しなければいけないのはJ1昇格です。それは絶対条件。昇格を達成できるように、そしてチームに貢献できるように頑張りたいですね。代表では、コンフェデ杯もありますし、そこでチームとしても個人としても良い成績を残して、世界にアピールしたいなと思っています。

家長 今ちゃんと遠藤(保仁)さんがコンフェデ杯の代表に選ばれたら、期間中、どうするんですかってよく聞かれるんですけど、いないチームがベストというくらいの気持ちでやります。そして絶対に昇格したいですね。

すべてをかけろ。世界はもう、夢じゃない

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家長昭博

Q1.10代の時にプロ契約を結びましたが、不安はありませんでしたか? プロでもやれるという手応えはどんな点にありましたか?
A.手応えはなかったです。ただ、不安もなかった。今からどんどんうまくなるっていう確信がありましたね。

Q2..自分も将来は海外でプレーしたいと考えていますが、10代の頃にしておくべき準備はどんなことですか?
A.僕はプロ入りしてから、海外にいつか行きたいと思うようになりました。10代の頃から、語学に取り組んでおくことがいいと思います。

Q3.ドリブルが上達するために、10代の頃はどんな練習をしていましたか?
A.試合で起こりうる局面をイメージをしながら、コーンを置いて、DFの友だちと1対1をしたり、2対2や3対3をしたりっていうのが多かったですね。

Q4.自分は身長が低い(169cm)のですが、どういう技術を磨いていったら、大きなDFに勝つことができますか?
A.狭いスペースでボールをキープできるようにするトレーニングが重要ですね。狭いスペースで大きい選手やフィジカルの強い選手に対していかにボールを奪われないか、抜いてシュートを撃つかっていうトレーニングをしていれば、大きいグラウンドになった時にもっと顔が上がって、抜けるようになります。

Q5.シュート力、シュートのコントロールを向上させるためにはどういう練習が効果的ですか?
A.シュートは練習しかないですね。シュート力については大人になった時におのずと筋力がついて撃てるようになるので、まずは自分が思うコースに撃てるようになるように練習を繰り返すことですね。

今野泰幸

Q1.センターバックでも足元の技術は必要ですか?
A.現代サッカーはGKからビルドアップするのが当たり前だし、できるだけマイボールの時間を長くしたほうが勝つチャンスは増えるので、センターバックでも足元の技術は必要だと思います。

Q2.自分は身長があまり大きくない(172cm)のですが、自分より大きなFWと対戦する時、どういう動きがポイントになりますか?
A.ボールのコースを先に読んで、相手より早くそのポジションにつくのが大事。ヘディングで競り合うのも、ボールにいくというよりは、相手の身体にぶつかりにいって、自由にヘディングをさせないことですね。

Q3.僕はFWの選手なんですが、DFにとってFWにされると一番嫌なことは何ですか?
A.2つあります。一つは、中盤でパスを出せる選手が前を向いた時に、動き出しがいい選手。もう一つは、ボールを持った時にガンガンしかけてくる選手です。

Q4.ボール奪取の技術を磨く上で、10代の頃はどんなトレーニングをすると効果的ですか?
A.ボールを奪うには、パスがその選手に渡っている間にアプローチすること。そのアプローチのスピードと、どこまで寄せていいのかというのを、何回もチャレンジして、自分の間合い、距離を見つけることですね。

Q5.世界で活躍するにはどういう技術を伸ばすことがカギになると思いますか?
A.僕は身長が低いけど、アジリティーを生かして、読みを生かして、ボールを奪ったり、カバーに入ったりするのが得意だと思っています。そんな風に自分の得意なプレーを磨いていけば、世界でも勝つチャンスが出てくるのかなと思ってます。

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