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【特別インタビュー】サカナクションが奏でるサッカー、青き絶高の世代

2013.03.15

[サムライサッカーキング 4月号掲載]

サッカー雑誌はもちろん、スポーツ雑誌に登場するのはこれが初めてだという。ロックをベースに、テクノ、エレクトロニカを導入したクラブミュージックで、日本の音楽シーンに旋風を巻き起こしているサカナクション。彼らのサウンドが、今シーズン、サッカー番組に響き渡る。

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インタビュー・文 = 田中亮平

サカナクション流サッカーソングの答え

 今シーズンのNHKサッカー公式テーマソングが話題だ。サカナクションの『Aoi』。そのサウンドは、逞しくも儚いサッカーの世界を見事に表現しているように思える。『Aoi』はいかにして生まれたのか。ギター・ヴォーカル担当の山口一郎氏に聞いた。

早速聴かせていただきました。すごくサッカーに合っているように思えたのですが、率直にこの曲にはどんな想いが込められていますか?

山口(以下Y) タイアップ曲って、自分たちの作品というだけではなく、他の面にも関わってくるものなので、そこにもちゃんと良い影響がないと、完成には至らないんですね。なので、「NHKさんのサッカーのテーマ曲」という部分でもちゃんと機能的でなければいけないし、サカナクションの作品としても機能を果たさなければならない。歌詞だけでなくアレンジなども含め、苦労しながらも、かなり楽しんで作れました。制作中は実際にサッカーの映像を流しながらやっていましたね。

歌詞を読むと、若さの青と、日本代表の青という2つの意味が込められているように思います。

 「絶高の世代」という言葉を使っていますが、今の日本代表を観ていると、本田(圭佑)選手だったり、香川(真司)選手だったり、若くして海外で活躍する選手がどんどん増えてきて、世代交代もうまくいった感じがあるし、まさに「絶高の世代」だなと。この世代で次のワールドカップを戦うっていうのはすごくワクワクしますよね。一方で、海外に挑戦している選手たちの中には、どこかこう、サッカー後進国の日本から来たっていう劣等感みたいなものを抱えながら戦っているんじゃないかって思ったりもして。だから「青いという劣等感」という言葉も使っていますし、同時に、青さはイコール「若さ」でもある。

「絶高の世代」っていうのは言い得て妙ですよね。代表選手って、ある種のピークと言ってもいい。

 ミュージシャンもスポーツ選手と一緒で寿命が短いですからね。そういう意味ではかぶる部分があるし、今、日本代表にいる選手たちは、彼ら自身が「絶高の世代」なんじゃないかと。

サッカーを流しながら曲を作っていたとおっしゃいましたが、合唱によって構成されているAメロは、非常にサッカー的な印象を受けました。

 それは意図しました。他にも要素があって合唱という選択肢を取ったんですけど、一つはテレビで流れた時に、勢いみたいなものを感じてもらいたいと思ったし、期待感も感じてもらいたかった。もともとサカナクションの一つの武器として合唱っていうのがあって、それがうまく合致できたなと。

あの合唱部分は、スタジアムの空気感みたいなものが頭に浮かびます。

 音楽に興味がなくて、サッカーに興味がある人が高揚できるもの。僕らの基本はやっぱりクラブミュージックで、サッカーの曲ってこれまで石野卓球さんがテクノでやったり、ミクスチャーと言えばDragon Ash(ドラゴン・アッシュ)とか、いろいろありましたけど、サカナクション流のサッカーソングといったらどうなるのかって考えたら、こうなるのかなと。

オーバーグラウンドに対してのカウンター

山口さんはあるインタビューで、「ポップというものを理解している人たちが受け入れられるマイノリティーを探している」とおっしゃっていました。それは今回のようにタイアップ曲を作る時にもあてはまったと思うんですけど、『Aoi』を作るにあたって難しかった部分はありますか?

 僕らは音楽が好きな兄ちゃん姉ちゃんだから、たぶん普通の方が聴かないような音楽も今まで聴いてきたと思うんですね。つまりその、ものすごくオーバーグラウンドにある、例えばAKB48の音楽に対しても、みんなとは違う聴き方で聴いているかもしれない。なぜ受け入れられているのか、なんとなく分かるけれど、それを好んで聴くかと言えば、そうではない音楽の聴き方をしてきた。そういうポップに対してカウンターとして何かをぶつけていかなくてはいけない、というのがあるんですが、タイアップというのはそこに向かって投げられる武器になる。たくさんの人たちに聴いてもらうチャンスなわけですから。そうした時に、アイドルグループの音楽が、ポップ過ぎて嫌だなって思う人が着地する場所。とはいえマイノリティー過ぎると、理解されずに離れていってしまう。そのギリギリのところをうまく担える曲を作りたいというのが、一つの目標であるわけです。AKB48、いきものがかりと来て、並んだ時に良い違和感があるものというか。それが僕らの立ち位置です。

サッカーの監督も、例えばポップな戦術の潮流というものがあった時に、そうではないマイノリティーを探していく。その繰り返しでサッカーも進化してきた気がして、つまりそういう行動が新しいものを生む。『Aoi』というのはまさにそういう曲なのかなと。

 メンバーは初め嫌がったんですよ。ギターでガーッと攻める曲はやりたくないと。特にギタリストが(笑)。まあそういうメンバーが好きですけどね。ただ、自分たち流にアレンジするっていうのは楽しかったし、NHKの方も喜んでくれたみたいで、すごく良いものになったと思います。それに、これでサッカー選手の方々が聴いてくれるようになったら最高だなって思いますね。

『ウイニングイレブン』もプレーするそうですね?

 レコーディング中にやってましたね(笑)。スペインしか使いません。メンバー全員でやったりしますよ。

サカナクションのメンバーをサッカーで言うとどうなります?

 僕は監督だと思いますね。ドラムの江島(啓一)は、遠藤(保仁)選手って感じ。ベースの草刈(愛美)は、本田(圭佑)選手。けっこう攻めてるんですよ。サカナクションを担っている。プライドも割と高いですしね。それから、ギターの岩寺(基晴)は、清武(弘嗣)選手かな。スーパーサブ的な匂いもあるし、サイドから切り込んでいくっていうか。キーボードの岡崎(英美)は、あいつは、そうだな……李忠成! 大事なところでボレーシュートを決めちゃう、みたいな(笑)。

面白くて強そうなチームですね(笑)。13日には『Aoi』も収録されているニューアルバムが出ますね。

 タイアップが続いていた分、新しい若者がたくさん入ってきてくれるだろうという前提があって、そういう人たちに対して、アッパーではない自分たちの音楽をどういうふうに入れ込んでいくのか、というのがテーマでした。表と裏があるとしたら、「表裏一体」という感じで。それで離れていく人もいるかもしれないけど、ついてきた人たちに対しては、その先に導いてあげたいと思う。サッカーの見方もそうかもしれないですけど、ボールによく触る選手の動きとかって、分かりやすいじゃないですか。だけどテレビに映らないDFの動きは、マニアックな人しか見ない。音楽もそうで、聴き方が分かりやすいものはすごく理解されるけど、クラブミュージックみたいな、何を追っ掛けて聴けばいいのか分からない音楽って、好きじゃないと理解するのが難しいですよね。でも僕らはタイアップをやらせてもらってきて、ある程度若者たちが信頼してくれている分、僕らを通じてクラブミュージックなんかもなんとかして理解しようと思ってくれる人が多いはずで、そこで、ああ好きだって思ってくれたら、きっとその人にとって、これから選んでいく音楽の選択肢が一つ増えますよね。それはつまり聴き手に影響を与えたってことになるわけで。僕は音楽をやるにあたって、若者に対して影響を与えたいなって思うし、そこに対して情熱を注ぎたいので、今回のアルバムは、そういう意味でも作っていて楽しかったですね。

バンドの名前をアルバム名にしていることからも伝わってきます。

 もう、ファーストアルバムって気持ちです。初めてこんなにタイアップをいただいて、こんなに外に向けて発信したことがなかったから、そこで入ってきた人たちに対してね。ここからまた始まっていく、という意味でのファーストアルバムです。

【1.2MB】6th-初回盤_s
2013年3月13日リリース
6th ALBUM 『sakanaction』
初回生産限定盤(CD+Blu-ray )¥3,990(TAX IN)
初回生産限定盤(CD+DVD)¥3,780(TAX IN)
通常版 ¥3,000(TAX IN)

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